それから年末の活動に向けてメンバー会議が始まったけど、正直何も頭に入ってこない。 熱が上がってきたのか頭もボーッとするし、情けないことに藤井さんや広輝のことが原因で動揺してしまっている。 藤井さんに言われるのは仕方ないとしても、広輝は何なんだ……? いや、俺が意識し過ぎなんだということは分かっている。広輝は普通にメンバーとして親友として接してくれているだけで、おかしいのは俺なんだ。 俺が広輝のことを好きだから、変な期待をして一人で一喜一憂してるだけなんだろう。どうせ期待なんかしたって無駄なのに……。 「———拓海。拓海、聞いてる?」 「は?」 「拓海はどう思う?」 隣に座っていた広輝に肩を揺すられて顔を上げると、メンバー全員とスタッフ数人からの視線が集まる。 「いいんじゃないか」 「拓海もメンバーなんだから、もっと積極的に意見出してよ」 まさか聞いてなかったとも言えずに曖昧に言葉を濁すと、広輝は呆れたようにため息をつく。 「拓海はさ、自分の意思はないの? 拓海から何やりたいとか聞いたことない気がする」 「そういうわけじゃない。今は特に思いつかないだけだよ」 「そうは思えないな。本当にno limitの活動について真剣に考えてる?」 真顔で俺を見てくる広輝と視線が絡み合う。 聞いてなかった俺が悪いんだろうけど、今日はやけに突っかかってくるな。俺が隠しごとばかりしているせいで、広輝のことを怒らせたのだろうか。 いつもならむしろ俺のフォローを入れてくれる広輝に責められたことに少なからずショックを受けたけど、実際広輝の言ってることは正しい。 俺ももっと積極的に意見を出すべきだとは分かってる。だが、……。元々自分の意見を主張することが苦手だということに加え、熱も相まって上手い言葉が出てこない。 「考えてるよ」 「考えてるだけじゃダメだって分かってる? 言葉にしなきゃ意味ないから」 「そんなこと言われなくても分かってる」 「分かってるなら、行動で見せろよ」 誰もがみんなお前みたいに上手に主張出来る人間ばかりじゃないんだ。ムッとして言い返すと、広輝も負けじと言い返してくる。 「まあまあまあまあ。二人ともケンカしないで」 険悪な雰囲気になった俺たちを見かねた泰志が止めに入ったけど、俺たちの言い争いは止まらなかった。 「拓海は意見出すの苦手かもしれないけど、何を考えてるのか教えてくれないと分からない。苦手でも努力してくれないと困る」 「分かってる」 「分かってない。意見出す気がないのなら、ここに居ても無駄だよ。やる気がないなら帰ったら」 無言で立ち上がると、そこに居た広輝以外の全員がぎょっとしたように俺を見てくる。 「え、ちょ、拓海さんマジで帰んの?」 「拓海くん、一回落ち着いて」 泰志やスタッフが止める声が聞こえたけど、振り返らずにドアに手をかける。 ここで帰ったら後日説教だろうが、広輝の言う通り、今の俺がここにいても無意味だ。熱が上がってきて頭もフラフラするし、このままだと何を言い出すか分からない。 「すみません、説教なら後日聞きます。今日は帰らせてください」 「拓海さん!」 それだけ言うと、圭が俺を呼び止める声も無視して部屋を出た。
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