奈落の王と嘆きの女王

読了目安時間:15分

エピソード:72 / 149

第072話 撃墜

2023年2月24日 15時46分  ドイツ連邦共和国(西ドイツ) ヘッセン州カッセル   ベッテンハウゼン陸軍基地東 東西ドイツ国境近隣にて  東ドイツの大型指揮官機らしき機体が変形し、飛行を始める。  その姿を目の当たりにしたモルガン各機の近距離無線には、パイロット達の驚愕の声がいくつも飛び交っていた。 『変形? 変形したのか? な、何なんだ、ありゃあ……』 『飛んでる! ジャンプじゃない、あれ飛んでるぞ!』 『三脚で飛行可能なEPTだと!?』 『もはやタンク(戦車)じゃねぇッスようっ!!』  驚きを隠せないのは現場の指揮権を持つニジーナ・マックアルフィン中尉も同様だった。 「な、何だ、何がどうなって……」  ジーンは敵機のシルエットを見ながら、子どもの頃に観ていたアニメ、UFO魔神グレンガイザーがいま深夜帯に何度目かの再放送をされている事を思い出していた。それは元々ニホンのもので、フランスで欧州向けに再編集されたあとイングランドやアイルランドに輸入、英語に吹き替えて放送されていた事を知ったのはつい最近の事だった。  彼女の脳内では妙な関連付けが(おこな)われ、日本人であるクーガーの戦闘状況が気になった。先ほどの部下達の様な驚きに満ちた悲鳴もクーガーだけ上げていない。慌ててメインの球状モニターを操作してその中央にクーガー機の姿を捉えると、彼は脱落したと思われる自機のアサルトライフルを敵の攻撃を掻い潜って拾い上げたところだった。  そして彼は地上から、飛行中の敵大型指揮官機に対して発砲を始めた。その姿を見てハッと我に返ったジーンが部下へ命令を下す。 「全機うろたえるな! 目標が飛んでるなら防空対地(ADATS)ミサイルのいい餌食だ。ここで使う! サハリントン軍曹!!」 『サリー了解、これよりミサイル攻撃を開始します』 「他の者はライフルで援護、クーガーはそのまま飛行中の敵機を釘付けにしろ」 『『『『アイアイ、マム!』』』』 『了解』  FT-03Sペブルバックのコクピット内部ではダニエル・サハリントン軍曹が待ってましたとばかりに舌なめずりをしていた。 「空中ならどこでも射線が通る、丸見えだ! 俺は外さねぇぞ!」  サリーは狙撃用のサブモニターを覗きながらミサイルロック作業を続ける。  しかし彼の指は操縦桿のミサイル発射ボタンから外され、空中で静止した。 「……な、何だ!? FOX2(赤外線追尾)でロックオン出来なくなった! 中尉、敵機がまたサーモに反応していません!」 『敵機は既にステルスマントを脱いだ! 泣き言を言っているヒマがあったらレーダー誘導でブッ放せ!』 「アイ、マム!」  ジーンからの叱責に気を取り直したサリーはミサイルの誘導方式を変更する。  03Sペブルバックが空中へ向けてレーダー波を照射し、射撃管制システム(FCS)はモニターに表示されている敵機、ヒルデブランドへロックオンマーカーを重ねた。 「来ました! FOX3でロックオン確認!」 『やれェッ! サリー!!』  ペブルバックのコクピット内に、耳が痛くなるほどの音量でジーンの叫びが響いた。        ◇         ◇         ◇  その頃ヒルデブランドのコクピットでは、ブルクハルトがレーダー探査画面と光学ズーム画面の2つを見比べていた。自機へ向けられた火器管制レーダーの発信元を正確に割り出すためだ。  やがて解析を終えた機体AIが敵レーダー波の発生地点をパイロットに伝える。ブルクハルトがその地点を走査(スキャン)すると、鬱蒼(うっそう)とした下生えの陰に伏せ隠れているEPT(※FT-03Sペブルバック)を発見した。光学ズームで確認すると、背部パックに懸架されたミサイルの2発が角度を変えて地面に対してほぼ垂直になっていた。