a.
「ノンブレス星人に騙された理由は?」
「最初は汚れきった悪魔の星を滅ぼす為に作られたって聞きましたのよ、地球は美しい星だが今は汚い星だと、それは人類のせいだから、怪獣オディナを使って商売道具にしてやろうって」
「なるほどねえ」
取調室にて、自分を助けてくれた葵隊員に対して、素直に話すストック。
持ち前のスピードを活かして償いの復興も三日も経過しないうちに終わっており、まだ彼女を危険視する声も少なくないが...
「かわいいじゃん!」
「幸い誰も死んでないんでしょ?」
「国から前より豪華な家貰ったし寧ろ得したし?」
「かわいいじゃん!」
「最終的には敵撃破に貢献してくれましたもの」
「かわいいじゃん!」
「例の記事見たからね〜」
と擁護派が大多数だ。そして猫鈴猫は無事サルビア博士に修理して貰ったし、良い方向にことは進んだ。
そして時は流れてたった今、時計は10月31日00時00分を示す。瞬間、防衛軍極東支部内にサイレンが鳴り響く。
「何があったの?!」
「隊長...怪獣ですか」
仮眠中だった涼水隊員と凛憧隊員が、司令室に駆け込んできた。既に雪片隊長とオペレーターである絢愛とアイリスは緊急事態に対応中である。
「エリア235、657、531、431に怪獣が出現しました!!」
「どれも今まで現れた怪獣の生体反応に一致!」
「同時に四体も?!」
「しかも過去に倒した怪獣...」
「まさか繁殖したんじゃ...わっ!?」
オペレーターコンビに伝えられた情報に、涼水隊員は愕然とする彼女の背中が、誰かにいきなり叩かれた。
涼水隊員が振り返ると、余裕の表情を浮かべるストックと涙目のあんずがいた。
「いきなり叩くなんて酷いな、ストックってば」
「陰鬱な表情してたんで、所謂一発入魂ですわ」
「やっぱりお嬢様キャラというより関西にいる人みたいだ...なんて言ってる場合じゃない、隊長、出動しましょう」
「そうね...私は235に行きます、涼水隊員は657、凛憧隊員は531、あんずとストックは二体の怪獣が現れた431に出動して」
「了解!!」
一同は指定の場所に急行した。先ず雪片隊長が向かったエリア235は鮮やかな海と接する砂浜で、付近に自殺の名所と囁かれる崖が存在している。
「いた...確かに前に倒したはずのアステリベルゼね」
赤い海星型の体に蝿の顔がついた怪獣アステリベルゼが、灯台の方を向いて砂浜に佇んでいた。
大きさは前回と同じくらいなのに、まるで迫力がない、なにより。
「生命を感じない...まるで幽霊だわ、攻撃してくる気配もない」
とは言え怪獣とあれば無視することはできない、雪片は超低温レーザーを発射した。
次の瞬間、信じられないことが起きた。レーザーがアステリベルゼの体をすり抜けたのだ。
「まさか本当に幽霊だとでも言うの?」
何かの間違いだと思って雪片は再びミサイルでの攻撃を放つが、これもアステリベルゼの星型の体を通り抜けた。
「ストックちゃん、見て、ここがエリア431だよ!」
夜の空をストックと並んで飛んでいたあんずが、山を指差す、そこにアルドムとアイオロードが向かいあっていた。
「怪獣が二体、レーダーも目的地に到着したことを告げている、間違いなく目標!!」
片目を晒すことでストックは加速、腕を槍に変形させ、二体の怪獣目掛けて急降下していく。
「二匹纏めて串刺しにしてあげるわぁああああああ!!」
ドスッ...ストックは怪獣達の体をすり抜け、槍は怪獣の背後、山の斜面に突き刺さった。
「え?なんで、確かに怪獣は見えるし反応はそこにあるのに!!」
「わっ、私に任せて!」
予想外の出来事にストックは驚愕してる間に、あんずが二体の怪獣に拳を穿つも...。
「うそっ、な、ななな、なんで?!」
いくらあんすが殴っても拳がすり抜けてしまう、アルドムの体もアイオロードの体も。更に不気味なのが、全くやり返して来ないこと、まるで幻覚のよう。
「ねぇ、ストックちゃん、もしかして、お、おば、おばけなんじゃ...」
「まさか...あ...其処のトンネルの上に墓地発見」
「ひにゃあああああああっ!!」
寂れたトンネルの真上に墓場なんて光景を、真夜中に、幽霊みたいな怪獣と遭遇した直後見てしまったあんずは大絶叫。
「きゃああああああああああああ!?」
トンネルや怪獣より、あんずの叫び声に驚いて、ストックはダウンしてしまう。
その頃、涼水隊員と凛憧隊員も隊長やストック&あんずと同じように掴みどころがない怪獣に遭遇、いったい何が起きているのだろうか。
b.
