a. 「うわあああああああ」 除雪車が、テントが、武器が、挙句の果てには人間までもが宙に舞い上がった。羽毛に覆われた巨大な翼により起こされた、風速300メートルの突風によって。 グワァオオオオオオ。象のように長い鼻の下に隠れた口から、怪獣は銀色のガスを吐き出し、宙を舞うすべてのものに浴びせた。 「ああっ、なんてことだ... ... ...!」 怪獣はあらゆるものを舞い上がらせただけでは飽き足らず、空中にて冷凍してしまった。凍結すると物体は落下してくる、恐ろしい凶器となって。 なんとか踏ん張って羽化されずに済んだ隊員たちは、それらをレーザーガンで落下前に破壊したが、確実に凍死しているとはいえ仲間は撃つことができず涙ながらに避けるしかない。 「くそお、救援はまだなのかよぉおおおお」 「おかしい!流石に来るのが遅すぎるぞ」 「まさか、あの怪獣にやられてしまったのでは!?」 「その可能性が高いよね」 リエニとチオ予感は的中していた。防衛軍の救援部隊は少し前に南極に到着したのだが、怪獣の冷凍光線により全滅してしまったのだ。 救援部隊にはあんずも付いてきていたが、彼女もまた冷凍ガスの前に全身を凍結させられて動きを封じられてしまったのである。 「...連絡が取れない、やられたんだ!」 班長は通信機を氷の大地に叩きつけて叫んだ、やはり怪獣にレーザーガンや小型ミサイル弾は通用しない、まさしく万事休すだ。 b. 「この店のこだわりは、代々受け継がれてきたスープでな、良い塩梅に濃いだろう」 「はい!とても美味しかったです、ダイエット中だろうと何度も食べに来たくなる程に」 「お〜わかってるじゃねえか姉ちゃん」 南極で怪獣が暴れているころ、香燐は行列のできるラーメン屋で取材をしていた。 「ラーメンよりうどん派の癖に!」 ステルス機能をオンにして、香燐の隣でメニュー札を見ながら、猫鈴猫は憎まれ口を叩く。 仕事中なので仕方が無い、それにラーメンだって嫌いではないし美味いとは思っている。 「ただダイエットには向いてないのよ」 「お姉さまは天ぷら結構乗せるしおにぎり絶対つけるじゃん、あれ辞めなきゃあまり変わらないよ?」 「勝てないのよ、おにぎりの誘惑には!」 「あとお姉さまは塩ラーメン好きですよね、だから常に大量の塩分を製造する機能も付いてるんですわたし」 「うわなにそれ気持ち悪いわね!」 「は?」 勿論これはラーメン屋の取材を終えて、公園のベンチで休憩しながらの会話。猫鈴猫が用心棒についてるし、昼寝でもしたいな〜なんて目を閉じる香燐。 彼女が夢の世界に落ちそうになったとき、ポケットで携帯電話が激しく鳴った。 「わわわわっ、どうしました!」 慌てて出ると編集長からだった、ちょっと昼寝しようとしたのがバレたのかと香燐は少しビビる。 「“どうしたじゃない、防衛軍の方から香燐さんと連絡が取れないから貴方からも掛けてくれないかと言われたんだ、先日の取材で粗相でもしたんじゃあるまいな“」 「してませんからクビにはしないで下さい、防衛軍には此方から折り返しますので!」 ガチャッ。ツーツーツーツー。香燐ら逃げるように電話を切ると、これまた慌てて防衛軍に着信履歴から折り返しの電話をかけた。 c. 「まさか南極に行く事になるなんて思わなかったわ」 「私は二度目だなあ、てかお姉さまカイロ十枚は貼り過ぎだよ〜」 「なに透視してんのよ出歯亀ロボット!」 「あいた!」 なんとなく恥ずかしかったからカイロは個室で自ら貼ったので、枚数が分かると言うことは透視以外あり得ないのである。 香燐も防衛軍の特殊防寒着を着用してるからカイロはいらないだろと思われるかもしれないが、隊員でもメカでもないので念の為に。 「緊急事態なのに...緊張感がない...」 凛憧 椛は不満げにボソボソと呟く。南極に向かったあんずや救援部隊から応答が無い、救援を要請した再建工事のメンバーだって心配な時に戯れられたら当然こんな反応もするだろう。 「椛隊員、彼女たちは飽くまで協力者よ。それに猫鈴猫ちゃんは桃井さんの緊張を解しているように見えるけどね」 「う、わかりました隊長...」 「あらまバレてるとは、光磨忠 雪片隊長か。侮れないかも」 猫鈴猫と香燐が乗っているのは副隊長である涼水 葵が操縦するイキシア2号であり、雪片隊長は無線越しの会話を聞いただけだ。 「なのに正解だなんて、さっすが隊長!私なんて呑気な人達だなあくらいにしか思ってなかったのに」 「まあ仕方ないんだけど酷い!」 「普通はそう思うよね〜っと、もう南極だよ」 「南極だけあって寒いわね」 「違うよお姉さま、この寒さは怪獣の仕業!」 「温度計は−110度を記録してますからね、あっ!あんずが!!」 海から上半身だけを出している、凍結した巨大な人型の物体。