生徒による生徒のための生徒会

#4

「以後気をつけます」 「そんな気にしなくて良いよ。生徒会長も副会長も変わらないからね」  いや、変わるだろ。 「それで生徒会長は何処に行ったんですか」  この人が副会長なら、肝心の生徒会長はどこ行ったんだ? と気になった。 「あぁ、真条(しんじょう)は他の用事で今はいないんだ」  ほう、生徒会長は真条って言うんだ。 「それで、なんで副会長だけ残ってたんですか? 仕事ですか?」 「んー、まぁそんな感じ」  榎田(えのきだ)先輩はノートパソコンをチラッと見た。  背後から扉が開く音と共に「ただいま戻りました」と穏やかで優しい感じの女性の声が聞こえた。  振り向くと同じ制服を着た女性が二人いた。背の高い方はロングヘアーで容姿端麗、お嬢様な雰囲気が出ている。もう一人は髪型はショート、隣が美人のせいで、霞むがクラスで三番目くらいには可愛いって言われるくらいには可愛い。  ショートはショートでも、確か……ショートボブとかいった髪型だったような気がする。  身長差がかなりあるように見えたのも、ショートの人の背が低いのもあるし、ロングヘアーの人の背が高いのも相まってそう見えたのだろう。  二人と目が合った。一人は「こんにちは」といいお辞儀をした。もう一人は軽く会釈しながら、こんにちはと言った。担任は二人に「お疲れ様」と言うと榎田先輩にした説明をもう一度した。俺は再び榎田先輩にした挨拶と同じ文言を述べた。 「こんなにも早く助っ人が来るなんて本当に助かります!ありがとうございます!東山君もありがとうね!」  安堵したように頬を綻ばせた。本当に嬉しそうだ。頬も上がり目元に皺もあった。疑う余地のない笑顔。 「私は三年の真条奏です。生徒会長を務めさせていただいております」  一礼。  この背が高くて鼻もシュッと高くて綺麗な顔立ちをした美人な人が生徒会長?――――モデルみたいだ。あれ? なんでこんなに美人な生徒会長のこと覚えてないんだろうな? おかしいなー? 「あ、私は二年の妙定院紅葉(みょうじょういんこうよう)です。もみじと書いて紅葉です。書記と庶務を兼任してます。どうも……よろしく、お願いします」  危うく聞き飛ばすところだった。コウヨウ?光陽?光曜? ――――いや、女だから、紅葉か?  名前のセンスが輝いていると思った。コウヨウだけに。  そんなしょうもないことを脳内で、一人でしていたら、紅葉はむっとした顔をして俺を見てきた。  怖っ。口に出してないよな?読心術でも習ってんの?  あっ、睨まれた。 「えっ、東山君って数学得意なの?!ほんと助かる!ありがとう」  両手を掴まれた。紅葉を見ていて、何言ったのかわからないが、担任がまた勝手に要らないことを言ったらしい。てか、いきなり初対面の人間の両手掴むか?この生徒会長あざとし。危ふし。 「えーーー……っと、それで俺は何すれば良いですか?」  しかし、その不注意のおかげで気づけたことがある。  紅葉の顔には一瞬だけ変化があった。それは真条先輩が俺に突っかかったときに現れた。  眉の内側が微かに上がり、目を下に向けた。目を下に向けるだけなら判断できないかも知れないが、上瞼が僅かだが下がった。それだけでなく、唇に力が入るのがわかった。悟られないように感情を押し殺したのだろうが、感情はそう簡単に言うことを聞いてくれない。  感情は、自らが自覚するよりも前に生まれ、それが表情として顔に現れるものだからな。 「東山君?聞いてる?」  真条先輩が顔をのぞき込むように傾けていた。「大丈夫?」と言わん顔だ。  どうやら真条先輩が仕事の説明をしてくれてたらしいが、うわの空なのがばれた。  真条先輩のあざとい行動で髪がふわりと少し動いた。良い香りが…… 「え、あ、はい。すみません……もう一度お願いします」  目が泳いでいるのが自分でも分かった。 「真条、俺から説明するよ」  榎田先輩が助け?てくれた。 「あ、ありがとう。お願いするわ」  真条先輩は申し訳なさそうにしながら身を引いた。  それからというものの榎田先輩から一通り説明を受けた。  基本的に、渡された会計資料のまとめとそれを見てパソコンに数字をポチポチ打ってエクセルで計算という感じだった。会計資料といっても各部活の一ヶ月分の出費と今月のおよその予算が書かれたものだった。真条先輩と紅葉は各部活の予算の使用状況や残高の確認にまわっていたらしい。  え? 月ごとにこんな予算調整してんの? 過去になんかあった? 「それじゃ、俺は職員室に戻るから。後は頼むぞ。東山は帰りに職員室寄れよ」  担任は俺の肩に手を置いて生徒会室から出て行った。 「はぁ、帰るの遅くなるじゃないか」そんなつぶやきにも近い独り言だったのだが、「大丈夫。初日からそんながっつりと仕事なんてさせないよ。作業確認したら帰っていいよ」と榎田先輩がポンっと肩に手を載せて慰めてくれた。 「ありがとうございます」 俺はそう言った。そう言うしかなかった。

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