短かったので二話投稿です

有栖さんはからかいたい

 放課後、本日は町を案内するつもりだった俺はそのことを有栖さん連絡して、校門で待ち合わせをすることにした。  現在時刻は四時十五分。  授業が終わるのが三時四十五分ぐらいであるから、何もなければ教室からここまで十分ほどで辿り着くことを考えると四時には集合できると思ったのだがどうもその見通しは誤っていたらしい。  俺が先に校門へ着いてから実に二十分近くの時間が過ぎようとしていた。  迎えに行った方が良いだろうかと思い、PINEで連絡して移動しようかと思ったときだった。 「ご、ごめんなさい。待たせたかしら?」  息を切らせて、少し汗をかきながら有栖さんがこちらへと駆け寄ってくる。 「いや、あんまり待ってないが。どうしたんだ」 「少しクラスメイトに捕まっちゃって。あなたとどういう関係なのか聞かれてたの」  出会って数日の相手にそういうことを聞くやつは往々にして距離感がおかしくデリカシーがない。苦笑しているところをみるによほどやりにくい絡み方をされたのだろう。 「それは、なんだ。お疲れ様」 「ええ、本当に疲れたわ」  額を押さえてうんざりと言ったような態度を作る彼女に、俺も少し苦笑した。 「だったら甘いものでも食べに行かないか。近くにたい焼き屋とクレープ屋があるんだが、どっちがいい?」 「そうね……」  有栖さんは指であごを触って悩むような素振りをすると、数秒の間を置いてから「たい焼きにしようかしら」と言った。 「わかった。そしたら行こうか」  その言葉に頷く有栖さんを確認してから歩き始めると、昨日とは逆に有栖さんはしっかりと俺の半歩後ろをついて来た。  しばらく歩いていると、有栖さんが「ねえ」と声をかけてきたのでそちらの方を横目で見ると意地の悪い顔をして彼女は言った。 「さっきの話なんだけど、わたしがなんて答えたか気にならない?」 「ああ、そういえば。なんて答えたんだ」  ほとんどノータイムでそう答えてやると、面食らったのか有栖さんは「へ?」と素っ頓狂な声を出して少し阿呆な面を晒した。  恐らくこちらが狼狽えて、口ごもるか返答に悩むのを期待したのだろうが別段その話題にそこまでの興味が俺にはなかったのだ。  だいたいなんて答えたかなんてわかるわけだし、正直、どうでもいい。  ただまあ、その話とは別になんとなく彼女の扱い方が分かってきた気がした。  俺に対して向けた思惑とは逆に狼狽える有栖さんを眺めながらそんなことを考えていると、どうにか体勢を立て直し有栖さんは少し顔を赤らめながら言った。 「と、友達って言ったわよ。趣味が合ってたまたま仲良くなった友達だって」 「まあ、その辺りが妥当だろうな」  俺のように「色々あった」だけで理解をしてくれる友達もまだいないだろうし、変に角が立たずさり気なくなんでもないというようなアピールができるので趣味の合う友達というのは便利な言葉だ。 「うう、わたしがからかおうと思ってたのに」 「素直にそういうこと言うの、どうかと思うぞ」  だって! と彼女は言うがその「だって」を聞く気なんてこちらにはさらさらない。  昨日彼女に見惚れた俺は疲れていたのだろうかとさえ思ってしまう。  まあ、疲れていたことに間違いはないが見惚れたのはそのせいではなかっただろう。  その後は、自分がいじられそうな雰囲気を敏感に感じ取った有栖さんが、話をずらそうとして「談一くんはいつからこの町に住んでいるの?」と言ったので、俺もそれに合わせて他愛のない穏やかな会話を続けながら、二人笑顔で並んで歩いた。

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