まさにミサイル発射直前の姿である。  そしてその機体が持つ大型の対EPTライフルらしきもの物に目を留めたブルクハルトは鼻筋に皺を寄せて睨みつけた。 「いたぞ! 奥のあれが狙撃機だ! よくぞ今まで散々引っ掻き回してくれたものだ!」  ブルクハルトが声を上げると、上部パイロットシートで忙しくコントロールパネルを操作していたエッサーが返す。 「中尉、画像認識完了! ツェルベルス(ケルベロス)、発射準備完了です!」 「放てぇぃッ!」  ブルクハルトの命令の直後、飛行中のヒルデブランドの下部内蔵ウェポンベイから三角柱型の大型コンテナの一つが投下される。その三面の投射機(三つ首)を持つ大型爆装コンテナ――ツェルベルスは後部ロケットモーターに点火すると、轟音を上げながら山なりの軌道を描いてサハリントン軍曹のペブルバックへ向かって行った。  ツェルベルスはペブルバックにほど近い上空に到達すると横回転を始める。  自機に接近する物体が大型誘導爆弾だと判断したサリーは機体を立ち上がらせて迎撃を試みた。そのペブルバックに対し、ツェルベルスは横回転を続けながら下方に向けた面より続けざまに小型ロケット弾を浴びせ掛ける。そのさなか、ツェルベルスはあらぬ方向からやってきた数発のライフル弾の直撃を受けて飛行バランスを崩し、予定した軌道から大きく逸脱した末に墜落、地面へ激突して大爆発を起こした。  しかしそれまでに投射された小型ロケット弾はペブルバック1機で迎撃するには大量過ぎた。  ペブルバックの頭部CIWSが連続で火を噴き、弾丸は蛇口を開いたホースから出る水流のごとく連なって発射される。その弾丸は降り注ぐロケット弾の幾つかを破壊したが、それら全てを迎撃するには砲の数が圧倒的に足りなかった。  前方の地面へ到達し始めた無数のロケット弾の炸裂がもの凄い速度でペブルバックに近付いてくる。その状況にコクピットのサリーはひるんでいた。  前回のフィンランド南戦線ではペブルバックだけが大破していた。この戦闘で味方機が損害を受けるとしても今回は自分の番では無いだろう、そう考えていたサリーの心には大きな隙があった。大きく後方に配置され、直前まで存在を伏せられていたサリーは、敵機からの攻撃の対象になる事すら想定していなかったのである。  目標の回避を封じるために広範囲に渡って投射されたロケット弾のうち、自機に接触する軌道を持つ対象だけ撃墜していればCIWSも()ったかも知れない。しかしいざそのロケット弾が襲い掛かってくる段になっては、無駄撃ちを続けられたペブルバックのCIWSは既に弾切れになっていた。 「うわッ! うわぁっ!!」  CIWSの残弾を空にして慌てふためくサリー。眼の前には小型ロケットが作る無数の爆発が迫る。両手で保持している155mm対戦車砲を空中へ連射するがまるで意味は無い。その直後、機体に轟音を伴う大きな衝撃が走り、コクピットは非常灯に照らされ暗い赤に染まった。脚部の大破によって支えとバランスを失った機体がぐらりと傾く。足の構造が折れてひしゃげてゆく嫌な金属音が響く中で、サリーは底無しの暗闇へ放り込まれる様な感覚を覚えていた。 「あーッ! うわッ! 嫌だ、待っ……!」  やがて遅い来る衝撃への恐怖にサリーの身体は硬直し、上げていた悲鳴さえ途中で止まった。脚部を失ったペブルバックは腰部から地面に崩れ落ちてゆく。機体AIは戦闘継続不能を判断し、内壁のパネルのあちこち、四方八方からいくつものエアバッグをパイロットシートに向けて展開させた。  アブソーバーの役目を果たす脚部を失い、10メートル近くの高さからシートに固定されたまま固い地面へ投げ落とされたサリーは、自身に加わったそのあまりの恐怖と衝撃に大小便を漏らしながら完全に気を失った。  