【短編版】秋田へようこそ、探偵エルフさん!【日常の謎】

読了目安時間:3分

<夏編3> 秋田涼夏奇譚 泰衡と風穴の謎を追え!【解決編】

【解決編】  結果、泰衡の亡霊話は、涼しい怪談にならなかった。  レナの卓越した推理により、サムライの世の中あるある~で治まったのだ。    涼しくないぞ、この怪談。  レナの満面の笑みからの毒舌で、ヤナギ父娘は悶々としながら夜を越えた。  あと5分。  その時間さえ、語り手にあったなら、レナのぎゃふんとした顔が拝めたかもしれない。  ここから、5分間の話でレナに、秋田の涼を味わってもらうぞー! ☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀  翌日も暑い夏だ。  しばらく、秋田の蒸し暑い夏が続くだろう。  私はレナに抱きまくらにされ、夜を明かしたので、隈が目の下にあった。  そのレナは、眠たげな目とショボンと下にさがった尖がり耳だ。  金髪ツインテールの位置が左右不均一だったので、私が無言でその髪型を直した。  父は晴れ晴れした顔であった。  珍しくジャージ姿の父。タオルを頭に巻いているので、草刈りにでも行くのだろうか。 「お父さん、草刈り行ぐんだが?」 「肝試し並みに涼しいところに行こう! さ、2人とも車に乗った!」  レナは朝のローテンションで無言。私も肝試しと言われ、戦々恐々だ。  1人テンションが高い父の運転で、国道を真っ直ぐ進む。  しばらくして、傍らの駐車場に止まった。  ここは長走(ながばしり)という場所だ。  私は気づいた。  ニヤっとして、私はレナの手を引いて、そのミュージアムに入った。  外の気温30度、ミュージアムの室温3度。  レナの目がパチッと覚めた。 「寒うッ!」 「ひゃぁぁぁッ、冷てぇッ、冷えてる(しゃっこい)ッ!」  標高は200m弱。高山でもない場所。だが、冷気が漂う。  ここが長走(ながばしり)風穴(ふうけつ)である。  父は苦笑して、何も言わずに見守る体勢である。  レナが怯えた目で、私を見ている。  私の手をレナの震える手が握っている。 「ジャパニーズ幽霊? リアルお化け屋敷?」 「物的証拠や情報がない場所だと、レナも怖くなるんだなぁ」 「冷静に言うな! 余計、寒くて、怖いだろ!」 「理由は分からないけど、岩のすき間から冷気が出る場所だ。風穴って言う」  手を離したと思ったので、私は説明をする。  だが私を無視して、レナはパンフレットと館内の展示に夢中であった。  このブリティッシュ・エルフぅッ! 自由人かッ!     レナは涼しさの理由に気づき、いつもの落ち着きを戻した。  まぁ、それは良いのだが、彼女が持つ知的好奇心をくすぐるらしい。  嬉しそうに、私たちに言う。 「珍しい植物が群生しているんだな! 是非是非、見よう、見よう!」 「高山植物かぁ」  私と父も、子供のように駆け出したレナの後を、足早に歩いて追う。 ☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀  白と黄色、紫。色とりどりの珍しい植物が生えていた。  私は思わず口を開く。感嘆だ。 「キレーイ」 「氷河期の遺産か。この冷気を使えば、植物だけでなく、大きい冷蔵庫にもなっただろう」  流石、勘の良いエルフである。  明治~大正時代、この岩から出る冷気に目をつけた郷土の人がいた。  風穴王、佐々木(ササキ)耕治(コウジ)。  由利本荘(ゆりほんじょう)市から、長走に移り住み、風穴を天然の冷蔵庫として利用した人である。  津軽(つがる)リンゴの保管庫などだ。  電気冷蔵庫のない時代は、彼のように冷蔵庫ビジネスが出来たのだ。  レナは頷く。探偵も避暑地はお気に入りになった様子だ。 「なるほど。今は電気冷蔵庫で十分だもんな。まぁ、ミュージアムの冷房くらいは、今でも賄えるだろう。しかし、佐々木氏が保護した、高山植物は今でも見られる。良い避暑地を残した、彼に感謝だな」 「うんうん」  私は光景に夢中だった。レナはまた本気の目になった。 「郷土の士が守った場所か。秋田の街は大好きだ。ソナタ君も大好き……うん?」 「可愛い(めんけぇ)なぁ」 「ムッ」 「「鹿(シカ)」」  野生の鹿が現れた。  私は魅了されていた。  レナは私の耳に声が届かないのを知り、少し怒った目になった。  鹿に嫉妬するレナ。  ややあって気付いた私は、レナの悔しそうな顔に、クスッと鼻で笑う。 「さっき何言っていたんだべ~♪」 「もう言わない! ふーん、だ!」  ツンデレなレナは、首をプイッと左横に向けた。  あ、幸せって、こう何気ない日常の先にあるんだ。    もう少しだけ、この夏が続かないかなぁ。  レナが喜ぶような、夏のミステリーがあるかなぁ。  私たちは秋田の涼夏を楽しんだ。 ☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀☀  ここまでを1500字で振り返れば、5分間くらいの話だね。

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