登場人物紹介 中原裕也(ゆうにい) 恋愛をしたことがない大学生。自他ともに認めるロリコン。春川と云う名前でウェブ小説を書いている。才能が溢れるロリコン。 藤沢由華(ゆか) 恋愛に全く興味がなかった女子高校生。藤之華と云う名前でウェブ小説を投げている。いつも乱歩乱歩と煩い乱歩バカ。裕也の事を「ゆうにい」と呼ぶ

恋歌に想いを

 宵の月 君を思ひて 眺めれば  子供騙しも 愛しく思う  今宵の月はストロベリームーン。  恋が叶うと言われている。  とは言えそれを()()送る相手が居ない。 「好いた殿方は居るけれども、リアルでは1度しか会った事はないし、そもそも勝手に好いている事がバレたら、気持ち悪いと思われないかしら」  そんな事を想いながら、月明かりを浴びる。 「本当に恋が叶う月があれば良いのに。子供騙しに恋が叶うと言うのなら、その子供騙しにも縋ってみようかしら」  歌を詠む。  月を見上げて、自分自身を見つめて、素直に、気持ちが冷めないうちに。  折角(せっかく)だからツイッターに投げてしまおう。  私は『宵の月 君を思ひて 眺めれば 子供騙しも 愛しく思う』とだけ打って投稿した。  あの人の目に止まったら嬉しい。けれども平安時代ではあるまいし、恋歌を詠んだところで恋が叶うわけない。  そんな思いもあったがその時は只々歌を詠むのが楽しかった。  .。.:*♡.。.:*♡.。.:*♡  この人のことを好きだと自覚したのは本当に些細なことだった。  私は「春川」と云う人の小説が好きだった。短歌も呟きも大好きだった。SNSでチャットをするのも楽しかった。  SNSでは公開チャットを「リプ」公開されないチャットを「DM(ダイレクトメール)」という。  私達はリプでよく話していた。するとフォロワーの1人の方が囃し立て始めた。  しばらくそれが続いたある日、春川さんからDMが来た。 『あの、付き合ってないのですが、付き合っている風に囃し立てられていますけれど大丈夫ですか』 『私は大丈夫ですよ』と返信。 『なら、良かったです。私は大丈夫ですが藤之華さんが厭ならと思いまして』  私は好きが講じて藤之華と云うペンネームでネットに小説を投げている。  春川さんと同じWEB小説作家だ。  最近は中々のスランプ状態なのであまり書けてはいないのだが。  それから話は他愛もない話だった。  恋も青春も知らないだの、私も彼も基本的に図書館暮らしだとか、今の若い子が使っているネットコミュニティだとかを話していた。  そのまま話の流れで恋話をしていた。 『でも、まあ、ぶっちゃけ彼女欲しい笑』 『春川さんなら社会人になったときモテそう笑 私も彼氏欲しい』 『恋歌を送り合う様な彼氏?』 『です! です!』 『そんな殿方になりたいものですな笑』  え!?  こ、告白ととっていいのか。この文章は。  落ち着け藤之華。冗談かもしれないのだ。  もし、冗談なら真面目に受け取れば冗談が通じない人間と印を押されることになる。  もし、本心ならどうなのだろう。ふと考える。    少なくとも春川さんと付き合う事になったら日々勉強出来て、お話も面白くって楽しいだろうと思う。それに、悪い人では無いだろう。  自然と嫌な気持ちはなかった。(むし)ろ一緒に居て楽しいだろうと言う期待の方が大きかった。  春川さんとは文学フリマ、通称文フリで1度お会いした。優しそうな顔の男性だった事は覚えている。  しかし、殆ど話せなかったし、これのメッセージが冗談でないとも限らない。  熱くなった顔をパタパタと手で扇ぎながらどっちに転んでも大丈夫な返信を打とうとする。 「駄目だ。頭がおかしい程回らない」 『殿方って本気で言ってます? 笑』  なんとか打てた。が気遣いも含みもない内容。 『ええ、まぁ……』  これは、どっちなの。  私が自己完結しているだけで相手は冗談なのかもしれない。 『顔が暑い 笑』  話を逸らす。が嘘ではない。 『ああ! ごめんなさい!』 『いえいえ、大丈夫ですよ』 『勘違いさせてごめんなさい』 『私も変に解釈して申し訳無いです』  そんな事があり、気まずさから徐々に話が途切れた。  私は告白と勘違いした言葉を見返す。 「何で私、告白されたって勘違いした時凄い嬉しかったんだろう。恋愛とか興味ないと思っていたのに」  そう思うとまた、顔が熱くなる。 「今日寝られるかな」  .。.:*♡.。.:*♡.。.:*♡  そんな事があってから毎日DMを確認するのが日課になっていた。 「あの人からDMが来ていたら良いなぁ。本当にしょうもない話でも良いから」  でもやっぱり来ていない。  やっぱり勘違いなのかな。  