a. 「こんにゃろぉ、今ぶつかっただろ!!」 「ざけんじゃねぇぞテメエ何処に目をつけてんだ!!」 些細なきっかけで殴り合いが始まった、街中だというのによそでやれよと、呆れつつも通り過ぎようとした人々の脚が止まる。 「...おい、いま睨んだだろ」 「あ?舌打ちしやがって」 「私の脚を蹴ったでしょ!」 「どこ見てんだゴラァ!!」 街を歩いていた人間達が、近くにいた人間に喧嘩をふっかける。みんなスルーせずに反応するものだから、やがて大乱闘が始まった。 そして同じような事件が、あらゆる場所で発生した。 「いま勉強しようとしてたんだよ!」 「言われるより早く始めときなさい!!」 「うるせーんだよ、ババアがよ!」 一軒家、親子で。 「おい君、定時退社は許さんぞ、ずっと働け!!」 「やってられっか糞上司が、働き終わったかと思えば飲み会なんぞに付き合わせやがって!」 「てかあなた仕事中私の脚チラチラ見てたでしょ」 「綺麗な脚してる方が悪いのよ、バカ?」 「きぃ〜っ、セクハラよ!」 社内、上司と部下、同僚同士で。 「授業中ずっと喋りやがって、許せねえぇ...ッ!?」 「ぎゃはははは、憤死とかマジで見た!」 「なに笑ってんだ不謹慎だろ糞がっ!!」 学校、教師と生徒で。このように、普段なら耐えられるようなことで皆怒りだし、殴り合い罵り合いの喧嘩に発展している。 酷い場合は殺し合いに発展し、憤死するものまでいる、これは明らかに異常事態である。 この暴動を収めるため、警察が出動、争いが起きている各地にパトカーが到着したのだが。 「てめえら喧嘩しやがって、みんな銃殺刑だ!!」 なんと降りてきた警察官は、真っ赤な顔で争いあっている民間人達を次々と射殺していった。 もちろん許可など得ていない...各地の警察官も、同様にその手を血に染めた。 「ごめんなさいっ、みんな、後でお菓子あげるからねっ」 あんずが、床に横たわるMINTメンバー達に何度も頭を下げる。極東基地でも、突然、乱闘が始まったので、あんずとストックは仕方なく気絶させたのだ。 「どうなってるのよ、まったく?」 「わかんないよぅ」 「泣きべそかかないの、きっと元に戻るから」 「だといいんだけど...」 しかし、これからどうしたものか、まともな思考の機械少女二人は、全力全開で搭載された人工知能を働かせた。 b. 「私の後ろ何かいるだなんて?妙なこと言ってんじゃあないわよッ!!」 「お姉様!?」 「パイセェエエエエエエエン!!」 いきなり香燐が激昂し、俵に殴りかかった、予想外の事態に龍女と猫鈴猫は戸惑いを隠せない。 香燐が震えていた理由は、恐怖からでは無く、怒りからくるものだったのだ。 「お姉様が犯罪者になっちゃう、やめて!」 「...ペタッとな!」 「え」 俵は香燐の額に、赤く崩れた文字が書かれている札を貼った、まるでキョンシーだ。 「あれ、私、なにを?」 お札は無事に効果を発揮、香燐は正気を取り戻す。猫鈴猫は胸をなで下ろし、龍女は先輩の格好いい姿を心霊写真を撮影するために持ってきていたカメラに収めていた。 「お姉様は危うく報道する側からされる側になるところだったんですよ」 「なんで!?」 「呪いが発動してるんよ、まだ範囲は東日本の各所で済んでっけど、そのうち日本中に広がりそ」 「呪いって...あ、私に憑いてるやつ!?」 「マジでショボいやつね、それはついでに祓っといたからセーフセーフっ!」 「先輩マジパネェ!」 「確かに肩が軽くなった気がするわ、ありがとう、それにごめんなさいね」 ぺこり、襲いかかってしまったことを、香燐は謝罪。俵は、呪いのせいだしと気にしていない様子。 「ん〜でも、お姉様とふたりきりだと思いきや、ずっと悪霊なんて第三者が居たなんてショックだよ!」 「そんなことより、呪いについて詳しく教えてくれないかしら」 香燐はメモ帳とペンを取り出し、龍女はカメラを構えた。猫鈴猫は...特に意味はないが、香燐の足元で丸くなった。 c. 「あれあれ、祠爆発してっしょ、あっこ百足像あったんだけどさ〜バラバラなって封印されてた邪神様がおねむの時間終了のお知らせなわけなんだよねぇ」 「...なるほど」 「んで激おこぷんぷんエネルギー集めてさいつよになりてえし頑張っかってわけで、みんなブチギレさせる呪いかけてんのよ、科学力じゃ無理ゲーなわけ」 「...なるほど」 「だから霊力ぱないあっしが神さま現れる前に出てくんなって物申しに来たワケワカメってワケ有明なの」 「...なるほど」 相槌を打ちながら熱心にメモする香燐に、猫鈴猫は冷ややかな視線を向けた。 「お姉様ぁ、本当に理解してるぅ?」 「理解してるわよ!ザギンでシースーってことでしょ」 「私はわさび抜きで!!」 「やれやれ、やっぱり理解してないじゃないすか、おばさんじゃ若者言葉わかんないのは仕方ないか」 龍女は相変わらず俵を撮影しまくりながら、香燐を煽った。 