ペブルバックコクピット内壁のスピーカーからはサリーへ安否を尋ねる仲間の声が響いていたが、赤色灯の消灯と同時にその音声も途切れる。割れた球状モニターから配線のショートに伴う閃光と破裂音が響いていたが、機体の緊急シャットダウンが実行されるとそれも無くなった。エアバッグから空気が抜ける音が(おさ)まると、コクピットの中は完全な暗闇と無音で満たされた。        ◇         ◇         ◇ 「ウソだろ……? なんで回避じゃなくて迎撃に出た?」  クーガーはFT-03のコクピットの中で、小ウインドウに拡大表示された大破状態のペブルバックを目にしてボソリと呟いた。敵の指揮官機が放った飛翔体、小型ロケット弾の母機はそのまま放置すれば横幅も奥行きも充分の爆撃をペブルバックに加えていたはずだったが、それは攻撃途中に狙撃し撃墜してやった。サリーは後方へ背部ブースターを一吹かしすれば充分に回避出来たはずなのだ。  なぜ回避ではなく迎撃したかという疑問も(もっと)もであるが、サリーはここ数ヶ月の間、集中的にEPTによる狙撃訓練を続けていた。クーガーはふと思い出した訓練中の彼の姿に、1年前の――自分の高校生時代の記憶を重ねる。 (そういやサッカー部の高杉が体育の授業中、足元に転がってきたバスケットボールを無意識に蹴飛ばして、股関節にある利き足側の長内転筋を断絶していたな……)  ふいの出来事や非常時には最適解よりも慣れ親しんだ手段で対処しようとするのは不思議な事ではないと考えたクーガーは、同時に自分が益体(やくたい)の無い事を考え始めたと気付き、頭を左右に振りながらその気持ちを切り替えた。モニターに映る大破したペブルバックのコクピットから煙が上がっていない事を確認すると、サリーはきっと無事だと信じながら目前の敵機への発砲を再開した。        ◇         ◇         ◇  モルガン各機のコクピットに共通チャンネルからギャリーの悲鳴が響く。 『サリー! サハリントン軍曹!!  中尉、ペブルバック被弾! ペブルバック大破!』  マックアルフィン機のモニターには大破して地面に転がり黒煙を吹き上げるペブルバックが映し出されていた。 『クッソゥ! よくもサリーを!』  モンテヴェルデは大破したサリーのペブルバックを見ながら気を吐いていた。 『狼狽(うろた)えるな! 敵は丸々残ってるんだぞ!』  そのジーンの声はモンテヴェルデの耳には届いていなかった。 「クソゥ! こうなったらアイツを叩き落としてパイルバンカーをブッ刺してやるッ!」  モンテヴェルデは吠えた直後、FT-03Nクー・シーを塹壕から飛び出させた。いままさに空中の敵機へ向けてブースターを吹かそうとした瞬間、その足元の地面を横殴りの弾着が襲う。 『うおおッ!?』  出鼻を挫かれて冷や汗をかいたモンテヴェルデが、少し冷静になりながら機体を塹壕へ引っ込める。  モンテヴェルデを襲った着弾跡と弾道から発射角を割り出したジーンはその発射元をモニターで追った。そこにはこちらに背を向けながら脇の下から後方へ銃口を覗かせているFT-03の姿があった。その機体は敵前線へと迫る位置からして特定するまでもなくクーガーの機体だった。モニターに映るクーガー機は何事もなかったかの様に地上の敵機への応戦を始める。  ジーンが後方を映す小ウインドウに目をやると、塹壕から頭部センサーと背中の大型榴弾砲を覗かせるFT-03Nクー・シーの姿があった。彼女は再び空中の敵機に目を向ける。レーダー(電波探査)システムが敵機を捉え続けている事を確認したジーンは、無線でモンテヴェルデを慎重に(さと)した。 「モンテヴェルデ、砲弾を空中炸裂、近接信管に変更しろ。飛んでるあの敵機も吸気口から榴弾の破片が入れば落ちてくれるかもしれない。