一緒に実家来るか?と圭を誘ったのが二日前。次の日は一日中二人でベッドでダラダラして、深夜になってようやくマンションを出てきた。 年末年始の帰省ラッシュとは微妙に時期もズレてるし、深夜だからかそこまで混んでいない高速を圭と交代で運転して、実家に着いたのがちょうど昼前。 「ただいま」 「お邪魔しまぁす」 玄関の鍵を開けて家に入ると、家族よりも早く二匹のダックスフントが出迎えに来てくれた。 「チョコ、ミルク。元気だったか? 大きくなったな」 先に走ってきた茶色い方の犬・チョコを抱き上げると、圭の足元を嗅ぎ回ってたベージュ色の犬・ミルクを圭が撫でていた。 「この子たちが新しく飼い始めた犬?」 「ああ、お前はこいつらに会うの初めてか。可愛いだろ?」 抱いていたチョコを圭の顔の前にずいっと押しつけると、圭も顔を綻ばせて「可愛いね」とチョコを撫でる。 俺が生まれる前から飼っていたメロが死んでしまってから数年犬は飼っていなかったみたいだが、ちょうど昨年の今頃、知人から生まれたばかりの子犬を譲ってもらったらしい。 俺も実際に会うのはこれで二回目だけど、たまに家族から送られてくる写真にいつも癒されている。 「帰ってたのか、拓海。圭もよく来たな」 玄関で犬たちと戯れていると、様子を見に来た父さんから声をかけられる。 「俺までついて来ちゃってすみません」 「そんなことは気にしなくていい。多い方が賑やかで良いし、圭はうちの家族同然なんだから」 「さすがお父さん」 「さあ、こんなところにいないで二人ともこっちに来なさい」 父さんから促されてリビングに入ると、犬たちもその後を追ってきた。 圭から目配せされたので、「だから言っただろ」と口パクで応える。 急に連れて来たって、圭ならうちの家族が文句を言うことはないんだ。 圭が実家に来ること自体は久しぶりだけど、母さんたちがライブに来てくれた時には何度も顔を合わせているし、食事だって数えきれないくらい一緒に行ったことがある。メンバー全員家族ぐるみの付き合いだけど、特に人懐こい圭のことはうちの親も気に入っていて、息子同然に可愛がっているみたいだ。 他のメンバーはくん付けなのに圭だけ呼び捨てだし、圭も「お父さんお母さん」呼びだし。 リビングに入ると、テーブルの上には大量の寿司やオードブルが並んでいて、それを囲むように母さんと二つ年下の弟の陸、それから陸の嫁の由香ちゃんが座っていた。由香ちゃんの膝の上には、今年で一歳になる空もいる。 「空〜、お前も大きくなったな。 陸たちも帰ってたんだな。大学は?」 「明後日まで休み」 「そうか、ちょうど良かったな」 身を屈め、ぷくぷくほっぺの空をつついていると、陸と圭がハイタッチをかわしていた。 「由香ちゃんも来年度から復学するんだろ?」 「はい、うちの親やお義母さんたちが空を預かってくれるので、甘えさせてもらおうと思うんです」 「そっか。大学も子育てもあって大変だと思うけど、がんばって。由香ちゃんにばかり任せてないで、陸もちゃんとやれよ」 「え〜。俺、今もちゃんとやってるよなぁ。由香?」 「どうだろうねぇ」 「ひどっ」 曖昧に言葉を濁した由香ちゃんに陸は大げさに泣き真似をしていたけど、相変わらず仲良くやっているみたいで安心したよ。 大学入学早々に付き合っていた彼女を妊娠させてしまった困った弟だけど、こんなんでも一応俺の弟だし、空は俺にとっても大事な甥だからな。
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