NEXCL 国際勇者試験奮闘記

講習修了

 最早、“戦闘”と呼べるモノは一切発生しなかった。  そこにあったのはただただ、処刑が繰り返されるのみだった。  まず、機動兵器ネクシル レイⅦに乗り込んだ麗華は量子回路と言うシステムに組み込まれた対空兼対人兵器である光魔術と言う量子理論を基にして造られたレーザーファランクスを発射。    それにより機動兵器に乗っていない生身の弓の勇者や槍の勇者や全身鎧の勇者や銃の勇者やヨーヨーの勇者、炎の勇者、雷の勇者、暗殺の勇者などが為すすべなく肉片に変わり消し炭になった。 「クソ!問答無用か!」  機動兵器に乗った勇者達が悪態を吐く。  問答無用に麗華に宣戦布告した本人達が何を言っているんだと第3者がいればそう言いたかっただろう。  こうなる事に対する“自覚”や“覚悟”“責任”がない彼らは悪態を吐くしかなくどの道、そう遠くない未来に麗華に反逆するのか確定的な事実だったのかも知れない。  機動兵器に乗った勇者は各々、機体内部に内蔵された高出力の火器や俗に言うロケットパンチや勇者剣だの断罪剣だの厨二臭い名前をつけた接近武器で麗華に牙を剥ける。  だが、そもそも無意味だ。   麗華のネクシルはそもそも、人間との戦闘など考慮していない。  高次元の存在……強いては勇者の元締めである悪魔と戦う事を想定して設計されておりそもそも対人間用に調整された火器や機動性など持っていない。  それらを遥かに凌駕するのだ。  彼らの攻撃が麗華を捉えたと思った時にはネクシルは彼らの目の前から消えており気づいた時には自分達の後ろから何かが潰れる音がしたと思い振り返ると……そこにはコックピットにコンバットナイフを刺された勇者機の無残な姿があった。  無駄がなく一指しで致命傷を与え勇者機は力なく垂れ下がる。  勇者達は咄嗟にネクシルに攻撃を仕掛けるが既にそこにはネクシルの姿がなく自分達の攻撃だけが四方に放たれ、友軍機に命中してしまう。  物事をよく考えず自分の正義を顧みなかった彼らの身勝手さが味方に対するフレンドリーファイアを産んでいた。  その隙を麗華は逃さない。  無駄なく、確実に殺す。  稲葉麗華は根っからの職業軍人なのだ。  勇者のように正義を誇示する為に戦ったりしない。  ただただ、任務に忠実な存在であり勇者とはそもそも対極であり自分がかつて所属していた学校で教師をしていた時に自分が人生で初めて会った勇者がいたがその人物の事は今でも理解出来ておらず、寧ろ、今でも異常者だと思っている。  その勇者がとんでもない被害を出し世界を破滅に導いた。  だからこそ、勇者と対極にある自分が大切な教え子達を陰ながら守る為にこの仕事をしているのだ。  麗華にはある優秀な教え子がおり、その人物は今では麗華の上司になっている。  その人物はとくかく、あり得ないくらい利他的で自己犠牲と母性が非常に強く、とても軍人には向いていないとすら思えた。  しかし、そんな彼女のお陰で今の世界は救われ、今も自分も生きている。  だから、その恩を返す意味でも彼女の苦しめた勇者を赦す訳にはいかなかった。  この講習を通して、悔い改めた勇者も僅かながらおり今のこことは違う別空間で観戦している。  己の罪を悔いたならかつて罪があった自分すらも赦した彼女のように麗華も赦すがこの期に及んでもなお、悔い改めないならもう、分かり合う時など存在しない。  「諦めなければいつか」と勇者は明日を誇るかも知れないがそれは定められた時までに  仕事をせずに問題を先送りにする社会人と同じだ。  「いつか、いつか」と明日を誇り怠惰に根差すのだ。  それは世界の命運を左右する勇者であれば決して赦される品性ではない。  その怠惰が世界を食い尽くすのだ。  麗華はそれをよく知っている。  だから、その「いつか」に甘えたこの場にいる勇者は1人残らず殺す。  そう決めているのだ。 「馬鹿な……」 「まさか、これほどの……」  勇者達は茫然と立ち尽くし立ちはだかる死に怯えた。  次元が違い過ぎる。    それこそ、“奇跡”を何度起こしたところで届かないと理解させるほどに隔絶とした力の差を感じた。  勇者からすれば、麗華は死神のように見えても不思議ではなかった。    実際、勇者機の中には“奇跡”の類を行使する機体もあり原因と結果の逆転だとか、強力な力場を発生させるとか、この場にいる勇者の想いを1つにして様々な奇跡を齎す力だとか色々、行使したがその全てが無に帰した。  当然だ。  奇跡を起こした程度で人の可能性や正義は示せない。  何故なら、悪魔ですら光の天使を装い、奇跡を行使できるのだ。  物事の成否を人の想いや意志で起こした“奇跡”に頼っている時点で勇者の“正義”とは所詮はちっぽけな灰の1粒に過ぎないほど軽いのだ。  高々、灰の1粒に負ける人間などいない。  況して、死神がその程度で躓く事はない。  それが恰も必然であるようにこの戦いも赤子と大人の戦争の結果のように必然なのだ。 「終われ……」  麗華が冷たく宣言して最後の勇者機のコックピットにコンバットナイフを差し込み引き払った。  こうして、100近くいた勇者はその全てが麗華に殺された。  生き残ったのは観客席にいる勇者だけでありその中には肩パットの勇者もいた。  そして、麗華は宣言する。 「5名の勇者諸君、おめでとう。お前達は合格だ。後日、ABから経過観察用のアンドロイドが派遣される。くれぐれも壊すなよ」  それは「壊したら、どうなるか分かってるんだろうな?」と言う遠回しな威圧である事を誰もが理解し破壊した場合の“責任”などを“自覚”した彼らは激しく首肯した。 「よろしい。では、本日の講習はここまでだ」  こうして、また稲葉麗華の仕事が1つ終わった。  ◇◇◇ 「な、何なのだ!お前は!この悪の化身たるノワールゴットに楯突いてただで済むと……」 「例え、お前が誰であろうと勇者達が残した不始末を残す訳にはいかない。だから、わたしが言うべき事は1つだ——————お前に……お前達に明日(いつか)はない。」  麗華のナイフが敵の心臓を抉った。

この作品からの派生なので原作はこちらhttps://novelup.plus/story/381960458

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