生徒による生徒のための生徒会

#8

「おぅ、それでまた喧嘩したってのか」 「そもそもこれは喧嘩なのか?」  伊東と電話しながら歩いていた。  伊東に「おせーよ」っとLINEしたらすぐに電話がかかってきた。  電話越しの一言目は「なにがあった」だった。  こうも電話が掛かってきて、何もないって言うと明日追求を受けることになる。 こういうことは何度かあった。特に用事も無くなんとなくで電話とかLINEしたら、次の日に「なんかあったんか?」と聞かれた。しかも、こいつ引かねぇからめちゃくちゃだるい。このお人好しが。そんなんだから、人気者になるんだよ。  伊東曰く、「空桜音がそんな無駄なLINEなんてしないから、意味なさげなときほどなんかあったんだって思うよ」だそうだ。 「もう見逃さねーから」だともいってたな。  そんなんだから、人気者なんだよ。  電話越しに伊東に説明した。バスの中で起こった出来事というと体逸れたもののように聞こえるが――――寺野真白との口論を話した。  電話越しの二言目は「期待して損したじゃねーか」だった。 「喧嘩だろ」 「いざこざ」 「子供の喧嘩」 「…………」 「まぁ、それにしてもあの女性悪すぎねーか」  伊東が人の悪口? を言うのは珍しかった。 「人の気持ちも考えないで、ズカズカと自分の言いたいことだけ言いやがって」  あぁ、余計なLINEなんてしなかったら良かった。 「いつものことだから別に気にしてない」 「空桜音が気にしてなくてもさ!」 「やっぱ、あいつだけは無理だわ」 「とか言って、困ってたら助けるくせに」  冗談を入れてみた。 「誰がそんなことするか。そこまで俺は優しくない」  オコラレタ。  そもそも、なんで俺じゃなくて伊東がキレてんだ? 「あの女だけは無理だ」  無理だそうだ。 「なんで元カレに突っかかってくるのかがわかんねー。そっとしておけよ 「しかも自分から振っておいて何もなかったかのように関わってくるからより一層意味分かんねー。別れた後の距離感ってのがあんだろ 「部活のことにしてもさー。そんなの空桜音の問題だろ。その問題は解決してるってのに。部外者は関わってくるなって話。それに空桜音は空桜音で忙しいのに、何が「来なよ。」だ」  ものまねが上手かった。 「空桜音が悩んでるときに自分はろくに空桜音を気にもかけずに、話も聞かずに、助けもしないで何言ってんだよ 「一番腹立ったのが「調子どう?」って…… 「別れて一週間で何が「調子どう?」だ。うるせぇ、バーカ! 黙れ! バーカ! って感じ 「空桜音のことキープしようとしてる魂胆が見え見えなんだよ! まじで、ムカつくわー」  あまりもの怒濤のラッシュだったので話題を切り替えてみる。  このまま怒号のフルコースってのもな。 「み、妙定院紅葉って知ってるか?」 「ミョウジョウインコウヨウ??」 「同じ学年らしい。なんか知ってるか?」  ちょっと気になったので聞いてみる。顔の広い伊東のことだ。何か知っているかも知れない。 「知らないな……でも、ミョウジョウイン?」  なんか知っていそうな感じだすなー。匂わせ。匂わせ。なんだかキタイしてしまうな。それほど期待してないけど。 「んーー、どっかで聞いたことあるような……ちょい待てよ」  そう言って、伊東は何やら黙ってしまった。 「あっ、思い出した。三組の女子だ」  伊東はその流れで言う。 「その女の子がどうした? 好きなのか?」  ほ~ら、すぐ恋バナへと持って行くー。最近男子高校生はどうも人の恋事情に首を突っ込みたがるのかねー。いや、別にそう言うのじゃなくて。  と、心の中で考えてたらツンデレちっくになったので軽く首を振って思考をリセットする。 「いや、違うって。さっきも言っただろ? 担任のせいで、生徒会の手伝いしてるって。その生徒会にいたんだよ」 「あー、あの子生徒会やってたんだ。意識高いなーとは思ってたんだけどな」  含みある言い方だな。嫌な予感がしたが……好奇心の方が強かった。開けるなって言われたらなんだか開けたくなる――危ないモノだとわかっていても触れたくなる気持ちってやつだな。なんだかワクワクするな。 「なんで伊東は知ってんだ?」 「ん? あーー、一年の頃に告られた」 「ふぇっ?!」  驚きのあまり変な声が。  想像以上の劇物だった。 「まじ? 俺聞いてない!」 「あれ? 言ってなかったっけ?」 「聞いてない!!」 「なんかさ、去年の夏? くらいに急に呼び出されたんよ。そんで少し雑談して、そしたら急に好きですとか言われた。こっちとしては初対面だから、どういう人か分からないだろ?だから、友達から始めません?って言って断った」  言葉にならなかった。 「…………」  生徒会室で見たときは、そんなに積極的な感じに見えなかった。 「へ、へー、でもなんでそんなインパクトある子を軽く忘れてたんだ?」 「いや、忘れてた訳じゃなくて、名前の読み方が分からなかったんだ」 「はぁ?」 「だって、そのとき名前言ってくれなかったし」 「えぇ?!」  また変な声がでた。 「あ、そういやモミジ……コウヨウのLINEもってんぞ」 「お前、モミジって呼んでたのか? いや、あれはそう読んでしまうけれど……」 「ん? あー、まともに話したのはそれくらいで後はずっとLINEでしか会話してなかったからな。ほら、LINEだとモミジでもコウヨウでも漢字で打てば一緒だろ?」 「それでも、廊下ですれ違ったときに何回かモミジって呼んだかも知れないなー」 「申し訳ないことしたな。今度謝っとこ」  申し訳なさそうな声だった。 「…………」  ウソだろ? なんでこんなところで繋がりがあんだよ。 「紅葉、良い奴だったぞ」 「俺、多分嫌われてんだけど」 「そんなことないだろ?」 「だって、紅葉おしとやかで誰に対しても優しい感じだったぞ」 「なん、だと……?」  おいおい、生徒会室で俺のこと睨んでたのは何だったんだ?いかにも、他の奴は受け付けませんって感じだったじゃねーか。  うわー、なんかイメージ崩れたわー。  乙女な感じに見えなかった分その反動は大きかった。 「お前のせいだ」 「え? なんで?」 「いいから、受け止めろ」 「え? うん? なんか悪かったよ」 「すんなりと謝るなよ。俺が小さい人間に見えるだろうが」 「えー……ほんとすまんな」  伊東は本当に申し訳なさそうだった。 「……」 「空桜音は、小さい人間じゃないぞ。寛大で優しくて――」 「フォローすんな!! 余計に悲しくなるじゃないか!」  お互いに笑い合った。    それからしばらくの間、家の前で互いにくだらない世間話をした。