赤い髪に赤いロリィタ服は、紛れもなくあんずだ、機能停止の証に目がバッテンの形になっている。 付近の氷塊には救援部隊の航空機と思われる残骸が散乱しており、悲惨な光景だった。 「私のデータをもとに造られたあんずだけど、パワーだけなら私を遥かに上回る心強い新たな仲間」 「そんな彼女をあんな風にしてしまうなんて」 香燐は寒さと恐怖に震える指で、開かれた猫鈴猫の背中に備わるスイッチを押した。 「“猫鈴猫ちゃんは時間稼ぎしてくれるかしら、その間に焼夷弾であんずを解凍するから“」 「わかった!背中は預ける!!」 猫鈴猫はイキシア2号から飛び降りて巨大化、そのまま再建工事が行われている場所へと飛んだ。 つづく
コメント投稿
スタンプ投稿
ワタル
実はうどん派とのべらちゃんへのアピールを忘れないの好きです!冷凍怪獣、口から風を出すなら長い鼻の用途が何なのか気になりますね。焼夷弾で解凍というパワーワード。MINTの仲間たちとなら勝てるか。続きに期待です!
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
ワタル
2021年7月23日 15時09分
百合豚怪獣キマシラス
2021年7月23日 23時08分
のべらちゃんに媚をうるうるうどん 俺はラーメン素麺派です 長い鼻は飾りかもしれません、焼夷弾で解凍できるのかは知らないけどなんとなくできそう!
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
百合豚怪獣キマシラス
2021年7月23日 23時08分
方舟みちる
猫鈴猫ちゃんと香燐さんのイチャイチャ最高です…!香燐さん、カイロ貼ってもらうのは恥ずかしいから猫鈴猫ちゃんに頼まず自分で、というところで普段の酒癖悪くて大胆なイメージとのギャップがなんか良き…ってなりました。あんずちゃん、戦闘不能状態の目が×になってるの可愛いです
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
方舟みちる
2021年8月19日 12時45分
百合豚怪獣キマシラス
2021年8月19日 19時11分
ポイントコメントありがとウゴザイマス!! 惜しみなくイチャイチャさせて行きたい所です、隙あらば百合描写。なんかお姉様はそういうところあるんだよ〜 ギャップ萌え、いいっすよね コミカルで可愛い×目
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
百合豚怪獣キマシラス
2021年8月19日 19時11分
方舟みちる
ビビッと
300pt
2021年8月19日 12時35分
《海から上半身だけを出している、凍結した巨大な人型の物体。赤い髪に赤いロリィタ服は、紛れもなくあんずだ、機能停止の証に目がバッテンの形になっている。》にビビッとしました!
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
方舟みちる
2021年8月19日 12時35分
百合豚怪獣キマシラス
2021年8月19日 19時09分
(×△×)🎀
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
百合豚怪獣キマシラス
2021年8月19日 19時09分
方舟みちる
ビビッと
300pt
2021年8月19日 12時33分
《なんとなく恥ずかしかったからカイロは個室で自ら貼ったので、枚数が分かると言うことは透視以外あり得ないのである。》にビビッとしました!
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
方舟みちる
2021年8月19日 12時33分
百合豚怪獣キマシラス
2021年8月19日 19時08分
割と照れ屋さん
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
百合豚怪獣キマシラス
2021年8月19日 19時08分
方舟みちる
ビビッと
300pt
2021年8月19日 12時31分
《「うわなにそれ気持ち悪いわね!」》にビビッとしました!
※ 注意!このコメントには
ネタバレが含まれています
タップして表示
方舟みちる
2021年8月19日 12時31分
百合豚怪獣キマシラス
2021年8月19日 19時07分
こういう台詞たまりません
※ 注意!この返信には
ネタバレが含まれています
タップして表示
百合豚怪獣キマシラス
2021年8月19日 19時07分
すべてのコメントを見る(12件)