指先から伝わる恋

読了目安時間:3分

エピソード:2 / 16

驚きの告白

緊張のあまり握り締めた布団に皺が寄るのを視界の端で捉えながら、告げられる言葉の衝撃に身構える。 「えっと、その、俺」 中途半端に言葉が切られて、またもごもごとされる。焦らされているようで気持ちが落ち着かない。 しばらく待ってみるも、なかなか言い出さないことに痺れをきらして、国木は自身が置かれた立場を無視して詰め寄る。 「言いたいことがあるなら早急に言え」 「は、はい! 男が好きなことに引かれないどころか、憧れの国木さんとお付き合いできるなんて夢のようです。粗相することもあると思いますが、国木さんを幸せにできるように頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします!」 上司と部下の関係故に、急かされた後は条件反射のように大谷が素早く応えた。応えると同時にベッドにぶつかる勢いで頭が下げられる。 身長が高い大谷のつむじを初めて見たと間抜けな感想を抱いた後、国木はついに頭痛に耐えきれず後ろからベッドに倒れ込んだ。 「国木さん、大丈夫ですか」 大丈夫なわけあるか!と、反射で応えそうになって口元を抑える。 国木の動作に勘違いを起こした大谷が「水入れてきます!」と、予備動作をほとんど感じない素早い動きでキッチンへと向かった。 ぱたぱたと遠ざかる足跡を遠くに聞きながら、必死で頭を動かそうとするも、鈍器で殴られたかのような衝撃を受け止めきれずにただ天井を見つめる。 経緯は全く不明だが、何故か大谷とのお付き合いが始まっているらしい。 同じ職場での恋愛をご法度だと自分で課したにも関わらず、このような状態に陥っていることに頭が付いていかない。 しかも今年入社の新卒で――男だ。同性での恋愛を否定する気はないが、自分が同性と知らぬ間に付き合いが始まっていることに戸惑いを禁じ得ない。 不可抗力とはいえ、大谷が同性愛者であることを合わせて伝えられたことで驚いてしまった自分がいる。 驚きを持ってしまったことに対する反省は大いにするべきだが、もう一つ猛省すべき点が話の流れから汲み取れた。 大谷が同性愛者であることを引き出したのは、昨日の自分が原因と推測できる。昨日何かしらのやり取りを経て、付き合うことになったのだろう。 どんなやり取りを持ってその結論に達したのかは全くの謎だが、昨日のことは全て誤りでしたと一方的に断るには、あまりに忍びない。 もし仮に大谷が異性であれば、同じ状況に陥った場合に土下座する覚悟で誤解だったと必死で訴えたかもしれないが、同性となるとどう対応を取るべきか検討がつかない。 頭を抱えていると、大谷が水の入ったコップを持って戻ってきた。未だに寝そべっている国木に労わる視線を向けながら水を差し出す。 「勝手ですが水を入れてきました」 「悪い。ありがとう」 身を起こしながら差し出されたコップを受け取って一気に飲み干す。 喉元を通る冷たい水が気持ちいい。喉が渇いていたのだと水を受け入れたことで自覚する。 少し覚醒したが、頭痛が収まることはない。昨日の置き土産に口の中で舌打ちをする。 「あの、まだお酒残っていますか?」 「大分な。昨日ひどい飲み方していたみたいだな」 いつも酒の場ではセーブして飲むことを意識していたのだが、昨日は量を見誤ったらしい。 記憶をなくす、部下に自宅まで送らせる、挙句の果てには付き合うことになる。どんな言い訳も通らない役満の状況に陥った自身が情けなくて仕方ない。 「ひどい飲み方なんてしていないですよ。それに酔ったのは国木さんの責任じゃありません」

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