私の行く先々で事件が起こる件について

53

宴会場

54階宴会場は、40階の植物園と同様 54階の全てを一つの広間としている為相当広い。 和、洋、中と一通り料理は揃っていた。 寿司、刺身、丼物、天ぷら、トンカツ カニの入った味噌汁、茶碗蒸し 松茸入りの具沢山の炊き込みご飯 餃子、焼売、春巻き、フカヒレスープ 北京ダック、ホイコーロー マーボーナス、棒棒鶏、青椒肉絲 ステーキ(牛、豚、羊、山羊)ザウアークラウト アクアパッツァ、フランスパン、チーズフォンドュ アイスバイン、ブラックカレー、ビーフストロガノフ  更には、世界三大珍味も揃っている。 和洋折衷色々な香りが混ざり合う異様な空間。 天井にはシャンデリアが7灯あり、一つの大きな物が中央に それを等間隔で6灯の小さいシャンデリアが囲んでいる。 このホテルのビュッフェは  シッティングビュッフェという形式で 会場の中央に食事する席が並べてあり それを取り囲む様に3層に長方形の料理を乗せる テーブルがコの字型に並べられていて  内側が和食、一つ外側が中華、一番外側が洋食である。 客は、好きな料理を自由に選ぶ事が出来る。 しかし、いつまでもと言う訳ではなく 2時間という制限時間が設けられている。 それぞれのテーブルには、シェフがおり 少なくなった料理は 会場にある調理場から補充してくれる。 皿が一杯になるまで盛り付け終わったら  真ん中の席で食べるという感じである。 「うわーいい匂い、どっれからたっべよっかなー♪」 鼻をひくひくさせて会場内を見回すアリサ。 「アリサ、こういう所は初めてだと思うから 忠告しておくわ。ここではお皿を持って移動するのよ。 しっかり持っていきなさい。わかったわね?  後、アリサはご飯が大好きでしょ?」 「はいっ!それとたこ焼きも好きですっ!」 「今は、ご飯とたこ焼き好きのアリサを 心の牢獄に閉じ込めなさい」 「何で? ママ何で?? 後、心の牢獄って何? そんなのウィキペディアでも見たこと無いよ??」 「それは秘密よ。後ね、何を食べても料金は同じなの。  だから、お米とかたこ焼きは すぐお腹一杯になっちゃうわ。お持ち帰りは出来ないし 冬眠する前の熊の如く出来るだけ多く、そして 高価な物を選び抜き食べるのよ、いいわね?」 「へえー でもね、あの松谷修造もお米食べなさい!!!  って言ってるよ? エネルギーの源だよ カーボンハイドレートゥ」 「・・・今はその人も心の牢獄に閉じ込めなさいっ!」 「はいっ!」 (また言った、これで2度目だ オヤジにも言われた事ないのに・・!) 「しっかしアリサは返事が綺麗よねー。 じゃあ行って来なさい」 ダダダダッ! アリサを見送ると、彼女を連れた八郎が声をかけてきた。 「こんばんわ先輩! あれ? アリサちゃんは?」 「八郎君こんばんは、彼女さんも初めましてこんばんは アリサなら今走り出していったわ。 お腹もすいてるみたいだし」 「・・は 初めまして」 彼女も俯いたままおどおどと挨拶してきた。 「すいません彼女、人見知りが激しくて」 「いいのよ、でも可愛い彼女じゃない。 八郎君には勿体無いわ」 「いや先輩全くその通りです、そうだ先輩  彼女との出会いの話聞きます?  これがめちゃくちゃ泣ける話なんすよ アリサちゃんには話したんですけど号泣していました」 軽い嘘を突く八郎。 (このこ うざいわね) 心の中で思いつつ笑顔で 「いえ、遠慮しておくわ。 私も重い荷物を持って歩いてて腹ペコなのよ のろけ話でお腹いっぱいにしたくないわ」 「へ? そうですか・・オイラ本気で悔しいです。 15時間は語れたのになあ」 (15時間て・・あぶないわね。うっかり聞いていたら ビュッフェの時間終わってまうわ、後オイラて・・ こんな子だったかしら?) 心の中で思い、八郎達と別れる。  一方その頃、アリサは全力で走っていた。 少しでもカロリーを消費する為に。 そして、アリサは走りながら辺りを見回し分析した。 少しでもカロリーが少なく美味しく高価な物を・・ そして、アリサなりの結論が出た。 