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夢幻戦隊ゲンソウジャー

読了目安時間:15分

第1幕 正義のヒーローのアルバイト

第1話 レッド、覚醒す!!

「お兄ちゃん、目を開けて……ねぇお兄ちゃん!!」  抱き起こそうとした身体が重すぎて、地面へ落としそうになる。じわりと濡れる制服のスカート。黒くて赤い血が、わたしの手のひらや制服を汚した。  ガソリンの臭い、パチパチ音を立てて燃える沿道のケヤキ、赤ちゃんの泣き声。逃げ惑う人影、それを追いかける重たそうな足音、頬を撫でる生ぬるい風。  ぬるぬるする手のひら、赤く染まったアスファルト、苦しそうに眉間にしわを寄せて目を閉じたままのお兄ちゃん。  怪我をしているのが頭だけじゃないと気づいて、慌ててお兄ちゃんの赤いブルゾンを脱がせた。白のロングTシャツだから、怪我をした場所はすぐに分かる。胸――真ん中より少し左に、細くて短いパイプみたいなのが突き刺さってる。きっとあの気持ち悪いロボットの背中にたくさん生えてるやつだ。  引っこ抜いちゃダメ、ってことは何となく分かる。じゃあ、どうすればいいの? 「……め、い」  息とほとんど変わらない掠れた声。  お兄ちゃんはコピー用紙みたいな顔色で、どうにか身体を起こそうと腕に力を入れた。胸に刺さった細いパイプから、ピュッと勢いよく血が飛び出る。慌てて身体を歩道へ横たえた。 「救急車、呼ぶね!」 「(めい)……それより、この腕時計(チェンジウォッチ)をおまえの左手に」 「う、うん?」  まじまじ、ナイナイ。そんなことしてる暇なんかない。  だけど、それはお兄ちゃんの言葉。  お兄ちゃんはゼッタイ正しい、それだけは間違いない――だからわたしは涙を拭うより先に、お兄ちゃんの手から黒い腕時計を外して自分の左手に嵌めた。 「俺が教える、呪文を……」  そこまで呟いたところで、お兄ちゃんは呻き声と一緒に真っ赤な血を吐いた。  呪文? 何それ意味不明。だけどそれはお兄ちゃんの言葉だから。スマートウォッチみたいな腕時計(チェンジウォッチ)へ話しかけてみる。 「お願い、呪文を教えてください。死神みたいなロボットが暴れてるの」  エフェクトのかかった声が呼応する。 『ヘイ、ガール。補佐AIのファイターだ。遺伝子情報が近いな、レイの姉妹かい?』 「妹の明です。お兄ちゃんから、呪文がどうとかこうとか……」 『聞いてたさ。しっかしなあ、妹だからって変身できるとは限らないぞ』 「でも、お兄ちゃんがやれって」 『レイの頼みなら仕方ない。復唱しな』  文字盤から聴こえてくる言葉を、意味も解らず口にする。 『目覚めよ、ゲンソウ遺伝子(ジーン)!』 「目覚めよ、げんそーじーん!」  左手首の腕時計が光り始める。その途端、身体の奥が痛いくらい熱くなった。 『夢幻チェンジ! コネクト・不死鳥(フェニックス)!!』 「むげんチェンジ! コネクト・フェニックス!!」  真っ白な光に満ちた世界の中、誰かに呼ばれた気がして振り返った。身体全体がメラメラ燃えてる鳥がわたしを見おろしている。目が合った瞬間、急降下する炎の鳥。  それは、怖いとか痛いとかじゃなくて。まるで初めから決まっていたことのように、炎の鳥はわたしの身体を焼き尽くした。  お兄ちゃんの声が波の音のように響く。 「めい、おまえだけでも……」  目を閉じると、ここへ辿り着くまでのことが走馬灯みたく頭に甦った。 第1話 レッド、覚醒す!!の挿絵1 ■■10分ほど前、不知火(しらぬい)家の玄関■■ 「ねーえ、お兄ちゃん。明日109(イチマルキュー)に連れてってほしいの。ダメ?」  夏のセールの前に、憧れのショップの下見がしたいの。でも、独りで渋谷はちょっと怖いから……。  するとお兄ちゃんは子犬が笑うみたいに、くしゃっと笑い返してくれた。 