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救世主は救わない

読了目安時間:6分

この作品はフィクションです。 重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

インタールード B-2

 二人が【転移(てんい)】した先は、以前【色欲(しきよく)】が居た、巨人の神殿だった。  私は少女の手を離し、距離を取る。  すぐさま【色欲の魔神(まじん)】の少女の蹴りが空を切った。 「ハッ、おあつらえ向きに、この場所を選んだ訳か! いいぜ、今度こそ殺してやる!」  少女は喜悦の表情を浮かべている。  それに対する私は、さて、どうしたものでしょうか。  本気を出せば、少女を殺すのは容易い。  ですが、それでは私達の目的からは遠のいてしまいます。  もう随分長い事、待っているのです。  前回は【救世主(きゅうせいしゅ)】の保護を優先させましたが、今回はこちらを優先出来ます。  この機をみすみす逃し、次の機会を待つのは、流石に骨が折れます。  何とか、この少女を殺さずに屈伏させなくてはなりません。  本気を出して、力量差を思い知らしめることで、少女が屈伏するでしょうか?  いえ、恐らく、本気を出せば、【水晶球(すいしょうきゅう)】に私の【憤怒(ふんど)】が検知されてしまう事でしょう。  まだ、今は、時期尚早に過ぎますか。  事を構えるのは、少女を引き入れ、彼の成果を確かめてから、が妥当ですね。  私は、方針を決定する。 「もういいよな? もう待ちきれない、もう待てない、もう殺す!!!」  そう叫ぶやいなや、少女が正面から殴りかかって来る。  私は軽くバックステップすることで、それを躱す。  ……よりも早く、少女の拳が迫り来る。  予想よりも、少女が早い。  下がり続けながらも、迫る拳を手で払いのける。  一度、二度、三度、連続して、途切れない。  下がるのを止め、足を踏みしめる。  拳を左右に払いのけ、両の掌底で空いた少女の胸を突く。  少女が吹き飛ばされて…………いなかった。  少女もまた、足を踏ん張って、衝撃に耐えてみせた。  距離は開かず、至近。  左右に流された両手は使わず、上体を前傾に戻す勢いのままに、頭突きを見舞ってくる。  手を相手の顎に添え、下半身を落とす。  相手の懐に潜り込むように縮めた身を反転させ、片膝をつき、顎を支点として背負い投げる。  今度こそ、少女は投げ飛ばされた。  が、衝突はせず、両足で着地してみせた。  その地面が踏み砕かれる。  凄まじい勢いで飛び上がる。  と見せかけて、地面に這うようにこちらへと迫る。  一瞬で足元まで接近し、胴体に向けて貫き手を放ってくる。  それを半身で躱し、顔に掌底を叩き込む。  少女の首があらぬ方向へと曲がる。  構わず、腕を振り抜いた。  少女の体が、顔を支点としたバク宙をするような状態になる。  そこに、腕を振り抜いた力を利用して体を回転させ、後ろ回し蹴りを叩きこむ。  少女の体がくの字に曲がり吹き飛ばされた。  壁面へと衝突する。  少女が再起する前に接近を果たす。  突き出した足を力強く地面へと踏み込み、正拳突きを叩きこむ。  激震。  少女が壁に深くめり込む。  更に足を踏み込み、正拳突きを叩きこむ。  踏み込み、叩く、踏み込み、叩く、踏み込み、叩く、踏み込み、叩く。  と、そこで、ふと我に返った。  殴る事に没頭してしまっていた。  その場から飛び退き、少女の様子を窺う。  だが、壁にめり込み過ぎて、姿は見えない。  倒すことが目的ではない。  相手の牙をへし折り、膝をつかせ、自身の敗北を認めさせる必要がある。  故に、出来るだけ相手に攻撃をさせ、それを全て捌き、いなし、躱し、反撃を叩きこむ。  相手の攻撃は通用しないのだと、力の差を認識させる。  少女の埋もれた箇所から、周囲の壁へと亀裂が走る。  直後、壁が破砕した。  そこに少女の姿は…………無い。  背後に気配。  咄嗟に攻撃しそうになるが、ここは堪えて、相手の攻撃に備える。 ≪溺惑(できわく)≫  少女の気配が変わる。  悪寒に従い、全力で回避を行う。  その場を飛び退いた直後、地面が爆ぜた。  大量の土砂が宙に吐き出される。  一瞬、視界が奪われた。  隣から殺気。  回避より防御を選択。  両腕を盾に、攻撃に備える。  構えたのとは反対側、背後から攻撃が繰り出された。  恐らく殴られたであろう衝撃に対し、あえて逆らわず、押された側へと身を投げる。  地面に片手をついて宙で姿勢を正し、少女の居る方向へと向き直る。  背後に殺気。  こちらの想定を上回る速度。  今度は迎撃を選択。  背後へ足を振り抜く。  すると、その足を掴まれ、投げ飛ばされた。  