親友の金で食う肉はうまい

 ふあっと、大口を開けて本日十数度目の欠伸をしたのは、四時間目の授業が丁度終わるころだった。  別に授業が退屈だったとかそういうわけではない。単純に寝不足なだけだ。 「眠そうだな」 「ん、まあな」  そう声を掛けてきた隣の席に座る少し伸びた髪を茶色く染めた少年。池田に返事をして席を立つ。  授業で頑張って意識を保っていたせいで、必要以上のカロリーを消費したからかお腹はペコペコだ。    我が家ではお弁当制度が廃止されて久しいので、今日も今日とて学食を利用する他に昼食を摂る手立てはない。  昼食代はきちんと貰っていて一週間で二千円ほど。    三百円のかま玉擬きうどんを五日間食えば実に五百円浮く計算になる。ちなみに擬きとつけた理由は、つゆだくだからだ。かま玉うどんにつゆはいらん。  食堂に着くと食券を買って、まだ若干空いている列に並んでおばちゃんに食券を見せると、結構な速さで出来上がったかま玉擬きを受け取り適当な場所に座った。 「お前、本当にかま玉ばかり食ってるけど足りてんのか?」  どうやら付いて来ていたらしい池田が、俺がかま玉擬きを啜るのを見ながら微妙そうな顔をする。 「足りはしないが、腹いっぱい食って午後の授業で寝たら世話ないからな」 「うっへえ、優等生だあ」 「寝てても授業についていけてるお前と違うんだよ」  それなりに聞き流したり、ノートに落書きをしたりしないわけではないのできちんととは言わないが、それなりに受けていないと、このマンモス進学校では簡単に成績が落ちてしまう。  寝ていてもサラッとテストで学年五十位以上の点数をとれている池田と俺とでは、脳みそのスペックが違うのだ。  自分が馬鹿だとも思わないが、要領は間違いなく悪い。あと多少人よりも楽天的であることも認めよう。  赤点取らなきゃいいやとかテスト前には考えがちなのである。 「まあいいや。それより昨日の放課後。お前、転入生の女の子と一緒に居たんだって? ちょっと噂になってるぞ」  想定の範囲内の出来事なので大して驚かない。  かたや転入生の美少女と、かたやどこかぞの馬の骨が、部活棟で勧誘を受けていたという話が話題にならないわけがないだろう。  むしろちょっとで済んでいるだけ良かった。  デカいこと以外、これといって特別なこともないうちの学校であるし、案外、美少女というだけでは誰もそこまで強い興味を持たないのかもしれない。 「色々あってな。少し学校を案内してたんだ」  特別誤魔化すことはせず、端的に事情を話すと、それ以上は池田も突っ込んでくることはない。「ほーん」とだけ言ってから、黙って自分のとんかつ定食を食べ始めた。  だが、食べ始めて少ししてから、何を思ったのか池田はふとこちらを見た。 「なあ、少しとんかつ食わね?」 「いただこう」  俺は池田という親友を持って幸せである。  なぜなら、昼に肉が食えるから。

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