「では皆さんの戦った怪獣に攻撃が通じなかったと?」
「おかしいなあ」
帰還したメンバーの話を聞いて、絢愛とアイリスは顔を見合わせて首を傾げる、今だってモニター上には反応がある、幻覚等と言った可能性は無い筈なのだが。
「怪獣が現れた場所に共通点は無いかしら?」
隊長に問われるなり、オペレーターコンビは更に詳しくエリアについて調べ始める。
それから直ぐに、彼女達は怪獣が現れたエリアの共通点に気付いた。
「あっ、どのエリアも近くに心霊スポットがありますね、関係あるのかな?」
それを聞いた涼水隊員は、そう言えばと掌を叩いた。
「今日はハロウィンでしたよね」
「涼水隊員、お菓子は挙げないよ」
凛憧隊員に冷めた視線を向けられ、涼水隊員はいやいや違うと首を横に振る。
「いやね、ハロウィンは日本で言うお盆みたいなもんですから、もしかしたら怪獣も茄子か胡瓜に乗って帰ってきたのかなって」
「ひゃあ、やっぱりお化けなんだっ!」
涼水隊員が怪談風に言うものだから、あんずは怖がって、ガタガタ震えながら、しゃがみ込んでしまった。
「あらあら、あんずさんは怖がりね。私達は命を持たない存在と言う点では寧ろ生きた人間より親近感覚えるけれど」
「まだ幽霊だと決まった訳じゃないわよ、そもそもアステリベルゼとか宇宙怪獣だもの、帰るなら母星でしょう?」
「地縛霊になった可能性も...」
とにかく未だ暴れずに被害が出てないとはいえ、怪獣を放置しておく訳にはいかない。
MINTのメンバーは防衛軍上層部に連絡、ここからどう対応するべきかについての会議が開かれる事になるのだった。
c.
香燐が窓の外を眺めている、その表情は儚げでなんとも美しい。
猫鈴猫は今の彼女がこのアパートに居ることに安心感を覚える、もしも職場やら外出先であんな顔をされたら、恋敵が増えてしまう可能性が極めて高い。
「お姉様、一体どうしちゃったの?」
「今日はね、命日なのよ私の初恋の人の」
「聞くんじゃなかった、二重の意味で!」
やらかした感とヤキモチの混ざった複雑な感情が人工知能に刻まれる、やけくそ気味な勢いで猫鈴猫は香燐の膝上に飛び乗った。
「なにしろ私が学生の頃の話だから、今は落ち着いてるけど、ハロウィンの日には思い出しちゃうのよね」
「まだ未練あるでしょ〜!」
「無いと言えば嘘になっちゃうわね」
猫鈴猫の頭を撫でながら、香燐は感傷的な声を漏らす。なんだか猫鈴猫は苦しくなった。
「さてと、そろそろ取材に向かわないと」
猫鈴猫がウトウト船を漕ぎ始めたとき、香燐は彼女を膝から優しく下ろして立ち上がった。
荷物を確認しブーツを履いて香燐は出勤、猫鈴猫もステルスモードで御伴するが...。
「あれ...?」
取材相手の待つ喫茶店目指してヨーロピアンなお洒落な町並みを歩いていると、裏路地から視線を感じる。
よく目を凝らしてみると、二つの小さな黒い影が香燐を見ていた。
「黒猫とカラスじゃん! 不吉扱いされがちだけど実際は幸運コンビだ、魔女の使いでもないならね...可愛いね、お姉様!お姉様?」
「わかった、行くわ」
猫鈴猫が話かけても香燐は無反応で、てくてく歩く黒猫&カラスの後を追い始めた。
しかし目的地は真逆、寄り道してる時間なんてないのに、どうしたのだろう。
「取材バックレはヤバいよ、お姉様ってばっ...!?」
猫鈴猫は止めようと香燐の腕を引っ張るも、払いのけられてしまう。転倒した猫鈴猫が香燐の顔を見ると、死者のように虚ろな目をしていた。
「力づくで止めようとしたら、お姉様が怪我しちゃう、仕方ない、大人しくついてこ」
それから数十分に渡り黒猫とカラスの案内が始まった、次に二匹が歩みを止めたのは薄暗い森の中で、人どころか動物の気配すらも皆無である。
こんな不気味な場所に連れてこられたと言うのに、香燐はどことなく嬉しそうに微笑した。その理由は、視線の先にいる眼鏡をかけた長身の女性だろうか。
「また初恋の人に会えるなんて、先生!!」
「久しぶりね、桃井さん」
さっきまで魂の抜かれた人形みたいだったのが嘘のように、香燐は女性の元へ駆け寄って抱きしめるアクティブさを見せた。
「あああ〜!私以外の女とお姉様が抱きあってる、人工知能破壊されちゃう...って先生は死んだんじゃ?」
香燐があどけない表情を見せる彼女は、いったい何者なのだろうか?本当に幽霊なのであろうか!?
つづく
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方舟みちる