いいか、いまあれを落とすのも、落としてからパイルバンカーをブチ込むのもお前の機体にしか出来ない事だ。お前はお前の役割を果たせ!」 『りょ、了解! マム』  ジーンはその応答を確認した後、音声コマンドでモンテヴェルデ機の足元への弾着直後から5秒間の映像記録を削除し、クーガーがやった事を不問にした。気付いた事に気付かなかったフリをした。多少強引だったものの、激昂(げきこう)したモンテヴェルデを止めるためにやった事だと納得したのだ。自分では(とが)める気にならなかったし、事後に少佐に(とが)めさせる気にもならなかった。        ◇         ◇         ◇  この戦場は乱戦と化していた。既に両軍のフォーメーションは大きく崩れ、各機が手当たり次第に敵を撃ち始めている。それでも少しは統率が取れていたのは東ドイツ部隊側であった。飛行形態となって空からロケット弾を放つヒルデブランドは古今東西の戦場において実に20余年ぶりの航空優勢を示しており、モルガン部隊はその戦況にまったく対処出来ずにいたのだ。地上に残された東ドイツ部隊はヒルデブランドの援護をしながら国境側へ後退を続け、その隊列を復元しつつあった。  モルガン部隊にはミサイルが枯渇していた。元々は演習向けとして模擬ミサイルを装備していたのである。そのため、この場で実弾のミサイルを残している機体は予備で持ってきたジーンのFT-03グラシュティンのみだった。そのミサイルも全8発中2発を撃って残り6発。敵部隊発見時にベッテンハウゼン陸軍基地にあり、同じくミサイルを全弾装備して戦闘に参加したペブルバックは1発のミサイルを撃つ事も無く大破させられている。  ジーンが敵機撃墜を諦めたのはミサイルを使い果たした直後である。ヒルデブランドに対して2発ずつ2回、地上の量産機らしき敵機には1発ずつ2機の目標を攻撃した。しかしそのどれもが撃破には至らなかった。  モンテヴェルデ機、03Nクー・シーの榴弾攻撃も目に見えた効果は無かった。ヒルデブランドが空中で炸裂した榴弾の破片をまともにくぐったのは1度や2度ではないが、墜落するどころか速度を落とす兆候すら見せない。  アサルトライフルが主兵装である他の機体も状況は似たようなもので、いくら直撃させても敵機は爆発する様子も煙を吹いてもいなかった。既に予備弾倉は限りなく少ない。クーパーの03Aブルベガーに至ってはライフル弾を全て使い果たし、背部パックに懸架している対戦車EPT手榴弾を手でもって投げ付けている始末だった。  ジーンはこの状況に絶望、とまでは言わないが、何かとてつもない虚しさのようなものを感じ始めていた。        ◇         ◇         ◇  ベッテンハウゼンから西へ32km、ヴァルデック州ザクセンハウゼン近くの農場では一人の老齢の農夫、ヨハン・バルシュミーデ(62)が早々に帰り支度を始めていた。天気は良かったし太陽はまだ傾いてもいなかったが、東の空から鳴り響く雷のような音が2時間近くも続いていては、いずれここにも雨が降ってくるに違いないと考えたからだ。春になれば(おこな)う種撒きの準備のためにまだ雪がまばらに残るこの農場を訪れたのだが、やる事といえば小屋に置いてある農具の手入れと整理だけだった。東の空を見つめ「帰り道にこの時期の冷たい雨に濡れるよりは」と残りの作業を明日以降に回し、早めに作業を切り上げたのである。  ヨハンは作業小屋に鍵を掛けると、一緒に連れてきた愛犬の首紐を手首に引っ掛け、(かたわ)らに置いていた妻ハンナ(60)の手作りランチが入っていた籠を手に取った。遥か後ろ――東の青空から聞こえる遠雷の音に時おり振り向きながら自宅への道を歩き始める。道すがら思い出したようにランチ籠を開けると、その中から残してあったサンドイッチを取り出した。歩きながらそれに一口二口と(かじ)りつく。  