そう思いながらストロベリームーンの恋歌を詠んだ後、しばらくネットにダイブする。 『月色は 我が心をば うつすなり   乞う我が(いも)も 空見上げなむ  月の(いちごいろ)は私の心をうつしている  どうか私の大切な女性(ひと)も空を見上げてくれますように』  あの人から私の恋歌に返歌(リプ)が来た。  『妹』とは恋人や妻などの関係の女性を指す。 「妹が私なら嬉しいけれど、そんな訳ないよね」  悲しいけれど、彼は大学生で私は高校生になったばっかり。  それに私は顔も性格も、頭も良くない。文才もない。  釣り合う筈がない。  でも、惹かれていた。  リプが来ると嬉しい。  私は五月蠅(うるさ)く慌てる心臓を押さえ付けて、歌を詠む。 『雲隠れ 朧になりける 君ならば   月の光に みちびかれぬる  雲に隠れた朧月の様に貴男がはっきりと見えません。どうか月明かりの様に淡く弱い光でも良いから私と貴男を照らして導いて下さい』  思い切って本心を詠む。  しかし、気付かないでと思いながら返信する。  気付かれて嫌われるのが怖いのだ。本当に自分勝手な理由である。 「今日はもう良いわ。歌も詠みあえて楽しかったから」  強がって、誰もいない部屋に話し掛けた。  翌朝、DMを確認する。夜にも何も来ていない事がわかった。  少しへこんだが実際、私の勘違いだろうと思うと慌てる自分が虚しくなっていた。  学校でぼんやりと最近の気持ちを考える。 「やっぱり好きなのかな。待っているくらいなら玉砕した方が諦め付くよね。でも、怖いから。明日、明日伝えよう」  そう決めた。  明日玉砕すると覚悟を決めて、学校から帰ってはいつもの様にSNSを開く。  DMを確認すると、あの人からDMが来ていた。 『あの、伝えたい事があるのですが』 『どうしました?』返信 『あの、驚かしてしまうかも知れないのですが、昨日の和歌には多少なりとも本心がありまして……』  え? 『と、言うと……?』 『はっきり申し上げると、前々から気になっていたのですが、文フリの時に一目惚れしました』  え??  頭が全力で「これは夢だと」私を説き伏せる。 『その、端的に言うと、好きです。気持ち悪くしましたら申し訳ありません』  え、は、はい??  真逆の本当の告白ですか?!  夢なのかな? 私疲れているのかな。 『ご存知かとは思いますが、私は大学生です。藤之華さんとは4歳差です』  夢だと全力で頭が否定する。  しかし、これは現実なのだ。脳が現実を拒絶する。  キュッと頬を(つね)る。  痛い。これは本当だ。夢でないのだ。 『とは言え、まず相手の意向を確認しろって話ですよね 苦笑』  こんな私で良いのか。春川さんにはもっと似合う素敵な女性が居るはずだ。  でも、本心は私は貴男と、春川さんと付き合いたかった。 『すみません』自分勝手な判断させて下さい。自己中心な判断でごめんなさい。  後悔させるかもしれません。黒歴史になるかもしれません。私のせいでこれからの出逢いを失うかもしれないのです。  それでも今の気持ちを、わがままを言わせて下さい。 『私で良ければ喜んでと思うところはあります』 『え!? マジか』  心臓が煩い。 『これがもし、本当の告白なら』 『本当も何も、真剣です。もう一度言います。好きです。付き合って下さい』 『私で良ければ、宜しくお願いします』  ドキドキなんかじゃない。もっと激しくて、それ故に苦しい。  心臓はモーターかと思われるくらい速く動いている。 『あと、業務連絡なのですが、これを』  何処かのサイトのURLが送られてくる。  とりあえずクリックする。 「真面目な人だなぁ」  そこには、未成年と成人のお付き合いは法律に違反しないか。と言うものだった。  私も夢を見て調べた事はあったが、サイトのURLが送られて来たときは、真面目さと悪い人じゃない安堵と、不器用さで頬が緩んでしまった。 『これから宜しくお願いします』 『こちらこそ宜しくお願いします』  そうして私達は付き合った。  そして、暫くは彼のリプを返すだけでも心臓が破裂しそうになるのであった。  .。.:*♡.。.:*♡.。.:*♡  彼の月は 子供騙しも 誠なり   人知れずとも 君に恋う  昨夜の月の言い伝えは子供騙しなんかではなく、本当だった。  人にしられなくて良いから貴男に惹かれてしまいました。  .。.:*♡.。.:*♡.。.:*♡

※あくまでフィクションです 歌を使わせて下さったあの人に感謝を。

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