退魔師女学園の科学部ども!

読了目安時間:11分

エピソード:15 / 23

第14話:テストSOS

.  あれから、一週間が経った。  ようやく科学部の3人と謎の少女───いや、竜騎士ウルティマは、6500万年前の風邪から解放された。 「そして解放されたと思ったら、中間テスト一週間前ってどう言う事だよぉぉぉぉぉ!!  アタシ二週間全然勉強してないよぉぉぉぉぉぉ!!」 「はいはい、女子力のカケラもない野太い声出す暇あったらとっと教科書を写すんですよぉ、意味もよぉ〜く考えながら、丁寧に腕に公式やら何やらを染み込ませるように!」  しかし、彼女らは退魔師であり科学部である前に学生であった。  霊的事象や魔の物やまつろわぬ神相手にする前に、  今、この華子の様に、テスト範囲の勉強と、ついでに出された課題をクリアしなければいけない学生の立場なのだ。  華子だけではない。日頃から裏で戦う彼女ら全員が苦悶の叫びをあげている。  机の上の、決して祓うことも呪うことも出来ない敵相手に、自らの退魔の力ではなく純粋な頭脳で戦わなければいけない。  それがどれほど苦しい事なのか。  想像を絶する苦しみがある。 「なんで点Pが勝手に動くんだよぉぉぉぉ!!」 「仮定の点Pにキレないでくださいよ!  自担アイドルのグッズ買いに行くPだとでも思えば良いじゃないですか!」 「そんな発想できるの洸優とかだけじゃん!!」 「まぁ私とっくに課題も終わらせてますしねぇ。  というか、その発想の転換ができるかどうか、それがテストの意義でしょうに」  呆れた様子の顔で洸優に言われ────それも嫌味でもなんでもない、『さも当然ですがなにか?』とでも言わんばかりの言葉に、華子は最早涙を滲ませてうーうー唸るしかない。 「衛伊ぃぃぃ!!洸優が虐めてくるぅぅぅぅ!!」 「いや、今の衛伊に助けを求めるのは酷では?」  華子は幼少期からこう言う時に必ず頼る衛伊の方角を見る。  だが、すぐに、  そちらを見た事を、華子は心底後悔した。 「ブツブツブツブツブツの地平面hに対してブツブツブツ次元の裂け目の距離がブツブツブツブツブツプランク・ブレーンへのアクセスを経てブツブツブツブツブツブツブツいや絶対要らない部分ですよねこれブツブツブツブツ意図がわからないしかしあまりにブツブツブツブツブツブツ」  無数のルーズルーフに書かれた数字、文字、計算式。  自分の机はおろか隣の窓にまでびっしり貼られたそれらの中心で、ずっと虚無を見つめる様な目で何か呟きながらシャープペンシルでずっと何かの数式を書き殴る衛伊。 「ヒィィィ!?!衛伊がいつもの難しい式解いてる時になってるぅぅぅぅ!?!?」 「…………透の奴……なんであんな式を我々に私たんだか……  あー、なんかまたムカついてきたのですけどぉ……!!」  華子が「せめて脳みそに栄養を補給せーい!」とイチゴ牛乳を衛伊に与えている中、洸優は衛伊に渡されたとあるものを見て大きく舌打ちしていた。  数枚の紙の束と一枚の手紙だった。 『流石に今後起こる事は私自身面白味がなさそうだから、もっと世界に面白く混沌を巻き起こすため科学部の皆と特に羨ましく妬ましいが誰よりも天才な衛伊教授サマにコレを渡しておく。ついでに洸優も暇ならやりたまえ。  衛伊に渡したあの機械は「レーヴァテイン」という。  そう、北欧神話でその名を聞く謎の魔剣だ。  もう一つの紙の束はそれを修理するために私がなんとか調べて解析した基礎原理と必要な数式だ。  はっきり言って研究は中途半端に行き詰まり、これの用途と本来の意味はコレを見れば華子でも理解できるが、だからこそなぜ「レーヴァテイン」なんて名前になったのか全くわからない。クソ忌々しい。私だって頭脳は一級品のはずなのに、お前みたいな天才の見方が後一歩できない。(ここだけ筆跡が乱れている)  これはお世辞じゃないぞ。残念ながらな。特に衛伊、お前は今も死ねと思っている。  だが、私の将来の目的のためにはお前を利用するしかない。洸優にも見せろ。他の天才でエリートのお友達に見せたって良い。  なんで渡した物がレーヴァテインと呼ばれているのか突き止めてくれ。  そうすれば、もしかしたら竜騎士も殺せる武器が手に入る。  だが、この式を全て解いた時に、君らですら絶望するだろう。  ユグドラシルの木の上にいるヴィドフニルを倒すにはレーヴァテインが必要だが、レーヴァテインを手に入れるにはヴィドフニルの尾を手に入れなければいけない。  有名な問答だが、この存在の意味はこれと同じだと。  せいぜい、私と同じ苦しみで悶えるが良い。  解けたら解けたでお前らを殺してやりたいが。  ではまた会えたら。苦しめ天才ども。  