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救世主は救わない

読了目安時間:14分

この作品はフィクションです。 重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

第23話 憤怒

 光が収まった後、館は跡形も無くなっていた。  それどころか、地面すら抉り取られていた。  その中心に居た筈の【鬼神(きしん)】の姿は…………無い。  よもや、先の雷で消滅した訳ではあるまい。  俺は、ようやく風が収まった事で、その状況を確認する事が出来た。  位置的には、館を挟んで、集落とは反対側へと飛ばされてしまっていた。  すると、視界の奥の方で、落雷が起きた。  集落のある辺りだ。 ≪転移(てんい)≫ 【転移】でその場へと急ぐ。  館に落ちた雷よりも威力が弱かったのか、被害はそれ程出てはいないようだ。  だが、被害が無い訳ではないのだ。  数軒規模で焼失している。 【鬼神】はその場には居なかった。  だが、すぐ近くに現れていた。  まるで、【鬼神】を狙うかのように、再び雷が落ちる。  光、次いで、轟音。  光が収まったその場には、焼失した家屋と、消失してしまった【鬼神】。  するとすぐに、【鬼神】が他の場所へ現れていた。  それを追う落雷。  焼失する家屋と、消失する【鬼神】。  一体、何が起こっているのか。  相も変わらず、理解が出来ぬままに、集落の破壊が続く。  理由は二の次にして、とにかく【鬼神】に接触して【転移】させなくては、このままでは集落全てが焼失してしまう。  また突然姿を現した【鬼神】の直近へと【転移】する。 ≪転移≫  また落雷や姿を消される前に、【鬼神】へと接触を図る。  その直前、またも、突風に見舞われる。  やはり、この【鬼神】が雷と風を操っているのだろう。 【鬼神】の方へと加重をかけるも、風の抵抗が強く、近づけない。 ≪転移≫  今度は反対側、且つ、すぐそばに【転移】し、【鬼神】に触れる。  この機を逃さず、すかさず【転移】…………は発動しなかった。 「っ!?」  思わず絶句する俺の元に雷が落ちた。 【聖衣(せいい)】により耐えるも、視界が雷光により眩んでしまう。  眩む視界が戻る間に、今起きた出来事について考える。 【鬼神】もまた【神樹(しんじゅ)】と同様に、何かしらの方法で【転移】を阻害出来るらしい。  これでは俺に出来る【鬼神】の排除は叶わない。 「そなた、何故此処に! そこで何をしておる!?」  ようやく戻って来た視界に、お館様とそれに従う鬼達の姿を捉える。  その周囲は落雷により焼失している。 【鬼神】による被害は広がるばかりだ。 「【鬼神】が(くだん)の【憤怒(ふんど)】です! もう元の状態に戻ることはありません」 「何だと!? そなた【鬼神】様のお姿を勝手に……」 「……これは鬼族の問題だ。そなたは手を出すな! 良いな!」 「…………」  手を出したくても、もう打てる手立てが無い。  相も変わらずの無力感に、(ほぞ)を噛む思いが去来する。  俺の返事を待たず、お館様は鬼達を引き連れて、【鬼神】の元へ向かい走り去る。  それを見送る俺は、その場を動かず【鬼神】の力を分析する。  今現在、判明している能力は四つ。  一つは、風を操る能力。  予備動作無しで行使可能。  一つは、雷を操る能力。  現状は、自身を目標として、直下へと落としている。  一つは、【転移】のような能力。  落雷直後、もしくは、直前に瞬間移動している様に見受けられる。  一つは、【転移】の無効。  効果範囲は不明だが、少なくとも、接触による【転移】は無効となる。  これらに加えて、まだ【憤怒】の力が未知数と言える。 【眷属(けんぞく)】ならば、周囲に影響を及ぼさない筈だが、気になるのは天界での会話だ。  確か、反応が強い、とか言っていた。  それはつまり、【眷属】から【魔王(まおう)】に成りかけているという事ではないだろうか。  だとすれば、ここからの展開は、【魔王】化を起点として更に悪化する事になるだろう。  