「しょうがないな。日曜は午後からバイトだから、昼までだぞ」 「やったー! お兄ちゃんダイスキ!!」  トレードマークの赤いブルゾン越しに、長い腕へしがみつく。  不知火(れい)、国立大学医学部2回生。わたしのジマンのお兄ちゃん。  頭よくて、運動もできて、かっこよくて、優しくて、将来の夢は「難病の子どもを救う外科医」なんて超コーショーな夢を持ってるスーパーお兄ちゃん。  アメコミヒーローヲタクで(『ハルク』が推しなんだって!)、ガリガリ君ソーダ味が好きで、去年もらったバレンタインチョコの数は21個。  わたしの頭をぽんぽんしてくれた左手首の腕時計から電子音。その途端、お兄ちゃんの眉間にしわが寄った。 「……バイトから連絡だ」 「でも、もうすぐ晩ごはんの時間だよ」 「母さんと先に食べてな。そうだ、危ないから家から出るなよ。絶対だぞ」  そう言って玄関を飛び出していく背中に、なーんか嫌な予感。  目を合わせず、口はまっすぐなのに口角だけ無理やり引き上げて――あれはカンペキ、何か誤魔化してるときの笑顔。下駄箱の上にお財布が残されてるし。 「おかーさーん。お兄ちゃん、何かヘン!」 「黎だってもう二十歳なのよ? カノジョの十人や二十人……」 「お兄ちゃんはそんなロクデナシじゃないもん!」  革財布を引っ掴むと玄関から飛び出した。黒い自転車がない。駅はすぐそこなのに……ますます怪しい。  これはきっと、お母さんやお父さんにも言えない秘密の予感。  優しいお兄ちゃんのことだ。大学の先輩に誘われたかなんかして断り切れなかった、超ヤバイお仕事か何かに違いない。 「待ってて、お兄ちゃん! わたしが守ってあげる!!」  赤の自転車にひらりと跨り、思い切りペダルを踏み込む。  いける、この感覚――競輪界のレジェンド、神山雄一郎が降りて来たような力強い足さばき。乙女の意地をかけて、角を曲がって消えた赤い背を追う。 「お兄ちゃん、忘れ――」  声を掛けようとしたそのとき、わたしの髪を強い風が薙いだ。  スペースシャトルが脇を通ったら、あんな感じなのかな。とんでもない速度の鋼鉄の塊が駆け抜けていく。  何秒も遅れて身体を叩きつける轟音。灰色の鉄の塊はレールのない道を駆け抜け、赤いブルゾンを着た男の人を()()()。 「きゃっ」  横殴りの風にバランスを崩してしまう。  勢いのついていた自転車ごと、地面を吹っ飛ぶように転がる。どこが痛いのか分からないくらい、全身のあちこちがジンジンしてる。カラカラと回る自転車のタイヤ、悲鳴と呻き声の渦、ピクリとも動かない赤ブルゾンの背中。 「……あ、え……?」  理解できない状況に、脳がショートしそうになる。目の錯覚だと思いたくて何度もまばたきを繰り返す――だけどいくら待っても、壊れた世界は元に戻らなかった。  大きな鎌を持った不気味なロボットと、地面に転がったまま動かない赤ブルゾンの男の人。さっぱりした黒髪、白いロンT、長い足が映える黒スキニー……見間違いじゃない。赤い水たまりに倒れてるのは、数秒前まで前を走っていたお兄ちゃんだ。  どうにか立ち上がったけど、現実とは思えない光景に、喉で悲鳴が立ち往生する。  苦しそうな呻き声や叫び声、コンビニに突き刺さったタクシー、空を飛び交う鳥たち。  あちこちに落書きされた真っ赤なペンキの原料が何かなんて、考えたくもない。考えたくないのに、トマトじゃなくて錆みたいな匂いだ、とか感じて吐きそうになる。  助けて……誰か……ママどこ?……痛てぇよ……誰かタスケテ  血の海に沈む赤ブルゾンへ走る。急いで抱き起こすと、頬を鮮血で染めたお兄ちゃんは苦しそうに唸り声をあげた。  ――そこまで思い出して、瞼を開く。 第1話 レッド、覚醒す!!の挿絵2  目を開けた途端、その変化に気づいた。  