辿り着いたのは和食のコーナー。 松茸の・・・炊き込みご飯だった・・・ アリサは、松谷修造の 「お米食べなさーい」 と言う言葉を毎晩動画を見ていて 常に聴いてきている。 そう、潜在意識にまで刷り込まれていて 結局無意識にお米を選択してしまうのだ。 アリサは返事はいいのだが 興味がない話は半分も聞いていない。 「これならママも納得するわね」  と得意満面で丼に山盛りに盛っている。 「おお、アリサじゃの。又会ったのう」 炊き込みご飯を盛っている途中のアリサに ロウ・ガイが声を掛けて来た。 「あっ、ロウ・ガイだ。何しに来たんだ?」 「何じゃと? ・・アリサ、相談なのじゃが 出来ればフルネームで呼ばないで欲しいのじゃが ガイさんなんてのはどうじゃ?  どうも老害呼ばわりされている気がして嫌じゃのう」 「やだよ。ロウ・ガイだって弟さんの事 キチ・ガイってフルネームで呼んでいるでしょ? 実はキチガイ言いたいだけでしょ?」 「そ、そんな事はないぞい」 (相変わらず鋭い子じゃのう・・) 「あ、ちょっと動揺してるじゃない。 私もやはり言い慣れたロウ・ガイが一番呼びやすいわ しかしロウ・ガイは もう飯を食う年でもないだろうに。 まだこんな所にくるんだな」 かなり空腹の時に食事の邪魔をされたので 口が悪いアリサ。 「ぬう? アリサよ、わしが仙人で 霞以外食べないとでも言いたいのかの? まだその域には到達できんわ。後200年位はかかるかのう」 「ロウ・ガイは後200年も生きるつもりなの?  それで、そこまで生きれば仙人になれると思っているの? どこ情報よそれ? まあ何となくだけど ロウ・ガイなら行けそうな気もするわ せいぜい頑張る事ね。あ、わああああああああああ」 アリサが何気なく天井を見て悲鳴を上げる。 「何じゃ? アリサ、どうしたのじゃ?」 「う、上に化けもん」 アリサは、涙目になりながら上を指す。 「はて?」 ロウ・ガイが天井を見上げると もはや隠れユッキーとは言えそうに無い程 なんとまあでっけえユッキーが 下界の民を見守る神様の様な優しい笑顔で 見下ろして下さっている。 大きさは、4平方メートルはある。 天井を見上げればすぐ分かる程の圧倒的な存在感。 これでは 『頼むから見つけてくれユッキー』 と改名すべきである程のでかさだ。 都会のイーグルスノーホテルのみに存在し 見つけた者の精神を攻撃する悪魔との5回目の遭遇。 一回目とは比べ物にならない大きさで圧倒する。 幾ら優しい笑顔といえど アリサは既にその薄っぺらい内面を知っている。 そんな彼女に言わせれば その笑顔も気持ち悪いの一言である。 このユッキーはプラネタリウムのユッキーと同じ 上にいて、一方的に攻撃してくるタイプの強敵である。 例えば、好きだった人気お笑い芸人の親が 息子が相当稼いでいるのに 生活保護を受けていたというニュースを見た直後 そのお笑い芸人のネタの全てが 嫌いになるというケースもある。  私は高校の時、お笑い番組の漫才の部分だけを録画し 何度も見ていた時期がある。 当然、そのお笑い芸人のネタも幾つも録画していたが そのニュースを見たとたん一切笑えなくなり その芸人の出ている部分だけ 別の芸人のネタで上書きした程だ。 当然何度見ても面白かったネタだったのだが そのニュースを見たとたん急にである。 そう。イメージが如何に大切かと言う事が分かる。 どんなに才能を持っていようが 面白いネタであろうが関係ない 一度でもそういう事を耳にしてしまうと 急に冷めてしまうのだ。特にテレビに出ている人 全般に言える事ではないだろうか? そして、アリサはかつて無い強敵との対峙に 戦慄が走る。 「ぬおっ? 何じゃあれは? 確かに強烈じゃのう ぐうう何か気分が悪くなってきおったぞい」 口から一筋の血を流すロウ・ガイ 「あれは隠れユッキーよ! 私は少し耐性があるけど 一般の人はきついわよ。あんまり直視したら駄目よ 私は平気だけどロウ・ガイは早く休んだ方がいいわ」 ロウ・ガイもかなりの鍛錬を積んでいる筈なのだが 隠れユッキーに対する耐性は、アリサ程ないようだ。 