生徒による生徒のための生徒会

#3

入学式の後にあった校内案内の際に紹介されたことを覚えていた。生徒会室は3階にあがって右に進んだ突き当たりにある。 中に入ると、生徒会室は校庭が全面的に見える部屋だった。ちょうど夕暮れの時間帯だったから綺麗な光景が広がっていた。しかし、俺はその部屋にいた男が何やらノートパソコンに向かい作業をしていたほうに気になった。 「榎田(えのきだ)、この前言っていた助っ人連れてきたぞ」 「失礼します。東山空桜音(ひがしやまあおと)です。よろしくお願いします」 担任に続いて挨拶して一礼。 こういうのは第一印象が大事だしな。うん。 「え、あ、こんなに早く……ありがとうございます」 ノートパソコンをパタンと閉じて立ち上がった。 担任に礼儀正しくお辞儀した。 「これで作業が捗ります。」 榎田という生徒会長は口角と頬を上げて言った。瞼だけ微かに下がった。正確に言うと、目の周りの筋肉が収縮して目の下にしわがなく、頬の筋肉がつり上がりっていなかった。 目元が完全に笑っていなかった。 いわゆる、作り笑い――――。 いくら猫の手も借りたいとはいえ、まったく知らない部外者は嫌なのかもしれない。 担任は俺に目配せして促した。 「二年の東山空桜音(ひがしやまあおと)です。少しでも役に立てるように頑張ります。よろしくお願いします。」 再度一礼。 頭を上げて榎田先輩の顔を見た。 榎田先輩は軽く目を見開いていた。少しの驚きと言った感じか……。 けだるそうな雰囲気とかチャラそうな見た目とかによらず、意外と俺ってちゃんとしてるからなー。 今度は担任をチラッと見た。担任はよしよしといった感じで満足顔だった。 クソッ……。 「三年の榎田勝(えのきだまさる)、よろしく。まあ、中に入ってよ」 「失礼します」 軽く頭を下げてから入った。 えい。 バシッ! 痛っ! 急に担任に背中を感情のこもっていない言葉と同時に叩かれた。ほんとこの人は何考えてんだという意味を込めて首だけ振り返った。 「まあ、こいつ数学は得意だから役に立つと思うぞ」 「あ、はい。ありがとうございます。ほんと助かります。」 榎田先輩はまたしても笑っていなかった。 こういうのは、はたからみたら感謝に満ちた嬉しそうな顔に見えるんだろうなー。 やっぱり俺って邪魔者? 嫌だなー。心が読めるのも邪魔扱いされるのも。 とにかく、やるべきことは聞いておくか。 「生徒会長、俺は何をすればよいのですか?」 二人とも固まった。特に担任の顔は眉間をピクピクさせ、唇に力が入っていた。 あ……もしかして地雷踏んじゃった? 俺は生徒会室の外にいた。 担任にガミガミと「ほんとお前は生徒会長ぐらい知っておけよ」とか「失礼すぎるだろ!」とか「常識だろ!」とか言った感じに絶賛怒られ中ー。 ああー説教?が終わるまで、また羊でも数えておこうかな。前は1245匹だったっけ? 今度は何匹まで数えれるかな? ……あれ? それは別の人間が数えた数だっけな? もしかしてこういうときに羊とか数えたことなかったっけ? 「別に間違えたくらいだったんですから先生そんなに怒らないでください」 生徒会室から榎田先輩が困ったようにして顔を覗かしてきた。 「そうですよ。榎田先輩、生徒会長の風格出てましたし、それに先生言ってたじゃないですか。生徒会長がいるって。そういうから、普通そう思うでしょ」 担任は生徒会長がいるとは言っていない。顔合わせするって言われたから勝手にいるって思っただけ。 榎田先輩は「いやいや、僕がそんな生徒会長なんて」と嬉しそうだった。さっきまでと違って目元に皺ができ、頬はきちんと上がっていた。 本物の笑顔――――。 その顔を見ていたら、目が合った。 榎田先輩は俺を見てニコッと笑いながら、正式な役職を教えてもらった。 「僕は副会長だよ」 ニヤピンじゃねーか。

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