黒のセーラー服じゃなくて、身体にフィットする素材でできた赤い上着と黒いズボン。幼い頃にテレビで観た正義のヒーローとか、お兄ちゃんの好きなアメコミヒーローが身にまとう衣装みたい。 「えええええっ!?」 『すごいぜ、メイ。まさか、ホントにレッドに変身できるとはな!』 「あ、ありがとうございます!」  思わず叫ぶと、道の先で悲鳴を集めていた鉄の塊がこっちを向く。あ、やば。  死神みたいな大きな鎌を握ってる。ぼろぼろのフードから覗く口は笑ってる風だけど、どう考えても「ワレワレは、友好的な宇宙人です」ってカンジじゃない。 「はははは……ゲンソウレッドよ、実に無様であるな」 「げんそうれっど?」 『レイが変身する【ゲンソウジャー】のリーダー。夢幻の力で無限の奇跡を起こすのさ』 「むげんの、きせき……」  お兄ちゃんが『正義のヒーロー』?  超かっこいい。だけど全然喜べない。死神ロボットの挑発に、お兄ちゃんは上体を起こすこともできずにいたから。 「敗北を悟り、その娘だけでも逃がそうとしたか。なんと愚かな」 「くっ」  歯を食いしばろうとして、真っ赤な血が口から溢れる。慌てて止めようとすると、お兄ちゃんは掠れた声で囁いた。 「……めい、おまえだけでも……にげろ」  じゃあお兄ちゃんは? 街の人たちは? 「それをきていれ……す、すこしは……」 『バトルスーツは敵の攻撃を一部吸収する。この姿でならきっと逃げ切れる、ってレイは言いたいみたいだぜ』 「なら、お兄ちゃんが変身して戦えば――」 「ごめ……おれは、もう」  長いまつ毛が頬に影を落とす。  強い風が吹き抜けていく。指先が冷えてく感覚。 「死んだのか? しかし哀れだな……バトルスーツをまとえたことは褒めてやるが、ただの人間が戦えるわけでもなかろうに」  慌てて耳をお兄ちゃんの胸へ押し当てる。  微かにドキドキしてるけど、いつ止まるか分かんないくらい弱々しい。 「レッドを消去(デリート)した功績、さすがに提督も我の力をお認めになるであろう」  頭の中で、二つの声が怒鳴り合う。  ――ぼんやりしてないで逃げないと!  ――わたしが逃げて、そしたらお兄ちゃんや周りの人たちはどうなるの?  ――お兄ちゃんの言葉はゼッタイ。それに、きっとお兄ちゃんなら大丈夫!  鼻を突く鉄錆に似た臭いが道のあちこちから感じられた。サイレンみたいに鳴り響いていたはずの悲鳴や助けを呼ぶ声は、段々と弱まってきてる。  パイプだらけの死神ロボットから逃れようと、男の人が這うようにして逃げていく。  そう、あの人が正しい。殺人鬼の前で可憐な女子高生に選べるコマンドなんて、『逃げる』くらいだもん。  お兄ちゃんはいつだって正しい。お兄ちゃんの言葉はゼッタイ。逃げろって言われたんだから、逃げるのが正しい。どー考えたって正しい。 「安心するがいい。貴様は後回しだ」 「え?」 「貴様はどうやらレッドの大切な者のようだな。ならば恐怖のどん底へ叩き落とし、最後に殺してやろう……恐れ(おのの)き、自分を生かそうとしたその男の愚かしさを呪いながら、赤く血塗れる順番を待つが良い!」  死神みたいな鉄の塊は、高笑いをしながら逃げ惑う人々を追いかけ始めた。  立ち上がり、できるだけそっと引っ張ってお兄ちゃんの身体を道の端へ寄せる。  足が震えてる。ううん、手も肩も全部震えてる。怖い、意味が分かんない。あのぐにゃったパイプの形、ゼッタイ夢に出る。  そうと分かっているのに、腕時計の円盤へ指を這わせていた。アンテナのような何かが端から顔を出してる。もし、これが本当に正義のヒーローの変身した姿なら、この辺りに武器が隠れてるはず。 『武器(それ)を抜いたら、後戻りはできないぜ』 「人生は、いつだって前のめりだよ」 『オーケー、ミラクルガール。夢幻の奇跡を起こしてみっか』  腕時計のつまみを引き抜くと、指揮棒(タクト)のような短い棒になった。  