シリアスな雰囲気の香燐さん新鮮。普段の言動や行動で忘れがちですが、香燐さん超絶美人さんなんですよね。社内で密かに恋心抱いてる人居そう…。あんずちゃんの大声で驚いてダウンしてしまうストックちゃんかわいい、こちらのコンビも良きですね。怪獣達は本当に蘇ったのか、次回が気になります!
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方舟みちる
2021年12月9日 16時21分
百合豚怪獣キマシラス
2021年12月10日 13時44分
ポイントコメントありがとうございます!! 普段は猫と漫才してますからね、真面目にやってたらモテるんですよ、きっと。おれはコミカルな美人好きだがなあ 臆病&強気なコンビは定番ッス!! それは次回のお楽しみ!!
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百合豚怪獣キマシラス
2021年12月10日 13時44分
ワタル
ハロウィンはお盆に近い祭り、ゆえに幽霊。しかし反撃も反応もしない半透明の怪獣たちは一体何だ!?ストックちゃんがかわいさゆえに地球に馴染んだのよき!そして香燐さんの初恋の相手が。こっちは幻影じゃなくて言葉を話せる!?次回に期待です!
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ワタル
2022年1月3日 23時38分
百合豚怪獣キマシラス
2022年1月7日 23時40分
ポイントコメントありがとうございます!! ハロウィンお盆的な奴だったなんて衝撃です かわいいは正義!!でも対義語は勘弁俺死刑NO!! いったいどういうことやら!?
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百合豚怪獣キマシラス
2022年1月7日 23時40分
方舟みちる
ビビッと
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2021年12月9日 16時11分
《猫鈴猫は今の彼女がこのアパートに居ることに安心感を覚える、もしも職場やら外出先であんな顔をされたら、恋敵が増えてしまう可能性が極めて高い。》にビビッとしました!
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方舟みちる
2021年12月9日 16時11分
百合豚怪獣キマシラス
2021年12月10日 13時42分
モテちゃう〜!
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百合豚怪獣キマシラス
2021年12月10日 13時42分
方舟みちる
ビビッと
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2021年12月9日 16時08分
《寂れたトンネルの真上に墓場なんて光景を、真夜中に、幽霊みたいな怪獣と遭遇した直後見てしまったあんずは大絶叫。》にビビッとしました!
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方舟みちる
2021年12月9日 16時08分
百合豚怪獣キマシラス
2021年12月10日 13時42分
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百合豚怪獣キマシラス
2021年12月10日 13時42分
ワタル
ビビッと
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2022年1月3日 23時33分
《香燐があどけない表情を見せる彼女は、いったい何者なのだろうか?本当に幽霊なのであろうか!?》にビビッとしました!
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ワタル
2022年1月3日 23時33分
百合豚怪獣キマシラス
2022年1月7日 23時38分
なんか大袈裟!
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百合豚怪獣キマシラス
2022年1月7日 23時38分
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