トゥーリとヌーッティ Tuuli ja Nuutti

読了目安時間:5分

エピローグ <Epilogi>

 クリスマスが過ぎ、十二月二十六日ボクシング・デーが訪れた。  空高く昇った太陽の輝きが雪で覆われた地上を目映(まばゆ)く照らす頃、アキは机の整頓をしていた。他方、トゥーリとヌーッティはというと、ベッドの上でカードゲームをしていた。難しい顔をして考え込んでいるヌーッティは、無表情のトゥーリに対していささか劣勢のようであった。  ふと、片付けをしているアキの手が止まった。アドベントカレンダーが十二月二十二日以降開けられていなかったからである。 「二人とも、ちょっといい?」  アキは後ろを振り向き、トゥーリとヌーッティに声をかけた。二人と目が合ったアキは、アドベントカレンダーを指でさして尋ねる。 「開けるの忘れてた?」  トゥーリとヌーッティは顔を見合わせ、こくりと頷いた。そして、手にしていたカードをベッドの上に置き、足早に机へ向かうと、天板の上に登った。 「ヌーッティは二十二の箱を開けて。私は二十三の箱を開けるから。二十四の箱は二人で一緒に開ける。いい?」 「いいヌー!」  ヌーッティが二十二日目のギフト箱を開けた。中には、黄色いチョコレートで包まれたバナナ味の丸いラクリッツが一つ入っていた。トゥーリが手にしていた二十三日目の箱の中には薄紫色をしたラズベリー味のラクリッツが一つあった。二人はラクリッツを箱の中に入れたまま、二十四日目の箱を一緒に開けた。そこには小さな紙片が一枚収まっていた。  二人はその紙を取り出すと、紙には謎のメッセージが書かれていた。  ——本の奥とベッドの下にあるものはなにか?  一読したトゥーリとヌーッティは顔をしかめて首を捻った。ややあって、何かに気づくと紙を机に置いて、それぞれ本棚とベッドの下へ向かった。  トゥーリは本棚の一番上の棚へ登ると本を三冊引っ張り出して、それらを隣の本の上に横向きに積んだ。開いた隙間へ、本棚の奥へ入ったトゥーリは女の子の形をしたクッキーを一つ見つける。ベッドの下へ潜ったヌーッティがくまの形のクッキーを一枚発見した。 「これは?」  本棚の奥から出てきたトゥーリはクッキーを掲げて、アキへと尋ねる。  アキは椅子を回転させ、トゥーリとヌーッティの方へ身体を向けると答える。 「『ふしぎなポケット』の使い方は?」  アキからなぞなぞのようなものが出題された。  ヌーッティはクッキーを食べながら考え始めた。トゥーリはクッキーを棚の上に置くと、両腕を胸の前で組み、思案した。  しばらくの間、二人は黙考した。  最初に気づいたのはヌーッティであった。 「トゥーリ! 歌だヌー!」  トゥーリは、はっとして顔を上げる。  二人はきょろきょろと辺りを見回した。そして、あることに気がついた。いつもは掛けられていない二つのポケット付きの服がポールハンガーに掛かっていたのである。  トゥーリとヌーッティはポールハンガーへ走って向かった。  二つのポケットの付いた服がポールハンガーの一番下のフックに掛けられていたこともあり、二人は容易に服のポケットに手が届いた。 「歌、覚えてるよね?」  トゥーリがヌーッティに確認した。 「もちろんだヌー!」  力強く返答したヌーッティの顔を見たトゥーリは一つのポケットをそっと叩いた。  トゥーリはポケットの中に何かが入っている感触を得た。そして、ポケットの中に手を入れて中の物を取り出した。中に入っていた物はポケットティッシュ程の大きさで、赤色の袋でラッピングされていた。袋を結ぶ金色のリボンに紙が付いていた。 「『トゥーリへ』? わたし?」  それを見たヌーッティがもう片方のポケットを叩くと、肉球に物の当たる感覚がした。急いでヌーッティはポケットの中へ手を突っ込み、入っている物を引っ張り出した。 「ヌー宛てだヌー!」  トゥーリが手にしている物と同じサイズで、金色のリボンで緑色の袋口が縛られていた。リボンに付いている紙には「Nuutti(ヌーッティ)」と書かれていた。  椅子から立ち上がったアキは二人の元へ歩み寄り、床にあぐらをかいて座った。  トゥーリとヌーッティが目をきらきらと輝かせ、上目にアキを見つめる。 「開けていいの?」  赤い袋をぎゅっと手にしているトゥーリがアキに尋ねた。 「いいよ。二人のものだから」  柔らかなまなざしをトゥーリとヌーッティへ向けているアキは、優しい口調で答えた。  二人は手に持つそれぞれの袋のリボンを解き、中の物を取り出した。 「すごいヌー!」  ヌーッティの袋に入っていた物は黄色のボディースーツの様なものと白のマントであった。それを見たヌーッティの瞳がさんらんと輝いた。それというのも、最近、ヌーッティがハマっているテレビ番組のヒーローが着ている衣装と同じであったからである。それも、ヌーッティが着られるサイズの服とマントであった。  トゥーリの袋には彼女が(くる)まるのに丁度よい大きさのニット製のブランケットが入っていた。そのカラフルなブランケットを見たトゥーリの頰が紅潮した。 「アキ! アキ! これ、アキが作ったの?!」  興奮しているのか、トゥーリの声はいつになく大きくなっていた。 「そうだよ」  トゥーリの勢いに気押され気味にアキは答えた。 「ヌーのも作ったヌー?!」  続けざまにヌーッティも質問を繰り出す。 「まあね。喜んでくれたらいいなぁと思って」  アキは照れくさそうに頰を掻きながら、二人から視線を逸らした。  返答を聞くと同時に、トゥーリとヌーッティはアキの腕に思いっきり抱きついた。 「ありがとう、アキ!」 「うれしいヌー!」  頰を赤く染め、嬉しさ溢れる瞳をアキに向ける二人は、 「アキ、大好き!」  とびきりの笑顔をアキへ見せた。  こうして、トゥーリとヌーッティのクリスマスは、嬉しい思い出とともに終わったのであった。

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