ただ、光明が無い訳でもない。 【魔王】化する事により、【執行者(しっこうしゃ)】に察知される公算が高い。  そうすれば、【嫉妬(しっと)】や【暴食(ぼうしょく)】と同様に、確実に【鬼神】は消滅させられるだろう。  それにしても、あの無表情は一体何だというのだろうか。  怒りを抑えているのか、はたまた、怒りが膨大過ぎて、表現すら出来ないとでも言うのか。  同じ【憤怒】を持つ、メイドさんを思い出してみる。  そういえば、彼女も感情を表に出さない印象がある。 【大罪(たいざい)】は自動的に発動する力だった筈だ。  であれば、常にその力に(さいな)まれている事になる。  怒りを抑え込んでいるからこその無表情なのかもしれない。 【鬼神】も同じだとすれば、あの姿は、嵐の前の静けさに過ぎないのか。  すぐそばを、何か巨大なモノが凄まじい勢いで通り過ぎて行った。  思わず、通り過ぎた方向へと振り返る。  そこにあったのは、地面にめり込んでいる、横倒しになった【鬼神】の姿だった。  状況が上手く飲み込めない。 【鬼神】が誰かに吹き飛ばされたとでも言うのだろうか。  一体誰に?  鬼達だろうか?  いや、彼らは【鬼神】への手出しを躊躇っていた。  その【鬼神】を吹き飛ばし、あまつさえ、周囲の家屋をも巻き込んでいる。  到底、そうとは思えない。  では、一体誰がこれを成し得るというのか。  答えは空から、声の形でもたらされた。 「なぁーんだ。【憤怒】の気配を【水晶眼(すいしょうがん)】で探って来てみれば、全然違う奴じゃん」  それは少女の声だった。  それも聞き覚えのある声だ。  言葉は続けられる。 「……でもまぁ、同じ【憤怒】な訳だしぃ。憂さ晴らしには丁度いっかぁ」  声の主を、視線が捉える。  赤黒い髪、細身の体、赤いキャミソール、黒の長い手袋と靴下。  あの【色欲(しきよく)魔神(まじん)】がそこに居た。  少女の姿が掻き消え、次の瞬間には、【鬼神】へと蹴りが突き刺さっていた。  その衝撃に地面が沈んでゆく。  周囲の家屋が巻き込まれ、崩れてゆく。  蹴りは一度では終わらない。  続けざまに蹴りが放たれる。  その度に、地面が沈んでゆく。  遂には、亀裂からマグマが滲み出て来た。  倒壊した家屋に引火したのか、辺りに火災が広がってゆく。  少女が現れて、僅か数瞬で、最早【鬼神】は死に体だった。  俺が行動に移れずにいる間にも、【鬼神】は死へと(いざな)われていく。  蹴るのに飽きたのか、少女は【鬼神】の巨体を片手で掴み上げると、水平に投げ放った。  クレーターと化していた地面の端にぶつかり、【鬼神】が錐揉みしながら、宙に舞い上がる。  そのすぐ傍に少女が現れ、大きく弧を描いた拳が【鬼神】に向かって振り抜かれた。 【鬼神】の着弾点に、また新たなクレーターが誕生する。  すぐさま少女が【鬼神】の上に現れ、拳の弾幕を浴びせる。  連続する打撃音。  それに呼応して伝わる衝撃と振動。  先程よりも早くマグマまで辿り着いたのか、【鬼神】を中心に、今度はマグマが噴き出した。  少女はそれを軽く飛びのき、避ける。  マグマに覆われてゆく【鬼神】。  やがて、その姿が完全に見えなくなってしまった。  改めて見ても、【魔神】の力は圧倒的だ。  以前は、メイドさんに終始押されていた【色欲の魔神】だが、流石に格下相手では力の差は歴然だった。  すると、何処からか見ていたのであろう、お館様を含む鬼達が現場へと駆け付けて来た。 【鬼神】がマグマに沈んだ様を見て、皆一様に顔色を変えている。 「貴様! ただではおかぬぞ!!!」  お館様が、少女に対し叫び声を上げる。  少女がそちらを見やる。  不味い、非常に不味い。  一瞬で肉片と化してしまう。 ≪転移≫  俺は少女の前、お館様達を背にする形で【転移】した。  少女の目が俺を捉える。 「……あれぇ? キミ、見た事あるよねぇ?」 「どこでだっけぇ?」  これ程特徴的な人物もそうは居ないだろうと、無駄な自負すらあるのだが、すぐには思い出されていないようだ。  