ただ君だけを、守りたいと願う

読了目安時間:7分

7章 到着早々なんでこうなるのよ!!

「ここは、マモンって町の近くなのね。ふむふむ。よし!1回街に行って何か話が聞けないか確かめようかな」 うん! 大きくうなずいた後 ロクシーは地図から現在地を確認すると、古紙でできた地図をクルクルと丸め 背負っている大きなリュックのポケットに地図を抑える。 そのまま歩き出そうと前に向き直ると… 「あ、あれー…?」 ぐるーり、と十数名の魔族に囲まれていた。 「あ、あのー…私は皆さんの敵ではないですよー…あはは」 正面にいる一人の魔族に苦し紛れに笑顔を向けてみる。 「…」 魔族からの返事はない。相当に軽快されているようだ。 ロクシーの周囲を囲むのは半魚族(サハギン)。 光沢のある肌は鱗に覆われ、見るからに堅そうだ。 頭部は魚とも人とも言えない。魚の顔と人の顔の半々といったところ。 焼いたら食べれるのかな。冒険の食料になるのかしら。 あ、でもそんなこと考えてたら怒られるかな…。 と、あさっての方向のことを考えていると、正面の魔族か口を開いた。 「人族がこの地に何の用だ」 思ったより高い声に、ロクシーはちょっとかわいいと思った。 「えっと、私はトレジャーハンターで、魔大陸にある遺跡を探しに来たんだけどー…」 「トレジャーハンター?」 低級魔族にはそれが何を意味するか分からない。 「世界中の遺跡にある遺物を集める冒険家、なんだけど…」 「遺物?」 どうやら、あまり言葉が分からないようで…意思疎通を図ろうとしても上手くいかない。 これは困ったなー…どうしよう、とロクシーが思っていると、周りの魔族が口々に言葉を発し始める。 「不審な人族だ」 「我々の地を荒らしに来たに違いない」 「信じられない」 「そもそも人族は我々の敵だ」 「殺した方がいい」 「そうだ」 物騒な会話をしているなー…とロクシーは思う。 勿論歓迎されないことは想定済みだったが、まさか到着早々にこんな場面に出くわすとは…。 うーん。普段は結構運がいいはずなんだけどなぁ、とロクシーは思う。 「人族よ、もう1度だけ聞く。この地に何の用だ」 正面の半魚族(サハギン)が再度口を開く。 「えっと…」 ロクシーはこの魔族たちにわかってもらうため、簡単な言葉を選んでみる。 「魔大陸のお宝を探して冒険をしに…」 「お宝!?」 「我々から何かを奪うつもりか!」 「許せん!」 「争いだけではいざ知らず盗みまでもか!」 逆効果だった。 「ちょ、ちょっと!そういうことじゃなくて!」 「ここで殺せ」 「そうだ殺そう」 「そうしよう」 取り囲む半魚族(サハギン)たちが口々にロクシーに対して手にした得物 三叉を向ける。 「あぁ…なんでこうなっちゃうかなぁ…」 まぁそうなるよねー…。 ロクシーも諦めて相棒の巨大ツルハシを抱える。 冒険の途中で幾度も改造を繰り返してきた頼れる相棒。 ロクシーが得物を手にしたことを察知し、反撃される前にたたくため数名の半魚族(サハギン)が飛び掛かってくる。 「させるかー!」 「死ねー!」 ガチャッ ロクシーは相棒のツルハシの絵に埋めてある一つの宝石を強く押し込む。 すると、ツルハシの先端がガバと開き、大きな刃が顔を出し、双頭の鎌のような形状に変化する。 「うおりゃあああああ!」 ドーン!! ツルハシを振り上げ、そのまま地面にたたきつけるとロクシーを中心に地面が爆ぜた。 爆風に砂が舞い上げられてそのまま飛び掛かろうとしていた半魚族(サハギン)達に向かっていく。 「ぎゃぁ!」 「痛ってー!目がぁ!」 「ぺっぺー!砂が口に!ちくしょー!」 「目くらましか!?」 ロクシーは敵の元へ向かわず、足元とその周囲に魔法陣を描く。 「構造を司る神よ。私はロクシー・リュウ―ル。今ここで貴方との契りを交わし、大地に在る御身の血肉を、私の身体に分け与えてください」 歌うように詠唱をしながら、書き上げる。ほんの数秒。 出来上がったのは、身体強化の魔法陣。 「妙なことをしているぞ!」 「とめろ!」 「かかれぇえ!」 周囲を取り囲んでいた半魚族(サハギン)が手に持った三叉で刺し貫こうと飛び込んでくる。 「しからば、私はこの試練を必ずや乗り越えましょう。炎の形の宝石の様に燃え上れ(My body burns a gemlike flame)」 足元に描いた魔法陣がボウッと輝き、 地中にある魔素が一気にロクシーの身体へ流れ込む。 「どっかあああああん!!」 身長と同じほどの長さの巨大ツルハシを、木の枝のような勢いで思い切りひと振りする。 「ぎゃぁ!」 「ぐへぇ!」 「なぁあ!」 