高笑いでガシャガシャ歩く死神の前には、赤ちゃんの乗ったベビーカー。なんとかして引き留めないと。 「へー。わたしのことがそんなに怖いんだ」  振り上げられた大鎌がピタリと止まる。  ボロボロのフードから唯一見えてる口もとが、にたりと歪んだ。 「ほう……我に歯向かうか。このマシナリア軍・三幹部が一人、デザスタント様に」  オーケー、赤ちゃんは守った。あとはあいつに勝つだけ。  でもどーやって戦うの? だってこれ、ただの木の棒だよ。あとは映画で見た魔法使いの杖にも似てる気がするけど。死神ロボットとの距離はどんどん狭まってく。リーダーでレッドのお兄ちゃんがやられちゃうなんて、最終決戦とかそんな場面じゃないの? てことは、あいつはラスボス!?  ――あれこれ考えるうち、ある言葉に気づいた。 「()()って、じゃあ他にもっと()()()()()()ってこと?」 『敵の首領は、ユーダケロス提督。侵略基地から出てこない弱虫野郎さ』 「よかったぁ! 一番強い人が相手じゃないなら、お兄ちゃんも助かるよね」 『ヘイ、猪突猛進ガール。キライじゃないぜ、その考え方』 「ありがと」 「…………貴様ァ」  そう、お兄ちゃんが敗けるはずない。  お兄ちゃんが死ぬなんてあり得ない。  わたしのお兄ちゃんは、強くて、優しくて、頭よくて、かっこよくて、男子にも女子にも人気がある超スゴい人なんだから。 「よかろう。貴様から血祭りにあげてやる」  フードの奥から真っ赤な目が輝く。  目は逸らさない。ゼッタイ逃げない。お兄ちゃんが死ぬ未来なんて認めない。 「クククッ……その柔らかな腹を裂き、熱い血をレッドに降りかけてやろう。大切な者の命が奪われたと知ったレッドの絶叫こそ、我が武勲を銀河に轟かす祝砲に相応しい」  力が欲しい。  ヒーローになる力がお兄ちゃんにあるなら、妹のわたしにだって奇跡が起きたってよくない?  お兄ちゃんを助ける力を、みんなを救う力を――わたしに力を。  思わず振り回したタクトが、ガクンと重くなる。視線を落とすと、タクトは真っ赤な銃へ姿を変えていた。 「貴様……よもや変身だけでなく、そこまでゲンソウ遺伝子(ジーン)を使いこなすとは……」 「げんそーじーん?」 「まさか、予備の戦士がいたのか。しかし武器を振りかざしたところで寿命は延びんぞ、なりそこないレッドよ」  近寄ってくる死神に、思わず引き金を引いた。直後、身体ごと地面を転がる。  あ、やば。これ映画で観たことがある。超強い銃を撃つと、反動とかいう力で身体ごと吹っ飛んじゃうことがあるって。それでも赤い銃だけは離さない。必死に起き上がったところで視界に飛び込んでくる、四つの影。  白、緑、青、黄のブルゾン――お兄ちゃんの赤いのと同じデザインだ。肩甲骨の辺りに無限マーク「∞」が入ってる。白いブルゾンを羽織ったお嬢様風ワンピースの女の人が話しかけてきた。 「遅れてごめんなさいね、黎くん」  妹ですって言うより早く、綺麗なお姉さんは左手を前に構えた。他の三人の男の人たちも後に続く……まさか。 「行きましょう、みんな」 「おう」 「目覚めよ、ゲンソウ遺伝子(ジーン)!」  わたしのときと同じように腕時計が輝く。四人は文字盤を指で握りしめると、ぐいっと時計回りに捻った。 「夢幻チェンジ! コネクト・天馬(ペガサス)!!」 「夢幻チェンジ! コネクト・祖霊鰐(グランガチ)!!」 「夢幻チェンジ! コネクト・人魚(マーマン)!!」 「夢幻チェンジ! コネクト・鷲獅子(グリフォン)!!」  強い光――普通ならきっと目を開けていられない。でもフルフェイスの目の辺りはサングラスみたいになってて、その瞬間がはっきりと見えた。  白い羽根の天馬、ヒグマくらいありそうな緑のワニ、サファイア色した鱗の人魚、翼の生えた超でかいライオン。