それ行け!ノノちゃん。国枝の妹姫は異世界でトキメキます!

【第6ワールド】大好きで、大好きで、でもどうしても守れなかったモノ

「行くよ『イノくん』! 王子(ブタ野郎)にダイレクトアタック!!」 「ちょ! 何を言ってるんだこの娘は!」 「ウゴオオオオオオオ!」  オークが幾百という敵陣を霞の如くすり抜け『マルサ』の第一王子へ飛び掛かる。 「な、なんだコイツは?!」  寸でのところを近衛兵に防がれる。けど、こんなところじゃ終わらない! 「続いて『頭おかしなキミ』! やっぱりキミも王子(ブタ野郎)にダイレクトアタック!!」 「や、やめさせろ! 誰か止めるんだ! 止めろ!」 「――王子、タベル」  鎧と鎧の合間を斜めに駆け抜け『狂人』が包丁で刺し貫こうとした。  が、ヒトの壁を幾つも幾つも超えたのに最後の1mmが届かない。王子を殺せない! 「くっ、『神秘の守り』が無かったら死んでいたところだ。誰だあの娘は! 早く討ち取れ! 場合によっては『ルキ』も道連れで構わん! さっさとコロセ!!」 『ルキお姉さま』を、『ルキお姉さま』を殺してでも自身を守ろうとするのか、この王子(クソゴミ)は!! 「とどめよ! 『愉快な殺人鬼』! 王子(クソゴミ)にダイレクトアタック!! チェーンソー出鱈目斬り!!」 「クソゴミをさばいていくぅぅぅ♪」  駆ける車輪は四方八方跳ね巡り王子周辺の兵士を幾十人と捌きバラバラにした。 「持っておくものだね、切り札ってヤツは。この国の兵士は皆、僕の身代わりとなる『呪い(おんけい)』を受けている♪ その加護『神秘の守り』により僕は死なない。いや、死ねないのさ」  見上げると、兵士の1人があたしを見下ろしていて、その手の剣があたしを――、  目を瞑った。  死んだ。  あたしは死んで、『ルキお姉さま』の事も全然守れなかった。  恐る恐る開いた瞳の先に純白の衣装を割いてあたしを守る『お姉さま』が居た。  お姉さまは、大好きな『ルキお姉さま』はミシュリルの剣持ち、いつも前を、未来を視ていたヒトでした。 「いつも、」  あたしが怖い時、あたしが怯えている時、守ってくれた。 『ルキお姉さま』があたしを横抱きにして馬を走らせている。 『ルキお姉さま』を守ろうとした幾人が後ろ、ずっと後ろで斬られている。伝令の兵隊さんの声が聞こえた。ルキお姉さまの国が、大国『マルサ』に攻め入られている。国境を越え、『マルサ』の兵士が罪も無き『イクサ』の人々を切り払い、襲っていると云う。 「……ピィ、」 「『フォーチュン』あなたも居たのね。もう、もう全て終わりなの。あたしのせいで、全てが全て、」  ゆっくり馬を止め『ルキお姉さま』があたしを地面へ降ろす。そして、こう訊ねた。 「『ノノちゃん』、……あの『杖』今でも持ってる?」 「え、」 「あの杖の正式名称は、『始まりと終わりの杖』。わたしの国から紛失したものなの」 『ルキお姉さま』のキレイな瞳があたしを見下ろした。 「あれを扱える勇者を、列島諸国の皆、国々の王はずっと探していたの。所有権を持つ『イクサ』はだから平和だった。守られていたの」 『ルキお姉さま』の翠玉の瞳があたしをじっと見ていました。 「勇者『ノノちゃん』。あの杖の(つい)の言葉で、全てを終わりにしてくれないかな? 争いの無い、元の国々へ戻れるように」 『ぴりからステッキ』を見定める。確かに、そこにはもう1つの言葉が記してありました。 「そうしたら、そうしてしまったら、あたしは『ルキお姉さま』に会えなくなってしまいます。それだけは、それだけは嫌なの!」  翠玉の瞳はいつまでも優しく見ていました。あたしに視線を合わせ、ただずっと、じっと。 「――また会いましょう。――もっと素敵な世界で、――きっとまた会いましょう」  お姉さまの眼差しは頑なでした。迷った。迷ったけど、迷ったけど  頷き、あたしは掲げました。そしてその一文を、  噛みしめるよう唱えました。 『―――― あー美味かったぁ~。ほなな~♪』  世界が何重にもねじれていきます。黒と白のマーブルが全てをねじっていてそこに残ったのは、  あたしと、――『フォーチュン』だったモノ、だけでした。  仮面を付けた『フォーチュン』は言いました。 「この世界は壊れてしまうかもしれない。ここに住んでいた者たちと一緒にね。けど、『国枝ノノ』。キミが望むなら……」 『フォーチュン』だった男を残して捻じれた世界の先にある扉を開きました。もう終わりだから、終わってしまったから『フォーチュン』は連れていけない。  そこには、  在るべきそのままのあたしの部屋があり、背に在ったはずの扉は、光失いぼろぼろと、今にも崩れ落ちそうになっていて  あたしの手に残ったのは『始まりと終わりの杖』である  ――『ぴりからステッキ』――、だけでした。

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