コメント

もっと見る

コメント投稿

スタンプ投稿


読者のおすすめ作品

もっと見る

  • 怪異と戦う一人の少年の物語

    ♡89,400

    〇41,230

    ミステリー・連載中・25話・81,986字 ネコカレー

    2021年3月4日更新

    ある日、霧崎=悠は夢を見た長い黒髪の幼き少女が悠に「遊ぼ」と声をかける。すると手の甲に時が刻まれ、それが零になると悠は「死」ぬと少女が言う。 その遊びの内容は怪異と戦うことだった… 霧崎悠は異能力「黒レコード」を使って怪異の謎を探り推理して怪異となった犯人の正体をみつけて戦う。

  • 異世界転生した天才チートな主人公のお話

    ♡1,074,100

    〇15,580

    異世界ファンタジー・連載中・188話・871,486字 普門院 ひかる

    2021年3月4日更新

    天才物理学者である普門院亮は、中世ヨーロッパに似た魔獣や魔法が存在するファンタジーな世界へと転生してしまった。 亮はバーデン=バーデン辺境伯の次男フリードリヒとして、懸命に学び、武技や魔法の修練を積んで冒険者としての活動を始める。 パーティーメンバーも次々と集まるが人外娘やら個性的な娘ばかり。クエストをこなすうち、更に人外も含む女性が集まってきて慕われるのだった。 やがてフリードリヒはシュバーベン学園に入学し、前世の妻の転生者であるヴィオランテと衝撃的な出会いをはたす。が彼女は高貴な家柄の姫だった。 ヴィオランテとの結婚をめざし、フリードリヒは早期に昇進を果たすため、軍人の道を選び、軍事学校を卒業するとシュバーベン公国の近衛騎士団への入隊をはたし、第6騎士団長に就任する。 そして、ホーエンシュタウフェン朝の復活や対デンマーク戦争で大活躍し、その軍功を認められホルシュタイン伯へと昇進するとともに、皇帝の命により元ホルシュタイン伯の娘と結婚する。 その後、モゼル公国が地方領主連合国軍に攻め込まれ、これを救出するが、モゼル公はなんとヘルミーネの父だった。フリードリヒは、ヘルミーネと結婚しモゼル公爵の地位を継ぐこととなった。 モゼル公となったフリードリヒは、ロートリンゲンの平定に奔走し、その実効支配に及ぶ。これを踏まえ、皇帝はフリードリヒにロートリンゲン大公位を与えるとともに懸案であったヴィオランテとの結婚を認めるのであった。 引き続きフリードリヒは自由経済圏の拡大などの政策に取り組んでいく (2021/1/14、1/22、1/27、2/18 部門別日間ランキング1位)

同じジャンルの新着・更新作品

もっと見る