魔法術科のイノベーション

読了目安時間:2分

戦いはテーブルの上で

 大広間。正面には帝国の旗が大きく飾られる。鷹と鷲が剣を間に向かい合いになり、大きく羽ばたく。現王朝ザーズヴォルカ家の紋章”二頭鷹鷲”の紋章である。  大きなテーブルに高級軍人の軍服を着た錚々たる面子が居並ぶ。特にその中でも上座に座る偉丈夫―――オストリーバ帝国統合幕僚会議総参謀長ドラホスラフ=バルトシーク、敵からは”鬼のドラホス”とも呼ばれるその人である。定例の幕僚会議。騎兵、砲兵、銃兵それぞれ三軍を率いる有力は軍事貴族の面々が集まる会議である。その中には当然銃兵の頭目であるバルティーク侯爵家女当主ラダ=バルティークの姿が見える。そして数ノーハ、テーブル越しに離れたところには彼女の仇敵、帝国騎兵総監総参与少将ローベルト=スヴェラークの姿も―――ほっそりとした体型と整ったいかにも貴族青年らしい風貌を示していた。しかし、ラダにとっては憎悪の対象でしかない。チラリのその側を見やると、半分寝ているような老人―――帝国騎兵総監であるベドジフ=ビェハル大将閣下。誰の目にもお飾りで実験は参与のローベルトが握っているのは周知の事実であった。ローベルトは両手をテーブルの上で組み、楽しそうに会議を見物している。 「本日の最重要議題に入りたいと思います―――総参謀長よりご提案があります」  うむ、とバルトシーク総参謀長が頷く。 「指揮系統の改編についてだ。中央作戦部の研究がかねてから強く推していたところであるのだが―――」  中央作戦部、その名前にラダは眉をしかめる。騎兵と同じくスヴェラーク家の息が強くかかっている部署である。 「魔法術騎兵科が現状、戦闘のイニシアティヴを握っていることはご存知のとおりだ。確立しつつある三兵戦術において騎兵の優位性と重要性は日を追ってましてきているものと考えられる。ついては―――」  静かな沈黙。そしてバルトシーク総参謀長は口を開く。 「現在、1個師団中の2個騎兵連隊をその中核し、騎兵科の指揮下に銃歩兵科と砲兵科を組み込む。一本化された指揮系統は帝国のさらなる勝利を―――」 「お待ち下さい!」  バルトシーク総参謀長の提案を遮る声。誰かは明らかである。この会議で女性は一人しかいないのだから。 「バルティーク侯か」  うんざりした風でバルトシーク総参謀長は答える。 「私も限度があるぞ―――侯の気持ちもわからんではないが―――」 「私事で反対しているわけではありません!!」  ほう、と向かいのローベルトが合いの手を打つ。キッとそんなローベルトをラダは一瞥して続ける。 「これは―――帝国の全体の軍事的な方針にかかわる大問題です」 「バルティーク侯、そこまで言うのであれば―――覚悟は良いか?」  今までよりも更に重々しいバルトシーク総参謀長の一言。会議が凍るのを参加者は感じる。一方、問われたラダは―――少しの沈黙の後に目を閉じてうなずき、ゆっくりと説明を始める。自分が反対する理由を、まるでゆっくりと咀嚼するように―――

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