とはいえ、目論み通りに興味は俺へと逸れたようだ。 「うーん、どこだったっけ? キミ、知らない?」 「………………」  正直に答えたら、俺が殺されそうな気がしてならない。  今は、好きなだけ悩んでもらう方がいいだろうか。  俺は沈黙を返す。 「んんんー、絶対、見たことあるんだけどなぁー」  怖い。  処刑のカウントダウンを待つ身のように、生きた心地がしない。  だが、時間を稼げば、前回と同じく、メイドさんがやって来るかもしれない。  出来れば呼びに行きたいところだが、今、ここを後にすれば、鬼達が蹂躙されてしまうだろう。 【鬼神】がサンドバッグになっている内に、呼びに行ければ良かったのだが、思考が状況に追いつけなかったのが悔やまれる。 「あ! 思い出した! アイツが連れて行った奴じゃんか!」  と、その時、カウントダウンが終わってしまったようだ。 「キミ、アイツの居場所、知ってるよね? 何処? 何処なの? 言えよ! 早く早く早く!!!」  尻上がりに怒気が高まってゆく。 ≪転移≫  俺は、最初にこの世界に降り立った場所へ【転移】した。  完全に俺がターゲットにされた以上、あの場を離れても大丈夫な筈だ。  ただ、咄嗟過ぎて、天界に向かうのを忘れていた。 「逃げるなんて酷いなぁー、でも今度は置いてかれないよぉ」  すぐ耳元で声がした。  不味い、と思う間もなく吹き飛ばされた。  背後から吹き飛ばされ、正面の岩場へと衝突する。  すぐさま追撃が俺を襲う。  片足を掴まれ、周囲に叩きつけられる。  何度も、何度も、何度も、何度も。  掴まれた状態で【転移】すれば、一緒に天界に連れて行けるだろうか。  だが、イメージする間もなく、頭が叩きつけられている。  徐々に、頭の中が真っ白になってゆく。  次いで、体が浮いた。  すぐに、地表へと叩きつけられる。  周囲にはクレーターや火災が起きているのが見える。  どうやら、この一瞬で集落まで飛ばされて来たらしい。 「ねぇねぇ、意地悪しないで教えてよぉー。アイツは何処にいるのさぁ」 「ボクの【水晶眼】で見つけられないんだよねぇー。アイツ、【憤怒】を隠してるみたいでさぁ」  やっぱり、メイドさんは【憤怒】を抑え込んでいるようだ。  理由までは分からないが。 「キミが答えてくれるまで、ボク、止めないよ?」  ゾッとする声色で、そう囁かれた。  背筋に氷柱が突き立ったような錯覚。  ガキン!  金属が打ち付けられた音が響いた。  少女の背後にお館様の姿が見える。  無謀にも、斬りかかったらしい。  少女は、そちらを見もせず、後ろへ足を払った。  瞬間、お館様の姿が掻き消える。  遠くで衝突音がした。  次いで、爆発したような音が響き渡る。  これは、お館様の場所からではない。  音の発信源に視線を向けると、黒い巨体の姿があった。  マグマに沈んだ筈の【鬼神】だ。  どうやら、死んではおらず、再起したらしい。 ≪赫怒(かくど)≫ 【鬼神】が吼えた。  全身から赤黒いオーラが滲みだしている。  まるで、【神樹】が赤龍(せきりゅう)へと変じた様を彷彿とさせる。  あの時と異なるのは、体色は黒のままだというところか。 【鬼神】が仰向けの俺の直上の中空に現出する。  そのまま、俺ごと少女を潰すべく、拳を振り下ろされる。  潰されると思った瞬間、俺に馬乗りになっていた少女が片手を上げて受け止めていた。  しかし、【鬼神】の攻撃はまだ終わらない。  館を吹き飛ばした、極大の雷が、間を置かず落ちて来た。  空気が裂ける音、凄まじい閃光と衝撃。  ()しもの少女も、雷までは相殺出来なかったのか、俺と共に直撃を受けていた。  俺は、炭化していた。 【聖衣】を突破されており、先程受けた落雷とは威力が段違いだった。  もしも、少女が俺の上で、雷のほとんどを受けてくれて居なければ、即死していただろう。  徐々に【聖衣】により復元されていく俺。  一方、少女はというと、受け止めていた拳ごと、【鬼神】の腕を引きちぎっていた。  少女に目立った外傷はない。  早くこの場を離脱しなければ、巻き添えで確実に死ぬ。  