「おば...!?てかこれ若者言葉とかじゃなくない!?」 「おばさ...お姉様の言う通り、ただの変な言語だよ!」 「ちょっとアンタ今おば様って言おうとしなかった!?」 「お姉さまは私にとって永遠のお姉さまだよ!」 「誤魔化し方下手くそか」 ... ... ...駄目だ、来るわ。俵が深刻そうに呟く。 「来るって?え?きっと?」 「いやぁ、思ったより霊力強すぎたわ、勝ち目ねぇ」 「パイセンすら無理とか詰みだわ!」 終焉は確実に近付いていた、いま香燐や俵達がいるこの山の上空を覆う暗雲が示唆している。怒りのエネルギーを十二分に得た邪神が、遂に降臨する時が来たのだ。 つづく
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方舟みちる
俵ちゃんサラッと香燐さんに憑いてた怨霊的な何かを祓ってて笑いました。心霊スポット巡りのプロ…!? 後半の俵ちゃんと香燐さんのやり取りも良かったです。ザギンでシースー…。あのセリフ猫鈴猫ちゃん的には本心なんでしょうけど、タイミングぅ…!
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方舟みちる
2022年3月8日 15時00分
百合豚怪獣キマシラス
2022年3月8日 15時57分
ポイントコメントありがとうございます〜 霊能力が高い!?お祓いできるなら心霊スポット安心感増しそう〜 タイミングが悪いよタイミングが
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百合豚怪獣キマシラス
2022年3月8日 15時57分
ワタル
香燐お姉様の激昂、台詞回しに奇妙な冒険めいたサムシングを感じますね。俵ちゃんお祓いできるのか……って俵藤太って百足退治した藤原秀郷の別名だから、俵ちゃんってもしかして!?これは熱くなってきましたね。いざ邪神降臨。科学じゃ無理ゲー宣言されたものの、ネリネちゃんパワーを発揮できるか?
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ワタル
2022年2月26日 23時47分
百合豚怪獣キマシラス
2022年2月28日 22時10分
まあ奇妙な体験はしまくってますからねえ あら、お気付きになりましたか。でもこういう要素入れる塩梅割と難しいですね...!?あまり期待なさらず オカルトにはオカルトをぶつけるんだよ
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百合豚怪獣キマシラス
2022年2月28日 22時10分
方舟みちる
ビビッと
300pt
2022年3月8日 14時53分
《「理解してるわよ!ザギンでシースーってことでしょ」》にビビッとしました!
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方舟みちる
2022年3月8日 14時53分
百合豚怪獣キマシラス
2022年3月8日 15時56分
寿司食べたい!
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百合豚怪獣キマシラス
2022年3月8日 15時56分
方舟みちる
ビビッと
300pt
2022年3月8日 14時51分
《「マジでショボいやつね、それはついでに祓っといたからセーフセーフっ!」》にビビッとしました!
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方舟みちる
2022年3月8日 14時51分
百合豚怪獣キマシラス
2022年3月8日 15時56分
御祓いスキル〜!!
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百合豚怪獣キマシラス
2022年3月8日 15時56分
方舟みちる
ビビッと
200pt
2022年3月8日 14時54分
《「お姉さまは私にとって永遠のお姉さまだよ!」》にビビッとしました!
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方舟みちる
2022年3月8日 14時54分
百合豚怪獣キマシラス
2022年3月8日 15時55分
なんか百合っぽいセリフ
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百合豚怪獣キマシラス
2022年3月8日 15時55分
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