それがどこかから現れ、それぞれの胸へ飛び込んでいく。わたしのときも、きっと傍から見たらこんな感じだったのかも。  それぞれの色の上着、その右肩から斜めに横切る白いライン、黒いズボンやミニスカート。肘まであるグローブとロングブーツは焦げ茶。魔法使い風バトルスーツは、わたしが着てるのと同じデザインだ。わたしはズボンだけど。  四人は慣れた手つきでタクトを取り出し、スナップを利かせて振った。次の瞬間、白と青の戦士のタクトは銃へ、緑と黄色の戦士のタクトは剣に姿を変える。 「まじで超かっこいい……」  思わず見惚(みと)れていると、四人はこっちを見て不思議そうに顔を見合わせた。慌てて立ちあがったところで、緑の戦士が勢いよく肩を組んでくる。 「おい、黎。ぼーっとしてんなよ」 「あ、あの!」 「らしくねーな。幹部が相手だからって、ビビッてんのかよ」 「違うよ、そうじゃなくて」  そう言われて気がついた、肩を組んだ緑の戦士の指や声も震えてる。すると、黄色の戦士が間に身体を割り込ませてきた。見上げるほど背が高くて、腕もずっしり重たい。 「マシナリアきっての武闘派、デザスタントが相手だ。命懸けっぞ」  青い拳銃を構えた戦士が口を挟む。 「お取込み中悪いけど。ボク、今夜7時から収録あるから、巻きで頼むね」 「こんなときまでオレ流かよ」 「ボクの人生の主人公は、常にボク自身さ」  三人のやり取りをぼーっと眺めていると、白の戦士が銃を抱えたまま話しかけてきた。 「黎くん、いつもより背が低いわね。ゲンソウ遺伝子(ジーン)が誤作動したの?」 「あ、あの――」  手に銀のプラグを握った死神ロボットが、説明の邪魔をする。 「ちょうどいい、ここで貴様ら全員に引導を渡してくれよう」 「あのプラグ!」 「幹部が巨大化とか冗談きついね」 「ふはははははっ 恐怖に咽び泣くがよい。我が真の姿を見せてくれよう……奇怪進化、プラグイン・プラグマ!」  大きなプラグを右手首の腕時計みたいなものへ突き差す。すると地響きを立てながら、死神に似た鉄の塊はマンションよりも大きくなっていった。  白の戦士がこっちへ振り返る。 「黎くん、戦闘機(ファイター)を召喚しましょう」  ファイター、って何だろう?  戦う人(ファイター)っていうくらいだし、巨大ロボでも出てくるのかな。よし、さっき炎の鳥が飛び込んだ胸に手を当てて――でも何にも出て来ない。明らかに不自然な沈黙。なんかこれ、間違えたっぽい。 「あの、どうしたの? 黎くん」 「あ、すぐやります。すみません」  腕時計(チェンジウォッチ)を見ると、文字盤にイラストが表示されてる。銃を変形ね、ありがと。  文字盤をカンニングしながら、刑事ドラマの拳銃なら撃鉄がある部分を叩く。撃鉄がないのはいいとして、弾の装填はどうなってるんだろう。ともかく、赤い銃はタクトに姿を変えた。まるで魔法使いになった気分。  誰に教わるでもなく、手が魔方陣を記していって――文字盤に現れた呪文を唱える。 「召喚(サモン)・ゲンソウファイター!」 『待ってたぜ、ミラクルガール』  魔方陣から飛び出した真っ赤な戦闘機(ファイター)。  その声は、補佐AIのファイターと同じ。  その姿は、変身のときにわたしの胸へ飛び込んできた炎の鳥と似てる……そっか、最初からずっと一緒にいてくれたんだね。 「黎くん、今日こそデザスタントと決着をつけましょう」 「はいっ」  白の戦士の真似をして、左手を中空へ突き出す。説明してる暇はない。とにかく今は、あいつを倒さないと。 「夢幻合体! ゲンソウジン!!」 「むげん合体! げんそーじん!!」  目の奥で火花が散るのを感じながら、鳥を模した赤い戦闘機を見上げる。  わたしは不知火(しらぬい)(めい)、どこにでもいる普通の高校3年生。大好きなお兄ちゃんの代わりに、今日だけ正義のヒーローやります。