飛び掛かってこようとした数名の半魚族(サハギン)が吹き飛ばされる。 「変な力を使いおった!」 「人族が魔素を吸っただぞ!?」 「なんだありゃ!?」 「いいから、とにかくいくぞー!」 「うおお!」 と一撃目を回避した半魚族(サハギン)達もまた飛び掛かってくる。 一部の者は三叉を投げて攻撃してくる。 「あぶなぁ!ちょっと、大人しくしなさい!!」 三叉を避けて、飛び掛かってくる相手にこちらから急接近し、 巨大なツルハシを振りぬく。 相手の三叉と衝突するが、武器の重量が違う。 それをものともせず三叉ごと数名の半魚族(サハギン)をぶっ飛ばす。 「何があった!」 「どうした!」 ザッパーン、ザッパーン と今度は海から同じ半魚族(サハギン)が援軍にやってくる。 まずい…派手にやりすぎたかも…。 と今更反省してももう遅い。 そこから暫くは、至る所から半魚族(サハギン)が湧いて出てきて飛び掛かってきては、ぶっ飛ばして。 飛び掛かってきたやつをぶっ飛ばして、を繰り返す。 「うおりゃあああああああ!どっっっかあああん!…ああもう!しつこい!!」 「ぎゃぁあ!」 「なぁああ!」 「てええりゃああああああ!どっっっかあああん!」 「痛てぇえ!」 「ちくしょー!」 「…はあ、はあ!あんたたちねえ!私は探検に来ただけなのに!なあんで食ってかかってくるのよ!邪魔しないで!」 「ふむ」 さすがに息が上がってきたころ、聞きなれない声がロクシーの耳に届く。 声の主の方へ振り返ると、人の姿をした長髪の男がいた。 派手なコートを羽織り今まで相手にしてきた魔族とは比べ物にならない、ただならぬ気配を放っている。 はぁはぁ。 「ん?半魚族(サハギン)の親玉か何かかしら?それにしては、なんか、雰囲気がえらく違うわね。」 半魚族(サハギン)達はその男が現れたことに気づくと、 気を失った者を除く全員がその男の後ろに下がっている。 「あなた…?あなたも私の冒険の邪魔をしようっていうの?」 ガシャ もうひと踏ん張り、とばかりに相棒のツルハシを構える。 「手加減をしたのか?」 「へ?」 思いもよらない質問だった。 確かに、手加減はしたが…それを開口一番に問われると思っていなかった。 「死なぬように手加減したか、と聞いておる。」 一瞬だけ固まったロクシーに対し、 その男はもう一度同じ問いを繰り返す。 「へぇ」 その男は、自分の強さに相当の自信がある様子だった。 しかし半魚族(サハギン)が束になってかかってきたとして、手加減していたって勝てる。 その親玉であれば100歩譲って勝てなかったとしても逃げることくらいはできる。 ロクシーも戦いに熱くなり、少し冷静さを欠いていた。 目の前にあるその男が誰ともわからずに。 「へぇ。してないって言ったらあなたは私をどうするの?」 「ふむ。こうする。」 会話などなかった。 ズンッ 身体の正面をめがけて、目に見えない何かが飛来する。 !! 本能的にそれを相棒のツルハシで受け止めるが、 力に押されて体ごと大きく後ろに弾き飛ばされる。 「…危ないじゃない!急に!」 ロクシーの言葉を聞くそぶりもなく、 男はおもむろに近寄ってきた後、数歩分離れた足元にしゃがみ込む。 魔法陣のある場所だ。 「ふむ。この魔法陣がその力の元か」 魔法陣は1度発動すれば、滅多なことで効果は切れない。 その役目を果たすまで、少しの間はそこにあり続けるが…。 「ちょっと近寄らないで!!」 冷静さを欠いて、ロクシーはツルハシを手に飛び掛かる。 「邪魔だ」 一方、男は冷静だった。 周囲の空間が意思を持ったように揺らぎ、ロクシーの一撃を軽々とはじく。 「きゃあ!ちょ、ちょっと!あんたねぇ!!」 ザザザッ なんとか砂地に足をつけて堪える。 相変わらずロクシーには目もくれず足元の魔法陣をまじまじと観察している。 ムキー!!何なのよ、ムカツク!! 「ふむ。良くできた古代魔法だ。人の娘よ、どこでこれを知ったのだ」 そして、また、問い。 「はぁ!?なんであんたみたいな良くわからないやつに教えないといけないのよ!あんたもトレジャーハンターなの?」 すっと男がこちらを見た。 敵意というより、何やら、変わったものを見るような目をしていた…。 そのまま男は口を開くと相変わらず想像の上をいくことを言う。 「ふむ。私を知らぬか。面白い。私はヴォルカスという。魔王だ」 う…嘘だ…。 こんな魔大陸についてすぐ。 低級魔族をボコボコにしているところに、 魔王が現れるはずがない…。

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