もしもこの世界のすべての猫が転生組だったなら

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Your Name

<幼稚園>  仲間猫たちに見送られ、俺は桐子ちゃんの通う幼稚園にやってきた。  前世の姿でやろうものなら一撃職質コースだが、幸い今の俺はにゃんこさんである。  隣接する公園のトイレの上から幼稚園の運動場を見ると、桐子ちゃんは友達と追いかけっこをしていた。 『ちびっ子は可愛いなぁ』 『ヨネスケが言うと結構ヤバい感じがするよ』 『メイスケな』  俺の隣にはお馴染みナビゲート女神様。  偉いお方のはずなのに、俺のジト目を気にすることなくトイレの屋根上で足をぶらぶらしている姿は、色々とダメなベクトルで貫禄たっぷりだ。 『今日も至って平和。猫の俺が出来るコトは日向(ひなた)ぼっこと昼寝くらいだよ』 『……自分が何をすべきか、ちゃんと覚えてる?』  何故か急に真剣な顔で俺を抱える女神様。 『大丈夫だよ』  桐子ちゃんを守るコト。  他の転生者たちとは違い、何故か俺にだけ課せられた使命だ。 『………』  急にシリアスになられると調子狂っちゃうなぁ。  この方はちゃらんぽらんな方が似合ってる気がするし。 『お、桐子ママの迎えが来たな。そろそろ降園時間か』 『………』  桐子ママが園長先生と少し立ち話をしてから、母子仲良く手を繋いで歩き始めた。 『さて、俺たちは先に家に……』 『二人について行きなさい!』 『ウニャニャニャニャッ!!?』  帰ろうとした俺の尻尾を思いきり掴まれたっ!!? 『わ、わかったよ……つーか、それスゴく痛いから離してぇ……』  涙目で訴えかける俺に、女神様は慌てて手を離す。 『はいはい、分かったなら見失わないようにダッシュダーッシュダッシュ!!』  まだ尻尾の辺りがヒリヒリするのに、女神様は俺の尻をペシペシ叩いてくる。 『うぅ、人使い……じゃなくて猫使いの荒い神様だなぁもう……』  俺は不満をこぼしながら、走って母子を追いかけた。 『………頑張ってね』 ・ ・  幼稚園から家まで俺の脚で2分。  桐子ちゃんの足で15分。  小さな女の子が歩くには少し遠いのだけど、ママと一緒に毎日元気に歩いて通っている。 「わんわんおーっ」  桐子ちゃんが散歩中の犬を指差して笑うと、飼い主さんも嬉しそうに笑った。  慣れた道だけあって商店街の皆さんとも顔馴染みだ。 「おっ、きりちゃん、今日の晩ご飯は何かな?」 「カレーライスっ!!!」 「あちゃー、ウチじゃ役に立てねえなぁ~」  魚屋のおっちゃんが残念そうに自分の額をペチッと叩いて豪快に笑った。  それにしても、この昭和臭さはスゴイなぁ。  21世紀にこんな雰囲気の街が残っているのは奇跡ではなかろうか。 「おかあさんっ、やくそくっ!」  いきなり桐子ちゃんが一件の店を指差した……おもちゃ屋か。  俺にとってはゲームソフトの品揃えが悪い古くさい店というイメージだったのだけど、桐子ちゃんにとっては目を輝かせるくらい魅力的な何かがあるのだろう。 「はいはい、約束ね」  仲良し母子がおもちゃ屋に入って行ったものの、残念ながらにゃんこの俺はお店に入れないでござる。  入ったとしても店員につまみ出されるだろうし、もしも桐子ちゃんたちに見つかろうものなら一大事だ。 『いつも通りだわー。女神様があんなに慌てて俺の尻を叩いた理由がサッパリ不明だわー』  平和な日常に愚痴を吐きつつ、物陰でのんびりと商店街を眺める。  ……あれ?  ふと俺の隠れている建物に隣接しているトレカショップに目を向けると、入り口前の電信柱にもたれかかりながらスマホをいじる男がひとり。  ボサボサ頭にチェック柄シャツ&ジーンズというスタンダードな服装に、迷彩柄のリュックサックをプラスした完全装備に身を固めている。 『………』  声にならない。  だってそこに居たのは…… 「ちっ、またRかよ。クソ運営潰れろ。ふざけんなボケが。……もうバイト代ねーし、食費削るしかねえな」  ガチャ10連でカスしか引けず、呪詛を吐き捨てながらロクでもないコトを口走ってる大バカ野郎の名前は…… 『マジか……』  塩谷米輔。  ……つまり、俺がそこに居た。

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