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夢幻戦隊ゲンソウジャー

読了目安時間:3分

お知らせ:MNC企画準備と書き貯めのため、次回更新は8月下旬を予定しています。 詳細は7/31の『Midnight Ruins』(活動報告)をお読みくださいませ。

7月28日 <不知火黎>

 上陸を予想された大型台風が海上へ逸れていったおかげで、窓が切り取る空は憎らしいほど青い。  (れい)がノックに応じると、病室のドアが開いた。ベッド脇に置いたパイプ椅子へ、美羽(みう)が腰かける。白いコットンのワンピースと麦わら帽子がよく似合う。 「黎くん、身体の調子はどう?」 「問題ないさ。それより美羽、俺の見舞いよりも自分の――」 「あのとき言ったことは、比喩や誇張なんかじゃありません」  それは瀕死の重傷を負った黎の代役に、(めい)が選ばれたタイミング。  ――私……黎くんが死んだら後を追うつもりでした。  あれ以来、その一言が常にふたりの間にある。何度それを撤回させようとしても、美羽は決して応じようとしなかった。 「戦士候補だったときに説明されただろう。死ぬこともあるし、取り返しのつかない怪我をする可能性も高い。死を恐れるなら辞退してくれ、って」  黎が急襲されたあと、美羽は毎日見舞いに来ている。出動があった日も、音大で大切な実技試験があった日も。用事の前か後かという違いはあるが、彼女がこの病室へ来ない日はなかった。 「私、夢を見てたんです」 「え?」 「血だまりの中に倒れてる黎くんの姿を見るまで、甘い夢を見てたの」  力を合わせて敵を倒し、正義のヒーローとして世界中から称賛される。そんな黎を、隣でずっと見ていられたら――。 「それは幻想だ。無傷で俺たちが勝てる保証なんてないし、一般人に全く被害を出さずに勝てる目算も」 「ええ。だからもう、私は逃げません」  強く抱きしめたら折れてしまいそうなくらい華奢な背を、ぴんと伸ばす。  真夏に狂い咲く桜のような白い頬を強張らせ、美羽ははっきりとした口調で告げた。 「あなたが好き」 「…………」 「お願い、レッドに戻ると約束して」  空調の音が低く響く。 「黎くんが、マシナリアとの戦いに勝つまで誰とも付き合う気がないことは、ずっと前から知っています。私の気持ちを受け止めてくれなくてもいいの」  アブラゼミの声が空調と重なり合う。  黎は掛布団の上に置いた自分の拳をしばらく見つめていた。  頷いてしまえば、優しい夢を見られるのはわかっている。  一つ年下で、いつからか自分をひたむきに見つめてくれていた清楚で美しい女性。公私ともに支えてくれる信頼のおける仲間。他の男に目移りすることもなく、命懸けで自分と共に使命を(まっと)うすると誓ってくれる……まさに物語のヒロインだ。 「俺も、甘い夢を見ていたんだ」  最終候補の条件は、適性値80以上。  しかし、黎は例外的に【赤適性72】で確定していた。  適性値は、どれだけ「奇跡の力」を使いこなせるか、という指標だ。あるいは「変身後の強さ」と言い換えることもできる。 「俺が一番死に近かったんだ、最初から」 「わかってます。だから次からは私が黎くんを守るわ。たとえこの命を捧げても」 「俺と自分の未来は切り離して考えろ」 「あなたのいない未来や地球なんて、なんの意味もないの」  ごめんね、重い話をして。  そう呟くと、美羽は椅子から立ち上がる。 「約束して、必ずレッドに戻るって」 「……努力する」 「ありがとう。それじゃ、また明日ね」  足音が去るのを待って、黎は咄嗟に掛布団の下へ隠した書類を取り出した。  誰が置いたのかはわからない。目が覚めたら枕元のキャビネットにあった。黎が昏睡状態にあった最中、レッドの補欠選考会議が行われた。その資料らしい。  不知火明、赤適性92――。  その数字を前に、黎は低い嗚咽を洩らすことしかできなかった。 7月28日 <不知火黎>の挿絵1 ■■■■ 第1章『正義のヒーローのアルバイト』 Fin. 第2章『ダブルキャスト』 To be continued...

◆次回予告◆ 第6話『代役の代役!!』 8月下旬連載再開予定 「可愛いって罪だと思ってたけど、正義だったのネ……」 夢幻の力で無限の奇跡! 『夢幻戦隊ゲンソウジャー』お楽しみに

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  • くのいち

    代 居玖間

    ♡3,000pt 〇100pt 2021年7月28日 19時42分

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    全俺が泣いた

    代 居玖間

    2021年7月28日 19時42分

    くのいち
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年7月29日 0時58分

    代さん、第1章ラストまで読了&貴重なノベラポイント等ありがとうございます✨ お陰様で、ヒーローものの王道も踏まえつつ、不穏な匂いを混ぜながら給水ポイントまで来れました🥤 今回の話の画像をよく見ると、知ったお名前が混じっていたり( *´艸`) 第2章とMNCの準備がんばります🌈

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    千楓

    2021年7月29日 0時58分

    黒猫ステラ
  • かえるさん

    こおりもち

    〇50pt 2021年7月28日 21時39分

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    これは興味深い

    こおりもち

    2021年7月28日 21時39分

    かえるさん
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年7月29日 1時48分

    こおりもちさん、第1章ラストまで読了&貴重なノベラポイントありがとうございます! おかげさまで、1つ目の大きな角を曲がることができました。運命に翻弄される2人のレッド(黎と明)の戦いの軌跡を、また一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです✨ 書き貯めがんばります🌈

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    千楓

    2021年7月29日 1時48分

    黒猫ステラ
  • 女騎士

    ヨドミバチ

    ビビッと ♡1,000pt 〇10pt 2021年9月15日 23時43分

    《不知火明、赤適性92――。》にビビッとしました!

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    ヨドミバチ

    2021年9月15日 23時43分

    女騎士
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年9月18日 22時41分

    まさかの兄貴より強い妹……。ちなみに明は、兄貴の数値を知りません(大波乱)。彼女がどうして選考から洩れていたのか……その辺は物語後半で語られる予定です。がんばって書きます!🍀

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    千楓

    2021年9月18日 22時41分

    黒猫ステラ
  • 文豪猫

    革波 マク

    ビビッと 〇10pt 2021年7月28日 19時43分

    《不知火明、赤適性92――。》にビビッとしました!

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    革波 マク

    2021年7月28日 19時43分

    文豪猫
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年7月29日 1時02分

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    続きをご期待ください

    千楓

    2021年7月29日 1時02分

    黒猫ステラ
  • かえるさん

    J_A

    ♡3,000pt 2021年7月29日 23時13分

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    続きを楽しみにしてるよ

    J_A

    2021年7月29日 23時13分

    かえるさん
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年7月30日 1時25分

    Jさん、第1章ラストまで読了してくださり、ありがとうございます🌈 アドバイザーとしていろいろ教えていただけたおかげで、無事に1つ目の関門を越えることができました。またお話聞かせていただけたら嬉しいです。第2章の書き貯めがんばります(`・ω・´)ゞ✨

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    千楓

    2021年7月30日 1時25分

    黒猫ステラ

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