埋もれた一歩及ばない天才、吾君透より呪いを込めて』 「ハン!まぁ、私が?衛伊より下?に見られているのはまだ許せる。色々悪さして討滅対象な自分のこと棚に上げて卑屈さ見せるムカつく態度も、まぁ許せますよ?この私は?  けどなんですかぁ〜〜???この便所の落書きみてーなクソ方程式はぁ〜〜?????  余計な事まで計算して解こうとしていやがるじゃねぇ〜〜〜〜〜ですかぁ〜〜〜〜????  舐めてんですかねぇ〜??物理法則とかそれを解く我々っていう人間をぉ〜〜〜〜???」  と、洸優は衛伊が今必死に解く計算式を見ながらそう酷い顔で心の底からキレ散らかし、バンバン紙を机ごと叩く。 「っったくムカつくんですよねぇ〜〜〜???  何余計な事まで検算すればわかる要素ぶち込んでんだか〜〜〜??  はぁ〜〜〜〜〜(クソデカため息)  …………これが、実際の実験で失敗するって言うのなら、まぁ〜〜〜別にって感じなんですが……」  と、洸優はふと、左腕にブレスレットの様になっているプラス烈屠を虚空に向ける。  込めた霊力に反応して、新しく組み込んだ機構が起動。  フラッシュビームが輝いて、時空の穴が開き科学部の部室(ラボ)へと繋がる。 「この通り……もう普通に使えるんですよね〜、基本的な部分だけで!!  このどこでもワームホールくん(レーヴァテイン)は!!  再現すら簡単でしたしね!!  再現性が高すぎる伝説の武器とはなんなんですかねって話ですよ、ありがたみがない!!  我が家の家宝の烈屠の方が再現むずいぐらいで」  ひょい、といつも通り図書室で本を読んでいるあの少女、竜騎士ウルティマがチラリと見ている横で自分の荷物からパックのミルクティーをとって再び教室に戻り穴を塞ぐ洸優。  机に座り、ミルクティーにストローを刺してぶっきらぼうに飲む。 「これが本当に伝説の武器なんですかねぇ?  多少霊力持ってかれるとは思いますけど、それを補ってあまりにも便利な『秘密道具』でしかないじゃないですか!  便利すぎて、なんで伝承が捻じ曲がり魔剣扱いになったのか分からないレベルの!」 「……まぁ色々な表に出せないレアメタル使っていますが」  と、いつのまにかげっそりした顔ながら正気の目で見ていた衛伊がそう洸優の問いにイチゴ牛乳を飲まされながら答えたのだった。 「あー、戻ってきましたか。  …………終わったみたいですね、計算は」 「計算は。ただし…………そう、やはりというかなぜこんな式を書いてあるのかが意味が全く分からない」  衛伊は、与えられたレーヴァテインを作るために必要な公式の部分を見て、珍しく唸る。 「…………いや、正直言って『訳がわからない』で切り捨てて良いとは私も言いましたがね……  果たして、あの性格の悪い透が、というよりこれを生み出した何者か……伝承通りだと、北欧のロキって神でしたっけ?一体なぜここを残したのか。  ここの式の意味が分からないことが、どうしても引っかかるんですよね」 「意味が分からない……うーん、作った人も意味が分からないからそのままにしたんじゃない?」  と、華子がいつも通りあまり頭の良くない発言をする。  だが、意外な事に衛伊も洸優もふむ、と唸ってまじめにその言葉を考えているようだった。 「…………衛伊、これって『初期の電波研究』って事なんでしょうかね?」 「しょきのでんぱけんきゅう???」 「華子もお世話になっているスマホと言った無線電話、その最初期の研究は、研究者自身が『何に使えるかは分からない』と言った物だったそうです」 「基礎研究という概念があるんですよ。  言ってしまえば、何が眠っているか分からない土地をほじくり返して、何に使えるか分からない資源を見つけるような物です。  そう言った無数の無駄達を絞って抽出して出来た研究が、いわゆる『使える技術』になるんです」 「へー……」 「だったらだったで、誰かはこの式の応用方法を見つけてないのも不自然というか……  実は、どうすれば良いかまでは分かっているんですよね」  と、衛伊は式の書かれた紙を見ながら、頬杖をついた姿勢でそうアンニュイに声を絞り出す。 「マジですか!?  それで、一体何がわかったので!?」 「……()()()()()()」  洸優の問いに、ため息と共にそう簡潔な言葉を絞り出す。 「……二回点火?」 「レーヴァテインを二回点火する。  すると何かが起こる。何かがよく分からないのですが、一つだけ。  それをすると確実にレーヴァテインは壊れるという事です」  と、言って、衛伊は密かに持っていた指輪型のデバイス────これもレーヴァテインに当たる物をポケットから取り出して見る。 