プロローグ

 この世界には大勢の名前も知らない誰かが生きていて、その数だけの物語があると偉い人は言う。  しかしながら俺が思うに、世界というのはたった一つの物語だ。そのたった一つの物語の中に我々は偶々混ざったに過ぎない。  この世の大多数の人々がモブキャラであり、数名の主要人物という舞台装置(ぶたいそうち)を目立たせるための小道具に過ぎないのだ。  無論(むろん)、それは俺も例外ではない。  大なり小なり個性はあれど、ある程度最初に決められた規格から外れることはない。  平たく言えばどこにでもいる高校生。俺はそういう存在だ。  毎朝決まった時間に起き、準備をして、学校に登校し、授業が終わったら家に帰って、一日を終える。  危険もないが、大きな変化もない。そんな当たり前の日常を過ごす有象無象(うぞうむぞう)。  でもそれでいいと思っていた。  この目に映る世界が全て物語の一部なら、これ以上に素晴らしいことはないし、己が普通であることさえも世界に求められた意味だというならばそれもまた悪い気はしない。  本当に、そう思っていたのだ。  世界には主人公と呼ばれるものがいる。  この世界に愛され既成(きせい)の概念から突出した、ただ一人の存在。  彼らの周りには素敵な人々が集まって、その人たちもまた彼らの恩恵を受けて少し違った人生を歩む。  俗にいうヒロインというのもこの素敵な人々にあたる。  主人公にしろ。ヒロインにしろ。決して、俺と関わり合うことのない。同じ世界に住んでいながら、違う世界の人間だ。普通に生きていたのならお互いにすれ違うことはあれど、視線を交錯(こうさく)させることなどまずないだろう。  だがもし、そんな相手。ましてや、そのヒロインと俺のようなモブがまかり間違って関わるようなことがあったならどうなるだろう。  答えは言わずもがなである。

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