◆次回予告◆ 挿話1『6月30日』6月30日水曜19時更新 夢幻の力で無限の奇跡! 『夢幻戦隊ゲンソウジャー』お楽しみに

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  • 文豪猫

    革波 マク

    ♡1,000pt 〇10pt 2021年6月27日 6時51分

    祝🎉連載開始!109だとっ!?(ガタッ)となった私を許してください。笑 テレビで観た戦隊モノが見事に文章で表現されていて、圧巻です!補佐AIや悪の幹部の台詞も戦隊モノ!という感じで楓さんも楽しく書かれたんだろうなと、読者からもウキウキしてしまいます。明ちゃん頑張れっ!!

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    革波 マク

    2021年6月27日 6時51分

    文豪猫
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年6月29日 14時52分

    マクさん、貴重なポイント&感想コメント、たくさんのビビッと本当ありがとうございます( ;∀;)✨ スタートはなるべく王道めに(いきなり代役&女子レッドが王道かは別として笑)、後半からは千楓節の吹き荒れる展開の予定ですので、明と共に楽しんでいただけたら嬉しいですー!

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    千楓

    2021年6月29日 14時52分

    黒猫ステラ
  • かえるさん

    J_A

    ♡4,000pt 2021年6月26日 20時05分

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    これは期待

    J_A

    2021年6月26日 20時05分

    かえるさん
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年6月27日 22時57分

    J_Aさん、スタンプと超たくさんのポイントありがとうございます! 5月に独り言を呟いてから水面下で準備をしていましたが、お陰様でようやく陽の目を浴びることができました🌞本当に感謝してます🍀 地球の存亡を賭けた明の戦いを、是非ご一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです!!🌈

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    千楓

    2021年6月27日 22時57分

    黒猫ステラ
  • モモンガさん

    蜂賀 三月

    ♡3,000pt 2021年7月17日 20時28分

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    楽しませていただきました

    蜂賀 三月

    2021年7月17日 20時28分

    モモンガさん
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年7月19日 16時25分

    蜂賀 三月さん、こちらでは初めまして🌈 たくさんのポイント&感想スタンプありがとうございます✨ 昭和の終わり~平成初期の特撮に影響を受けているので、戦隊ものとしては少し古い表現もあるかと思いますが、楽しんで書いていきたいと思います! またぜひ遊びに来てくださいね🍀

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    千楓

    2021年7月19日 16時25分

    黒猫ステラ
  • 化学部部長

    石嶋ユウ

    ♡3,000pt 2021年6月26日 20時36分

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    いいぞ、もっとやれ!

    石嶋ユウ

    2021年6月26日 20時36分

    化学部部長
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年6月29日 14時23分

    石嶋さん、スタンプと超たくさんのポイントありがとうございます!✨ 猪突猛進ガールな明のごとく、右も左も分からないまま好きという気持ちだけで飛び込んだスーパー戦隊ものですが、全力で楽しんで参りたいと思います!! 次回もどうぞ応援よろしくお願いいたします🌈

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    千楓

    2021年6月29日 14時23分

    黒猫ステラ
  • かえるさん

    こおりもち

    ♡3,000pt 2021年6月26日 20時11分

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    おもしろい

    こおりもち

    2021年6月26日 20時11分

    かえるさん
  • 黒猫ステラ

    千楓

    2021年6月27日 23時04分

    こおりもちさん、貴重なおすすめチケットありがとうございました✨ヾ(*´∀`*)ノ スタンプ&たくさんのポイントも感謝しております🌈 既に全体のプロットはあるのですが、王道と邪道をごった煮にしたような話になる予定です(笑) ご一緒に楽しんでいただけるよう、執筆がんばります!!🍀

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    千楓

    2021年6月27日 23時04分

    黒猫ステラ

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