【短編版】秋田へようこそ、探偵エルフさん!【日常の謎】

読了目安時間:4分

<夏編2> 秋田の夜空を翔る星の謎を追え!【推理編】

 レナは身振り手振りで、詐欺師のように、大げさな説明をした。 「秋田っぽい夏の場所を3つ考えてみた。十和田(とわだ)湖、田沢(たざわ)湖、そして白神(しらかみ)山地だ。だーが、よーく考えてみてくれ。まずは私たちのいる場所は、秋田の県北だ」 「移動距離を考えっと、青森さ行ぐより、田沢湖は遠いべなぁ」 「そう! ついでに、その青森県境の白神山地と十和田湖。秋田から入るより、青森から入った方が楽しめそうなんだよな!」 「結果、夏のレジャーさ、特色ねえど?」  気づけば、警戒心から、不機嫌眉の私は両腕を組んでいた。  何だか、探偵の推理で緊張する加害者みたいな感じだ。  探偵は推理の核心をついた。それも残忍にも見える笑顔で、だ。 「で、秋田の夏は何があるんだ?」 「えーと、うーん……。けどさ、ホームズさんが秋田の魅力を卑下するなって()ったべ?」 「お、おう……」  私のきつい反撃の一言。  得意そうに言っていたレナの目が泳いだ。そして耳がションボリ下がってくる。  すると、頭の知識を動員して、レナが口を開いた。手八丁口八丁は父譲りらしい。 「ペルセウス座流星群だ。見頃にはちょっと早いが、条件がそろえば、今でも見られるだろう」 「ふーん、星なぁ……」 「何か不満があるのかい、ソナタ君?」  レナは大発見を嬉しそうにしていた。  だが、私はその条件がそろう場所を考えてから、つまらなそうにうっかり口を滑らせたのだ。  思わずレナが不機嫌そうな目で、私の顔を見てくる。  ガリッ。  レナは立ち上がると、机の上に置いていたキシリトールガムボトルから、ガムを2つほど掴むと口に放り込んだ。  探偵エルフさん、苛立っている様子だ。  膝立ちから立ち上がると、私は思っていたことを口にする。 「星を見る条件が厳しぐねぇがな? 夜とはいえ、最近の秋田の街も明りぃぞ?」 「そうだな。……いわゆる、光害(こうがい)がない場所でないと上手く観測できないだろうな。秋田もこの現代社会で光が夜の街にある。10~15分間は光を見たら、上手く星が見えないもんだからな……ふむ、良い場所はないものだろうか」  お、このエルフさん、秋田の星を見に行く気だ。  その口はモグモグと小動物のように動いている。  だが、私も考えている。  そこでロマンチックなムードになれば、普段言えないこともレナも私も言えるかもしれない。  私は古い記憶を呼び起こした。星を見た場所は湖畔だった。 「十和田湖?」 「ふむふむ、スマートフォンで道を検索してみよう」 ☆★☆★☆彡☆★☆★☆彡☆★☆★☆彡  数分後、私とレナの両目は沈んだ色になっていた。  沈黙がちょっと続く。  大きい道を途中まで行ける。  ただし、途中の道からグネグネと細い道になる。もしくは自動車で何とか行けるだろう。  十和田湖の発荷峠(はっかとうげ)展望台はそうそう地元民がポンポン行ける場所でないのだ。  そういえば、レナを最近、地元の警察署に案内した。  彼女は原動機付自転車の免許の住所変更をしたのだ。 「原付で十和田湖か。流石に自信ないな……。ソナタ君のお父さん、ミツハルさんは、どうかな?」 「うーん、祭りが近けぐで忙しいみてぇだ」 「そうかぁ……」  弱々しくなったレナの声。エルフの耳がさらに垂れ下がった。事件が迷宮入りしそうだ。 ☆★☆★☆彡☆★☆★☆彡☆★☆★☆彡  そのせいか分からないが、レナは暑さで体調を崩し、寝込んだ。  父特性のネバネバ食べもので元気を戻したようだ。ただお風呂から上がったばかり、文字Tシャツと緑色の半ズボンの姿のレナは、うーん、うーんと唸っていた。  レナの目の色が青々として復活している。これは、何か打開案が出たのだろうか。  パチン。  レナは指を弾いた。  パズルのピースがはまるように、レナは閃いたのだ。 「よし、今晩は晴れ……ならば決行だ。比内町(ひないまち)大葛(おおくぞ)のベニヤマ自然パークに行こう!」 「原付でか?」 「あぁ、1時間弱もあれば行けるだろう!」 「はぁ、星が見えるどこはさ……」 「郊外で道も悪いってか。しかし、いずれ十和田湖に行くんだ。その前哨戦さ」  こうなると、レナは引かない。この事件を証明終了(QED)するしかない。  私たちは夏休みの宿題を片付けながら、夕日が沈みきった暗い夜を待った。  晴れている。だが、田舎でも街の光はある。  残念ながら、我が家からでは星が出ている程度しか分からない。 「行こうか、ソナタ君」  ヘルメットを渡された私は、レナの背中に引っ付いた。  流石、秋田だ。祭りばやしの練習音が消えると、ひっそりと街は静かになった。  原付はゆっくりと夜の街を走り出す。

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