「…………実験するにも、ちょっと壊す気にはまだなれない…………  なにせ、中心部分も、動力伝達部分も大分、怪しくて最新型な理屈で作られた物ですしね……  あの図書室の主と化した竜騎士の手伝いもあって」 「…………衛伊、」 「ダメですよ洸優」 「何も言ってませんけどぉ?」 「だから、何かいう前に辞めさせているんですがね」 「……衛伊ぃ、」 「ダメです」  ちぇ、と洸優が不機嫌そうに下がるのを見ながら、さすがの華子も「あ、実験する気だ」とは黙って理解できた。 「…………ねぇ、衛伊?これはそんなに二回点火は危険なの?」  華子も、貰ったヒマワリというべきか太陽のような形のバッジ型レーヴァテインを見せてそう尋ねる。 「全く何が起こるか分からないのですが、それが壊れることだけは確実なんです。  もしも、このどこでもドア(レーヴァテイン)を二回点火してどこか分からない場所に飛ばされた上で壊れたら、帰る事ができるか分かりませんから」 「電車賃借りるとかじゃダメ?」 「宇宙の果てに電車が通っていればの話ですけれども、そういう電車賃か携帯の電波が届く方法がない限りはダメです」 「けど、基礎構造上、5次元亜空間なら一回の点火でイケるじゃないですかこれ。  もう一個持っていけば帰れるのでは?」 「忘れましたか?異界化した場所ですら、4次元より少し5次元に近い場所ですら、時間の間隔が狂っている場合もある。  5分が5ヶ月の異次元空間なんて想定に範囲内なのに、私はあなたのこと70年待てと言われたらまちませんよ?」 「うぅ〜……理屈は痛いほどわかりますけどねぇ……  そういう体験もしてみたい……」 「…………気持ちは分かりますが、まずこの数式の意味を理解するまで待ってください。  もう少しなんです……もう少し」 「そのもう少し、私がこれを二回点火して帰ってくる期間と同じですかね?」 「あなたって人は……」 「はいはいそこまで。  とりあえず今は衛伊の言うこと聞きなさい洸優!  部長命令!」  ちぇー、と言う洸優を見ながら、深いため息を吐く衛伊。  …………そして改めて、その数式を見る。 (─────これは、間違いなく『テスト』だ。  これを作った何者かの、これを見つけた人間に対する明確なテストだ。  分かりやすい答えで立ち止まることまで想定しているような、性格の悪いテスト。  これを本当の意味で解いた時、私たちはこのレーヴァテインの製作された意味、伝承の真実が全て分かる。  そんな、気がしてならない…………)  衛伊は、再び今度は難関の数学を教え始めた洸優と血の涙を流して脳とつながる耳から煙が出る華子達の激しいテスト勉強を尻目に、数式の意味を考え始めるのだった。            *** 「────たしかにあれはテストだ。  ボクも見て驚いたな……前半の式の内容は見た事があるから」  『良い子の算数ドリル』を解き終わった銀髪の少女───竜騎士ウルティマはそう誰に共なくつぶやいた。 「でも、ボクの時代より後のものだ。  ボクの見たかつての文明より、理論では上だ。  お陰で、ボクも彼女らの助けもあって鎧を少し直せた……違うな。『改良』出来た」  そう言って、彼女は小さく細長い装置────どことなく鎧を纏う際に使っていた小刀に似た何かと似た物を取り出す。 「誰が作ったのかも興味があるな……次は、北欧神話の本でも読んでみるかな……」  ふと、そこでウルティマは、辺りをその目で見回す。 (不思議だな。彼女らの興味からなのかな?  なんで、全てを語ったわけではないボクを野放しにするだけじゃなく、協力するんだ。  何か意図がある。そんな気はするが、それだけで説明できない何かがある。  6500万年前、私が接した、私が『姿を借りた文明』とも何か違う。違う気がしてならない)  てこてこと可愛げのある足取りで、この旧校舎の廊下はじに存在する自販機にやってくる。  使えるお金は何故か渡されているので、それを投入してミルクティーを買う。  落ちてきたミルクティーを取ろうと取り出し口に手を入れると、いつもの謎の腕が握手してきたので軽く握手して、ジャンケンで負けて、悔しい顔でミルクティーを渡された。 「…………知識とは違うかな。  改めて感じるこれが、『興味』か」 「─────私が興味のある相手は、君だがね」  ふと、背後から声がかけられる。  見れば、確か彼女は………… 「……生徒会長の、芹沢光、さん?」 「覚えてもらって嬉しいね。  話をしたいが良いかな?」  ふむ、と唸るウルティマの頭に、これは好機かという考えが浮かぶ。 「助かったよ。  ボクも聞きたい事がある」            ***

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