「うむ、あんな物が このホテルの至る所にあると言うのか。恐ろしいのう」 「一応撮影してと、あ! そうか分かったぞ。 ユッキーって言うのは隆之の之から取ってたのか。 タカユッキーじゃ語呂が悪いもんね」 何の意味の無い知識が増えてしまった。 「あんな物可愛く言っても人害を与えるぞい。くっ」 「はあ、全く、それにしても 私の行く先々で事件が起こる件について 一体どうなっているのかしら?」 「ん? なんじゃ? いきなり事件とな?  成程、この上の化け物の事じゃな? しかし、件についてとは変わった言い回しじゃのう お主22ちゃんネラーか」 「違うよ、そういうタイトル・・あっいけねっ。 漫画の全由一とか、命探偵ユナソとかも同じ悩みを 抱えているのかなあって思っちゃって。 あの人達も行く先々で事件に遭って大変でしょ?」 「でもな、あやつらは事件が起こらねば 誰にも読んで貰えぬのじゃ 口には出さぬじゃろうが事件よ早く来い と思っていそうじゃな。 そして、自分が引き寄せとる事も十分承知の上なのじゃ じゃからいつも同じ場所で事件が起こっては 読者を飽きさせてしまうから 色々な所に行っている気がするぞい」 「そうなの? でも言われてみればそうね。 やるわねロウ・ガイ」 「奴らは事件が起こる事が当たり前になっておる。 アリサの様に疑問を感じない方がおかしいぞい。 アリサはやはり賢い子じゃな」 「でへへ」 アリサ・・・こんな所でタイトル回収するとは流石だ。 そう。事件とは人が死んだりする事だけではないのだ。 こういう化け物を見る事自体もこの少女にとっては 一つの事件であり何一つおかしい事ではないのである。  それにしてもあんな化け物を見た後だというのに しっかりと撮影している抜け目の無いアリサ。 何度もこういう場面に遭遇している内に 反射的に怖い物を見たら撮影! というスイッチが脳内で形成されたのかもしれない 常人ならその恐怖から撮影なんて到底出来ないであろう。 だが母親の為に少しでも割引の助けになればと協力する 健気な少女である。 このホテルの欠点と言っても過言ではない 隠れユッキーを自分の携帯の中に データとは言え残す作業。苦痛であるに違いない。 「うーん。しかし、これはどうすればいいんだ?」 アリサは撮影してからすぐ その巨大な化け物を塗り潰す方法を考え始めた。 何事も決して諦めてはいけない。それは アリサの尊敬する松谷修造から教えて貰った金科玉条(きんかぎょくじょう)。 天井までは9メートル以上はある。 テーブルの上に脚立を乗せて背伸びしても届かないし 大人5人位に縦に肩車して貰わなければ届きそうに無い。 そんな高い所での世直し行動は、高所恐怖症のアリサに 出来るかは分からない。 それならアリサが大人達に指示を出し やって貰えばよいのでは? と 考える方もいるであろうが 一番重要な消去は、自分でやらなくては気が済まない そういう責任感が強い女の子なのだ。 それに、耐性が無い大人が頑張っても結局 消している途中で気絶してしまうだけであろうし・・  色々低回を繰り返すが、結局結論は出ず 途方に暮れるアリサ。 「アリサよ一体あれをどうしたいのじゃ?」 ロウ・ガイも漠然とは分かっているが 念の為にアリサに問う。 「・・りたい・・」 ぶつぶつと独り言の様に呟くアリサ。 「ん? 何じゃって?」 「完全に、黒く染めて、消し去りたい」      Щ ゴウッ Щ  燃え盛る正義の心。 「ほほう。物凄い熱量が今お主の体から 放たれた気がするのう。 うむ、かなりの使い手になりそうじゃな 確かにアリサの気持ちは分かる。 わしも体で感じた。あれは危険じゃ しかしのう、あんな所までは筆は届かんぞい」 「はっ!」 ピカーン アリサは頭上に電球の様な物を出し、何かを閃く。 一体何を閃いたと言うのだ?

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