3000回目のディストピア

Chapter7(3-1)

 ──2050年 1/2 12:21:59。  ユナ達の能力実践から数時間が経過し、気絶したアーリャと俺を除く三人には、自室の整理に向かった。    椿は元から泊まっていた1601号室、アーリャには1602号室、ユナは1603号室へ移動、そして紅には鬼龍院のいた1604号室を使ってもらう。  俺はそのまま1605号室を使い、1606号室は五人の会議室として今後使っていく予定だ。  部屋割だが、各人の能力との兼ね合いでこの配置にしている。  今回は自身の能力を実際に試していたせいか、すんなり受け入れられた。 (いつものように理由も説明せず納得させよう……っていうのに無理があるんだがな)  特に()()()()()()()()()()()()()にしたのは、本人たっての希望でもあるが、能力の特性によるものが大きい。   男と女が分けられる形になったのは偶然だが、合理性を考えるとなお良いだろう。  ちなみに鬼龍院のいた1604号室は、既に俺が掃除しており、誰かがいた形跡はなくしてある。  現状鬼龍院の存在を知っているのは俺だけだ。  消した事をユナ達に知られると今後に支障が出る。  ユナ達には自室の整理に加えて、1602号室へアーリャの私物を運んでもらっている。  今頃は椿辺りがヘリの中にある、アーリャのデ○ルドーを発見している頃だろうか。  ゴリラに用途が分かるだろうか。  各部屋の鍵だが、電気が止まった事で全て解放されている。  どの部屋にでも入り放題だ。    次に自室を用意した理由だが、アーリャ鎮静以降は一人でいて危険になる確率がぐんと減るからだ。  精々騒がしくしていると【百面魚(ハンドレット)】が飛び込んでくるくらいなもので、他は普段の生活と何ら変わりはない。  ……「海抜上昇後の」と前に付くが。    それならばストレスを吐き出す為にも、パーソナルスペースではあった方が落ち着くだろう。  紅達もそうだが、特に()()()()()()()は一人でいる時間がなければ効果を成せないからな。 (……いや、アーリャは誰かの前でもするか……?)  まぁ、いい。  ともかく三人が自分の部屋とアーリャの部屋を整えている中、俺はと言えば── 「オ○ニーするなら部屋を空けるぞ」 「イノリは今のアーリャがオ○ニー出来ると思ってるの?」 「手伝ってやる事なら出来るが?」 「遠慮しとこうかな」  目を覚ましたアーリャと、残念な言葉を投げあっていた。  冗談を言ってみたんだが、どうも反応が芳しくないな。  顔や動作、言動には出ていないが、どうやら俺の事を警戒しているらしい。まあ当然か。  さ、説得の時間だ。 「まずは誤解を解いておく。俺はお前の敵じゃないし、暗殺課に所属もしてない」 「……じゃあ、なんで暗殺課を知ってるの?」 「アーリャが次にする質問と被るからその時に答える」 「…………」  暫しの沈黙。  そして数秒後、アーリャはベッドの上でため息をついた。 「なら質問、いいかな?」 「なんでもいいぞ。ちなみに好きな体位は──」 「イノリは世界が海に沈むって情報を、一体どこ経由で入手していたの?」  いつもならノリよく返してくるだろうアーリャだが、今回はスルーされた。  それだけ切羽詰まっているのだろう。  尤も、当の俺にはアーリャと敵対する気など微塵もないのだが。    だから素直に答える。 「未来で実際に目にしてきた」 「………………ふーん」 「今の俺は能力【時間操作】で、元の俺の体に未来の魂や記憶を入れた状態だ。ちなみにアーリャを倒せたのは能力を使ったおかげだろうな。元の俺の体はろくに鍛えられてもない」 「そっか、でも──」  アーリャはくすりと笑い── 「【大罪:時間操作】…………アーリャの能力は知らないんだねぇ?」 「くっ──」  俺は地面に膝をつく。 「これがアーリャの能力……凄いね。『相手の能力名を大罪にして能力の使用、及び身体の自由を奪う』なんて──」 「──ま、嘘なんだがな」 「っ!?」 「未来の知識があるって言っただろうが、お前の能力も把握済みだぞ【色欲】」    ──【色欲】  七つの大罪を冠する能力の一つで、全能力の中でもトップクラスの強さを持っている。  そして七つの大罪を冠する能力には、能力とは別の特殊能力がある。    ──それが【大罪申告】    これは能力を大罪とし、一時的に能力者の身体の自由を奪い、加えて能力を()()使()()()()()()という恐ろしい力だ。  特例として、七つの大罪を冠する能力持ち同士では【大罪申告】が効かない。  精神干渉系能力者と手を組み、大罪持ちの能力者の自爆狙ったこともあったが尽く無効化。  返り討ちにあって死んだ世界線もある。  そして当然【大罪申告】に掛かって、俺達が壊滅した世界線だってある。  その際に俺も能力を使えなくされたのだが、その回もループはしっかりと発生した。  まだ何か、ループには俺の知らない事があるらしい。   「敵じゃないって言ってんだろうが、能力を消そうとするな」  いつの間にか布団を剥ぎ、腰元に右手を伸ばすアーリャ。  だがそこにナイフが無い事に気付き、すぐさま構えをとる。   (左腕は折れてるだろうに、毎度よくやる) 「じゃあ、なんでアーリャをボコボコにしたの?」 「未来のお前にそう頼まれたからだ。またやるか?」 「…………」  張り詰めた空気が漂う。 「……ってのは冗談だ」  が、俺からその空気をぶち壊す。   「ところでこの本の中身を見てみたくないか?」 「それ……」    未だに構えを解かない冷静なアーリャに、俺は本を──紅に書いた()()を投げ渡す。  だがアーリャは俺の投げ渡した本を、二歩下がって回避した。 「爆発したりしないぞ?」 「…………」  10秒、20秒、30秒…………  60秒──一分が経過して、やっとアーリャが本に手を付けた。 (相変わらず疑り深い)  そして本を開き、同時に目も見開く。   「これ……!」 「さ、答え合わせの時間だ」  俺はその場に腰をおろした。

    春宮プリンセスホテル最上階         ┃↑↑┃    ┃1603号室┃屋上へ┃1604号室┃  ━━             ━━  1602 ┃━━壁(硝子)━━┃ 1605  号室 ┃         ┃ 号室  ━━ 柵  空洞部分   ┃ ━━  1601 ┃  (浸水中)  ┃ 1606  号室 ┃━━━壁━━━━━┃ 号室  ━━             ━━    ┃非常┃━━┃エ1┃エ2┃    ┃階段┃  (起動しない)    (浸水中)   1601:春宮椿 1602:アルヴィナ・ヴィターリエヴナ・ヴィクトリア 1603:姫神ユナ 1604:葛城紅(鬼龍院透) 1605:姫神祈

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