だが、あくまで標的は俺なのか、少女の足に俺の腹が踏み抜かれた。  貫通する。  遅れて痛みが伝わってくる。 「ギイィッ!?」  思わず口から声が漏れる。  片腕を失った【鬼神】が、今度は風で少女を襲う。  少女を抑えつけるように、全方位から暴風が壁となって襲いかかる。  次いで、巨大な足裏で踏み潰そうとする。  少女は無造作に体を動かしただけで、風の戒めを解く。  迫る足裏に、しかし、少女は動かない。 ≪眩惑(げんわく)≫  瞬間、【鬼神】動きが明らかに鈍る。  少女が片足を俺の腹から引き抜き、代わりというように片手で俺の頭を掴む。  軽く跳躍し、【鬼神】の頭へ回し蹴りを放つ。 【鬼神】が横っ飛びに吹っ飛んだ。 「あれぇ? 頭潰すつもりだったのにぃ。アハハッ、石頭過ぎぃ」  その様を見やった少女は、可笑しそうに笑っている。  何時までも続きそうな地獄に、遂に転機が訪れる。  空を覆う黒雲に光が差す。  不思議そうに少女も天を仰ぐ。  そこから【天使(てんし)】の群れが溢れて出て来た。  即座に無数に放たれる光。  少女は俺の頭を掴んだまま、それを軽く避けてみせる。 「んー? 何あれ? 頭んとこ、おかしくない?」  どうやら、【天使】の容姿の事を言っているようだ。  確かに、【天使】は頭部の代わりに天使の輪を正面に向けているという、悪趣味な造形をしてるのだ。  なおも光は少女へと追い縋る。  その都度、少女はそれを避けてみせる。  その間も、俺は頭を掴まれたままだ。  突然、少女の首に刀が振り抜かれる。  少女の首が浅く切り裂かれた。 「いったぁー、何!?」  首に生じた切り傷に、少女は痛みと困惑を訴える。 「……【執行(しっこう)】を用いてもこの程度ですか」  それに答えるように、漆黒の鎧を纏った襲撃者は言葉を返す。 【執行者】だった。 【鬼神】の【憤怒】か、少女の【色欲】か、もしくは両方を、ようやく捕捉したのか【天使】と【執行者】がこの場に現れていた。  突然現れた【執行者】が、少女の首に斬撃を仕掛けたのだ。  少女の追撃を許さぬとばかりに、【天使】からの光線が迫る。  それらを避けながら、少女は先の【執行者】へと視線を向ける。 ≪情欲(じょうよく)≫ 【執行者】の動きが鈍り、息が荒くなる。  己の体を押さえ、この場を脱しようとする。  少女が離脱を図る【執行者】へと迫る。  今度は別方向から攻撃が来た。  別の【執行者】が少女へと攻撃を仕掛けて来たのだ。  少女は煩わしそうに、腕を振るう。  否、腕の先の俺を振るって、払い落した。  横槍を仕掛けた【執行者】が吹き飛ぶ。  だがその隙に、離脱しようとしていた【執行者】は【転移】してしまったようだった。 「もぅ、逃げちゃったじゃないか!」  腹立たし気に、声を発する。  遂には、俺から手を離し、【天使】の軍勢へと向かう。  見る間に、【天使】の数が減じていく。  あっという間に、【天使】が殲滅されてしまった。 【魔王】を消滅してみせた【天使】は、【魔神】には歯牙にもかけられない存在に過ぎなかったようだ。  俺はその間何をしていたかというと、天界へ戻る事を迷っていた。 【魔神】に対して、【天使】も【執行者】も赤子同然だった。  俺が天界へと【転移】し、もし【魔神】が天界に追ってきたら、天界の【執行者】達が全滅する恐れがあった。  無論、メイドさんが対処してくれるかもしれないが、メイドさんが居ない可能性もあり得る。  前回、俺が色々と画策、奔走したことにより、かえって状況は悪化していた。  そのせいもあり、無暗に動くことが躊躇われてしまったのだった。 【天使】を殲滅し終えた少女が、俺の元へと戻って来る。 「今度は逃げなかったみたいだねぇ。まぁ、逃げても追っかけたけどねぇ」 「で? いい加減、アイツの居場所、言う気になったぁ?」 「……俺は言わない」 「へぇー、何で? もしかして殺されないとか思ってないよねぇ?」 「それは……」 「? それは?」 ≪転移≫  辺りは、無明の闇が広がっている。 【暴食】が消滅させた世界だ。  果たして、【魔神】が【転移】についてこれるのか。  