俺がゲイだってことは絶対に秘密にしておいて

読了目安時間:2分

エピソード:41 / 51

サプライズ

「こういうとこに2人で来るの初めてだね」 「たまにはいいだろ?」 「そうだね。新鮮な感じ」  メインの鴨肉を食べている最中に話しかけられて顔を上げると、圭は穏やかな笑みを浮かべていた。  料理を乗せたワゴンだけがちょうど良い頃合いに廊下に運ばれてくるので、誰とも顔を合わせなくて良いようになっている。  本当は外に食べに来るのは俺はあまり好きじゃないが、圭は外食も好きみたいだし、喜んでもらえてるみたいだから良かった。  家ではいつも2人でいるし、仕事も一緒。  過ごす時間は長いけど、たまにはこういうところに来るのも気分が変わって良いのかもしれないな。  そんなことを思いながら食事をしていると、デザートのチーズケーキが来たので立ち上がる。 「どうしたの? トイレ?」 「お前は先食べてて」  話しかけてくる圭に一声かけてグランドピアノの前まで向かい、ピアノの近くに置かれた椅子を引いて座る。  鍵盤の上に両手を置き、一呼吸置いてから自分で作った曲を弾き始めた。 『たくさんのものを持っているはずなのに 本当にほしいものはいつだって手に入らない あの日僕は一人でも大丈夫だと言ったけれど 本当は君がいないと大丈夫じゃないよ 君はただ一言伝えるだけで良いと言ったけれど それを言葉にすることはどれだけ難しいことだろう』  ピアノは事務所で時々練習してたけど、人前で弾きながら歌うのは初めてだから、上手く歌えているのかは分からない。が、この曲を作った時の気持ちを思い出しながら、それをメロディに乗せて口ずさむ。  入院してた時に作った曲で、俺が初めて作詞作曲した曲。経験のある作曲家の先生に手直しはしてもらったけど、ほぼ原曲そのまま使わせてもらって、ソロライブにも使わせてもらうことができた。  それもマネージャーの藤井さんがこの曲を気に入ってくれて事務所にも掛け合ってくれたおかげだが、この曲を作ることが出来たのは広輝と——それから圭のおかげだと俺は思っている。  気恥ずかしくて顔が見れなかったから、圭がどんな顔をしているのかは分からない。引かれてないといいけど。  康太と話をしてから圭のために何が出来るのか色々考えてみたけど、結局俺にはこんなことぐらいしか思い浮かばなかった。  恋人に喜んでもらえるようなデートプランも思い浮かばないし、どんな言葉で愛を伝えたらいいのかも分からない。  俺に出来るのは、ただ歌うことだけ。

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