翻るスカートを押さえつつ、少女の居場所を捉えようと視線を周囲へと這わす。  地面に辿り着く前に、その地面から殺気。  今度は相手の攻撃を視認してからの迎撃を狙う。  下方に目をやり、相手の攻撃を見逃さぬように目を凝らず。  少女の姿が掻き消える。  遅れて、少女の立っていた地面が陥没する。  顔面へと迫る貫き手を、しかし、当たる寸前で両手で掴み取る。  今度は見失わず、捕まえてみせた。  自身の落ちる勢いのままに、少女を掴んだまま地面へと落下する。  地面に着く間際、少女を自身の下側へ移動させ、仰向けの状態で下敷きにする。  そして、両足で体を踏み抜く。  地面に激突。  少女から飛びのき、着地。  瞬間、少女が足元へと迫っていた。  突き出される貫き手。  それを手で払う。  貫き手が連続する。  それを連続して払いのける。  隙をみて、相手の両手を自分の両手で掴む。  体を引き寄せて、腹に膝を叩きこむ。  浮きあがる体に、両手を離し、少女の顔面に拳を合わせる。  振り抜く。  地面を削りながら吹き飛ぶが、少女は四つん這いの姿勢を取り、四肢で衝撃を殺してゆく。  少女がこちらに向かって駆け出す。  姿が掻き消える。  気配は……上。  両腕を交差させ掲げる。  そこに足が降って来た。  かかと落としを両腕で受け止める。  加えられた衝撃に対し、受け止めた足元の地面は沈まない。  全身をバネに、衝撃を吸収し切る。  その力を打ち消さず、そして、反転。  今度は、吸収した衝撃を腕に、手に伝わらせる。  少女の足を払いのけ、両の掌底を、先の衝撃を上乗せして放つ。  少女が天井へと射出された。  天井に叩きつけられるも、すぐに這い出してくる。  天井から地面へと降りて来た。  攻防は続く。  どれ程の間、繰り返しただろうか。  且つて、巨人の神殿だったこの場所は、最早、見る影も無い程に破壊されている。  地面も壁も天井も、罅が入っていない箇所はなく、クレーターがいくつも出来上がっていた。  私にダメージは無く、少女は満身創痍だ。  少女の攻撃の悉くを凌いでみせ、そこに攻撃を加えていった。  しかし、まだ少女の気勢は削がれていない。  そろそろ、終幕といたしましょう。 【憤怒】は使用を控えたいが、【純潔(じゅんけつ)】ならば問題無い。 ≪清浄≫  怪我はないものの、身体や服についた塵や埃を取り除く。 ≪静謐(せいひつ)≫  世を静かしめる。 ≪純潔≫  この身も世界も清く保たれた今、【純潔】が真価を発揮する。  最早、少女は反応することも出来ない。  こちらから一方的に攻撃を加えてゆく。  拳による乱打で、少女の体が宙に張り付けになる。  浮いた体を、拳で縫い留め続けている。  吹き飛ばすことなく、ダメージを蓄積させてゆく。  少女の反応が無くなった頃、拳に()る拘束を解いた。  少女の体が地面に落ちる。  動きはない。  だが、死んではいない。 「……さて、これで理解出来ましたか?」 「…………」  少女からの返答はない。 「貴女では、私には勝てません」 「…………」  依然、返答はない。 「貴女も解っているとは思いますが、私は【憤怒】を使用していません」 「その私に、貴女は【色欲】を使用しても尚、敵わなかった……」 「…………っ!?」  少女が反応を示す。 「貴女に問います。ここで死ぬか、私に従い生き延びるか」 「さぁ、どうしますか?」  少女は長い沈黙の後、答えを出した。

21/07/09 誤字修正 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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  • 女神官

    花時雨

    ♡100pt 〇10pt 2021年7月9日 22時06分

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    これは興味深い

    花時雨

    2021年7月9日 22時06分

    女神官
  • 殻ひよこ

    nauji

    2021年7月9日 22時37分

    いつも誤字報告有難う御座います。いつも誤字が残っていて申し訳ありません( ;∀;) 『跳びずさる』割と意識せずに使ってましたね。常用ではなかったのか。『飛び退く』にしておきました。 戦闘シーンの描写は難しいですね。精進あるのみです(+_+)

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    nauji

    2021年7月9日 22時37分

    殻ひよこ

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