生徒による生徒のための生徒会

#6

 学校にはバスで通ってる。電車で通うこともできる。個人的には電車の方が時間きっちり来るから好きなのだが、なんせ降車駅から学校まで距離がある。  いつもギリギリの時間で学校に登校する俺にとっては、降りてから走って一分以内のところに学校があるのとないとではかなり大きい。これまでの電車のゲームオーバー率は100%。  そういうことでバスを登下校に使用している。  バス停にはすぐに着いた。  そこには先客が二人ほどいた。こんな時間まで部活でもしないぞ。サッカー部か? いや、二人とも女だし、女子ハンド部かバレー部? いや、小柄で華奢だから運動部とかじゃなくて文化系の吹部とかか? といったことを考えながら、俺は離れたところで待つことにした。  先客二名は、こんな下校にしてはかなり遅い時間でも楽しそうにしていた。  キャピキャピ盛り上がってますねー。  俺はワイヤレスイヤホンを取り出し耳につけた。音楽を流し、適当に携帯をいじって時間を潰す。一通りいじって飽きたから、ぼーっとした。  それにしても、冬かってくらいに暗いなー。 「それじゃ、また明日~」 「じゃーね~」  とでも言わんばかりにその二人はお互いに小さく手を振って別れた。残った一人は携帯を取り出していた。  何気なくそれを見ていた。  程なくして、206系統のバスが来た。  プシューと止まる。  女子高生が前から乗り込む。  続いて俺も乗り込んだ。  中はガラガラだった。この時間帯は社会人も学生も誰も居ない。  女子高生は最後尾の左側に座った。  そこで目が合った。 「あっ」 「げっ」  思わず、また顔を歪めてしまった。  一日に二回も会うなんて……  そこには真白がいた。 「空桜音(あおと)こんな時間まで何してんの?」 「……どーも」  罰が当たった。普段信じてもいない存在に頼ろうとするから。  もう二度と祈らねー。  神なんてクソ食らえ。  既視感あるなとは思っていたが、まさかこいつだとは思いもしなかった。  なんでいるんだよ。  俺は、真白とは反対の最後尾の右側に座った。 「てか、なんでげっ?」  真白はそう言って、ぱっちりお目々を細めた。俺は目をそらす。 「え、いや、何もありませんが」 「絶対何かあるでしょ」 「何もないです」 「早く言って」 「ほんとに何も」 「早く」 「えっ、いや」 「言え」 「なんでいるのかなーっとおもっ」  途中で遮られた。 「うちがいて悪い?」 「普通の疑問です。こんな時間まで部活なわけないし」 「部活してましたけど?」 「…………」  陸上部ってそんなブラックな部活やったっけ? 短距離はまだしも。長距離はホワイトだったはず。 「自主練だけど」  プイッと真白は顔を背けて窓の外を見た。 「偉すぎ。ストイックすぎ。まじで陸上好きなんだな」 「うん。好きだけど?」  なんか悪い? とあとが続きそうな言い草だった。 「いや、純粋にすごいなーって思ってさ」  そう言うも真白は外を見ている。  俺も顔を背けて窓の外を見る。 「もう一個聞いても言い?」 「何?」 「今日階段で会ったときのげっは何?」 「…………」  こいつは……ほんと…… 「びっくりしただけ」と理由にもならない言い訳にもなれない戯れ言を放った。自分でも呆れた。  しばらくの沈黙があって「そう」と小さくつぶやいた。納得はしてないようだ。そりゃそうだよな。真白はこんなことじゃ納得しない。  たとえ理論的で論理的で、どう考えても仕方ないような理由であっても真白は納得しない。自分で出した予想・予測・推理・推測・答えだけしか納得しない。  それでも、独善的でも我が強いっていう感じでもない。多少はそうだが、それは誰しもが独善的でもあり、自己中心的でもあることと同じだ。まぁ、人によってその度合いは異なるのは当たり前だけどな。 「ねぇ、空桜音」 「なに?」 「明日のテストってどこ?」 「テストなんてあったっけ?」 「え? 数学だったはず」  思案顔になった。 「え? それも分からんの?」 「だって……」  だって、じゃねーよ!! めちゃくちゃ大事なところだろ!! 「数学のときに聞いたんじゃねーのかよ」 「す、数学の時間は眠かったし……」  こいつ――。 「いつ知ったんだよ」 「さっきひーちゃんから聞いただけだし…………」  ひーちゃんが言うんなら、確定だろう。  よし! あとで伊東に聞こう。 「せ、先生から聞いてないの?」  真白は一縷の望みをかけてきた。 「なんも。てか、あの野郎なんの素振りもなかった」  あのクソ担任、なんであの時、教えてくれねーんだよ!!  まじで覚えてろよ。 「えー」って感じに真白は口をあんぐりと開けた顔になった。 「ちょっと、なんとかしてよー」  真白は少し近寄ってきて、右袖をくいっと何度も引っ張ってきた。 「友達にLINEして聞けよ。なんなら、もう一回ひーちゃんに聞けよ」 「だって、ひーちゃんも微妙って言ってたし……」 「他は?」 「バス待ってるときにLINEしたけど、みんな知らないって」  こいつ……やっぱ嫌われてるんじゃね? 「じゃぁ、テストはない」 「めちゃくちゃ不安なんだけど!」 「大丈夫。ない、多分」 「空桜音も誰かに聞いてよー」  今度は肩を揺さぶってきた。ほんとこういうところが多くの女子に嫌われ、数多もの男どもを死地へと追いやるんだよ! 「あとで伊東に聞くからやめろって」 「ちゃんと教えてね」 「はいよ」  適当に答えた。頬杖をついて窓の外を見る。 「信じてるよ」 「うぃ」 「……」  背後から無言の圧力を感じる。 「わかったよ。言えば良いんだろ!?」 「ありがとう。信じてるよ」  あのときと同じ、言い方、表情をしていた。二階でばったり出会ったとき、立ち去り際に言ったあの一言と同じ口調で音色。独特な、猫撫で声。  この声に男はやられるんだよ。  携帯を取り出し、伊東に放課後の件も兼ねてLINEした。 「「LINEしたぞ 「「明日テストってあんの?  すぐには返事はなし。と、伊東がすぐに返すわけないしな。  携帯をズボンにしまい、三度(みたび)外を見る。真っ暗な外、街頭の明かりに包まれるも明るいとはいえない。人通りも少ない。市街地といっても別に栄えている町でもない。  一年と一ヶ月しか通ってない通学路。もう見慣れた光景。  高校卒業までまだ半分も経っていない。  一年前の自分の心持ちなんてもう忘れてしまった。

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