ふと足元を見れば一緒に歩いているこげ茶色の雑種犬がこちらを見上げている。このカスターニェは息子夫婦が仕事のためにフランクフルトへ引っ越した先で飼い始めたのだが、やがて何年かして生まれた孫娘に犬毛のアレルギーがある事がわかり一緒には暮らせなくなった犬だった。息子に『捨てるなんて忍びない、田舎の両親のところで育ててくれないか』と懇願(こんがん)されて預かった犬だった。  そのカスターニェも今ではヨハンの家族だった。既に13歳を超える老犬だったがいまだに元気で、しっぽを勢いよく左右に振りながらヨハンにサンドイッチのハムを要求していた。  ヨハンは笑顔でそれに応える。(かじ)りかけのサンドイッチの間から一枚のハムを抜き、カスターニェの口元に寄せると、彼は嬉しそうに一声鳴いた。  さぞや嬉しそうに食べ掛かると思いきや、カスターニェはあらぬ方向を向いたままじっとして動かないばかりか、やがて低く唸り始める。 「どうしたお前、いらんのか?」  ヨハンはカスターニェの鼻先でハムを上下させる。しかしカスターニェはそれに興味を示さないどころか、大きな声で吠え始めた。  ヨハンは今まで見たことがないほどの剣幕で吠え始めたカスターニェに驚き、何事かと愛犬の視線の先に目を向ける。  ヨハン達から300mほど北にはザクセンハウゼンの駅があった。そこには領域通過列車(インターツーク)と呼ばれる西ドイツのケルンと東ドイツのベルリンを結ぶ特殊な路線を走る列車が停まっていた。それだけでは珍しい光景では無かったが、ヨハンの目を奪ったのは列車の前を逃げ惑う人々の姿と、その列車と人々に覆いかぶさるような黒い大きな影だった。愛犬カスターニェはおそらくそれに向かって吠えていたのだ。ヨハンは何度も目を(しばた)かせて両手で目をこする。それでもその影は影のままであり、はっきりと見えていたのはその輪郭だけだった。 「あ、あれは悪魔だ……、悪魔が列車を襲ってる……」  ヨハンは一言呟いたきり言葉を失った。  この時ヨハンが出来た事は、駅へ向かって走り出そうとするカスターニェの首輪を掴んで抑えこむ事だけだった。泣き出しそうな表情で首を横に振る一人の老人と吠え続ける一匹の犬をよそに、影の悪魔は列車のコンテナをバリバリと破り始めた。        ◇         ◇         ◇ 「さすがは我がヒルデブランド! 西側の新型にも引けを取らんな」  何度目かのミサイル攻撃を掻い潜ったヒルデブランドは無傷のまま戦場を自由に飛び回っていた。そのコクピットの中、乗機を称賛するブルクハルトに対し、エッサーは過ぎるほどに冷静だった。 「中尉、先ほどまでの対空ミサイル攻撃と対空砲火でメインスラスター周辺以外の機体平均温度が28℃まで下がりました。これ以上の機体温度低下は敵に遺産技術の存在を気取られる恐れがあります」 「敵の新型機のデータはほぼ取れた頃だろう。こちらの戦果は充分だが、列車の荷の方はどうだ?」  エッサーは無線回線を開き、一言二言を小声で交わす。やがて通信を終えたエッサーはブルクハルトに報告を始めた。 「後退させた偵察機(スカウト)が迂回済み。いまザクセンハウゼン駅で列車から回収中です」 「軍が出て来て対応を始めた場合はともかく、なるべく民衆に被害が出ないよう留意させろ。鉄道警察も含めてだ。衆目があるうちは変形させるな。遺産の回収が済み次第、全速で帰投させよ」 「了解、伝えます」 「さて、荷の確保が終わるまでこちらはこちらで釘付けにしておく必要はあるが、味方は1機たりとて撃破されては困る。全機、機関出力を8割まで上げる事を許可する」  その命令を合図に、東ドイツ部隊の各機体は鈍い光を放ち始めた。

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