登場人物紹介 中原裕也(ゆうにい)  恋愛をしたことがない大学生。自他ともに認めるロリコン。春川と云う名前でウェブ小説を書いている。SFが好きなロリコン読書家。 藤沢由華(ゆか)  恋愛に全く興味がなかった女子高校生。藤之華と云う名前でウェブ小説を投げている。ミステリが好きで本を食べる。裕也の事を「ゆうにい」と呼ぶ。

神社と恋愛と

 その年は偶々関東でSFの大会があった。  午後からで良かったら会おうという事だったので、午後二時頃に駅で待ち合わせをした。  私はなぜかその日に限って洋服がなく、和服で行くことになった。  茶道部の関係上、単衣と夏用の襦袢は持っていた。  それを着つけて家を出た。  電車に揺られて予定の時刻に駅に着く。  ゆうにいから『券売機のところにいるよ』と連絡があって、急いでそちらに向かう。 「あ、えっと、お、お久しぶりです」 「お久しぶりって、昨日会ったばっかじゃん」 「こ、細かいことは気にしないでくださいまし」  と、とりあえず、ゆうにいとも合流が出来て一安心する。 「あれ、和服?」  やっぱり、いきなり和服は変ですよね。  ワカッテマス。デモヨウフクナイノ。  私は驚いたゆうにいをよそ眼に、あははと笑う。 「えっと、夏だからいいかなって」 「帯、猫なの?」  ゆうにいは帯の可愛さに目を奪われた。そうです、にゃんこは可愛いのです。 「ええ、にゃんこ、にゃんこ。ネコちゃんです! どうしても猫の帯が欲しくて」  そんな会話をしているとお腹の太鼓が祭りはないか、と騒ぎ出した。 「とりあえず、何か食べる?」 「はい、そうします……」  ここはひとまずお腹の雷様をなだめる事にした。  にいに(ゆうにい)とお昼を食べてていると、ずっとこっちを見てくる。  うぐ……食べにくい。  彼の食事も運ばれて、視線から解放されたと思うと、流石は男子大学生と云ったところか。あっという間に食べ終わりやはりこちらをじっと見つめてきた。嬉しくない訳でもないが、流石に恥ずかしい。私は袖で顔を隠した。和服の特権である。  お昼を食べた後近くの公園を散歩した。  この公園は元々は神社の敷地でそこを公園に変えたところだ。  その為敷地自体は中々に大きい。どのくらいかと云うと神社の一の鳥居( 神社の外側の鳥 )から本殿まで2㎞以上ある。  また、ここには夏目漱石や正岡子規、樋口一葉も訪れていて森鴎外の『青年』にはこの公園で主人公と友人が語り合い、太宰治は『人間失格』の第三の手記を書いて完成させるまで此処を散歩で訪れる事を日課にしていたと云われている。  とりあえずそれらを語るのはまた今度にでもしようと思う。  今は物語を進めなくてはならない。  散歩して神社に参拝をする。  しばらく歩いて公園のベンチに座る。  あつい。漏れ出るのは勿論この言葉であった。  真夏の快晴の日に外歩いているのだもの。暑い、あつい、あちゅい。   「和服で暑くない」 「ええ、寧ろ洋服より涼しいくらいです」  事実、単衣の風通しの良さは恐るべしで、熱も汗の湿気も通してしまう。暑い日は和服の方が快適だ。  ベンチで話をしようとしても、お互いがお互いと目が合う度に下を向いてしまう。恋愛経験の無さが顕著に表れている。  交流はネットや電話であるとは言えまだ会って四回目だ。  今覚えば中々にぎこちなかったし、かなり緊張もしていたのだと思う。  しばらくにらめっこが続いた後、やっと会話が始まった。  会話が始まればお互いずっと話していられた。  にいにとお話するのは非常に楽しかった。  書くこともないのでベンチで話したことでもと思ったが、実際にベンチで話したことなんて読者には読むに足らないであろう他愛のない事だった。  最近面白い本を見つけただとか、推し作家の布教だとか、好きなアニメやゲームの話しやら。本当にそんなものだった。  とは言えお互いヲタクなのである。少女漫画の様なべたな愛を語るより、その様にいつもツイッターで話している話題の方が気軽に楽しく話せる。言うのもこれが悲しき非リア陰キャのコミ障ヲタクの性なのである。  話がひと段落したらまた歩きだしてまたお話した。  その時急ににいにがふざけてきて笑いすぎでお腹が痛くなった事は覚えている。  しばらく歩くと公園の大きな池の畔にいくつかベンチがあるのを見つけた。  もう3時を回っていて、兎に角涼しいところにとたどり着きたかったのだ。  私達が座ったベンチは陰になっていて日向のベンチよりいくらか涼しかった。  隣のベンチにはカップルが居いた。  カップルはベンチでキスをしてそのまま何処かへ行ってしまった。  は、破廉恥者が。  それしか頭に浮かばなかった。 「僕たちもしてみる」  悪戯っ子に笑った顔はしばらく直視できなかった。 「い、今は遠慮しておきます」  そういうと彼は「わかった」と云って引いてくれた。  無理に迫ってこなくてすごく安心したのと同時に、本当に良い人だとつくづく思った。    夏の長い太陽もいつの間にか傾いて2人で歩きながら帰った。  繋いだにいにの手は大きくて暖かかった。  彼の手が好きだった。女の子と手を繋ぎ合った時とは全然違う感覚でゴツゴツした手。ずっと握っていたいくらいだった。  それでも駅が近いと云うのは意地が悪いもので繋いで居たいなと思った時には駅に着いてしまっている。  イジワル。  もう少しくらい、一緒に居させてくれたって良いじゃん。  次会えるのがいつだか判らないのだからさ。  少しでも一緒に居たくて、怪しまれないくらいすこーしゆっくり歩いてみても然時間は伸ばせない。  だからと言って「帰るのあと一本後のにして」なんて我侭は口が裂けても言えなかった。  安っぽいエゴと素直になれない愚かさと醜い欲望が、目を逸らしたくなるくらい醜悪なマーブルになって居た。 「ぎゅ、ちゅ」  子供の様に笑いながらぎゅーって彼が言った。  可愛くて自然と頬が緩んでいた。  また会ったら、今度は飽きる程顔見てやる。そう決めた。 「ねぇ、帰ったら次のデートの予定を立てるのどうかな」  私はたったその一言が有頂天になるくらい嬉しかった。  またにいにに逢えると思うと別れる寂しさも和らいだ。 「じゃあ、また夜」 「はい」    今日のデートを振り返りながら、次のデートに想いを馳せる帰り道はちょっと楽しかった。

※これらはあくまでフィクションです。 リアルだと思ったら作者の技量故だと思って下さい。

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