また、【魔神】はこの消滅後の世界で生存可能なのか。  それらを確かめようと、ここに【転移】してみせたのだ。  暫く待ってみるも、少女が追ってくる様子は無い。  もっとも、周囲を見る事は叶わないのだが。  しまった、追ってこない場合を想定していなかった。  俺に執着している様子だったので、追ってこない事態を失念していた。 ≪転移≫  灼熱の世界へと戻る。  集落の上空へ現れた。  眼下に少女の姿は…………見えた。  状況は悪い方向へと進んでしまったようだ。  少女は生き残りの鬼達を一か所に集めていた。 【鬼神】の姿は無い。  もしかしたら、先の【天使】達によって消滅させられてしまったのかもしれない。  少女はすぐに俺を見つけたのか、こちらを見て、微笑を浮かべていた。 「おかえりぃー。意外と早かったねぇ。もう少し遅かったら、全員殺しちゃってたけどねぇ」  そばへと降り立った俺に向かい、そんな言葉が掛けられた。 「それで? 言う気になってくれたぁ? それとも、誰か殺しちゃおうか?」 「……分かった、教えるから、彼らには手を出さないでくれ」 「ホント? いやぁー、殺さないでおいてよかったよぉー」  ……未だにメイドさんは現れてはくれないようだ。  もう、こうなったら天界に連れて行くしかないかもしれない。 「……その場所に【転移】する。手を繋いでくれ」 「いいよぉー。でも、また何かされるのも面倒だしぃー」  そう言って、少女は、見覚えのある子供の鬼を掴み上げる。  掴み上げられた子鬼は顔色を失っている。 「この子も連れて行こっかなぁ」  こうなってしまうと、さっきの世界に【転移】する事も無理か。  そんな事をすれば、子鬼は死んでしまう。 「さぁ、早く早くぅー。ボク、もう待ちきれないよぉー」  掴んだ子鬼ごと、腕をブンブンと振り回している。  子鬼は既に、失神してしまったようだ。  俺の手を掴もうとする少女の手。  その手が横合いから掴み上げられた。  少女のもう片方の腕が、子鬼を掴んだまま斬り飛ばされる。  俺も、少女も、驚愕から立ち直れず、反応出来ない。  だが、少女の復帰は早かった。  相手を認識するなり、激高する。 「てめぇーーーー!!!!!」  いきなり現れたメイドさんに対し、蹴りを繰り出す。  が、次の瞬間には、二人共消えてしまった。  暫くの間、誰もが固唾を飲んで、周囲の状況を警戒したが、何も起きる気配は無い。  どうやら、メイドさんが少女ごと、何処かへと【転移】したようだ。  皆も危機は去ったと悟ったのか、徐々に生気を取り戻す。  その顔触れの中には、先の子鬼やお館様の顔もあった。  どちらも無事だったようだ。  怒涛の展開は、ここにきてようやく終わりを迎えたようだった。

21/07/08 誤字修正 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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  • 女神官

    花時雨

    ♡100pt 〇10pt 2021年7月8日 20時12分

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    花時雨

    2021年7月8日 20時12分

    女神官
  • 殻ひよこ

    nauji

    2021年7月8日 22時52分

    誤字報告有難う御座いました。 調べてみると、ご指摘の通り「軒」の方が合ってそうでした。助かりました。 日本語の数え方の種類は、物書きの敵だと思う次第です。 今回、主人公は割と端役だったかも。次回はガチバトル( ゚Д゚)

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    nauji

    2021年7月8日 22時52分

    殻ひよこ

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