天つ乙女と毛獣〜舞台は房総半島、天女となりしある少女の運命と絆の物語〜(#あまおと)

読了目安時間:5分

エピソード:83 / 149

【05】横浜市立野毛山動物園で~キジと桃太郎の昔話にはなを咲かせながら

   時刻は11時50分。昼食の時間も近くなり、近くの桜木町やみなとみらいの飲食店では観光客などで賑わいを見せ始めるころである。  場所は変わり、みなとみらい地区から南西方向に進み、桜木町駅を過ぎた先にある日ノ出町・野毛。  かつて日本を話題でさらった売れっ子歌手・美空めじろがこの街をメインに活動していたことで知られている。  その美空めじろの偉業を讃えて設置された銅像近くから少し進んだ先。    急な坂道を6分ほど進んだ辺りに、動物園があった。  野毛山と呼ばれるみなとみらいや横浜の街を見渡す低い丘にあるこの場所は、野毛山動物園と呼ばれており、みなとみらいや桜木町からも近くて気軽に立ち寄ることができため、横浜市民だけではなく観光客にも人気のあるスポットである。  【05】横浜市立野毛山動物園で~キジと桃太郎の昔話にはなを咲かせながらの挿絵1  百合子・紗久良・白竜・紗香の4人は、みなとみらい地区を楽しんだ後、野毛山に続く坂道を進み、この野毛山動物園に足を赴かせた。  一行は入場口より動物園に入り、モニュメントとして置かれた横浜市電の車両や動物園にきた人々を横目に見て坂を下った。  そのとき、 「広瀬さん、シコメ、兄様。ここの動物園ですが、さっき坂の途中にあった図書館にいくついででよく立ち寄っています」  紗香は足をてくてくと歩ませる中、真面目顔にワクワクとした気持ちを浮かべて百合子たちに語りかけた。  これに対して、 「へぇ、そうなんだ」 「豊玉さんって、読書が好きっていっていたけど、動物園にいくのも好きなのね」  百合子と白竜の二人は、それぞれ少し驚いた気持ちを頬という名前のキャンバスへ描き出した上で、紗香に言葉を返した。  百合子や白竜として、紗香が動物園にあまり行かないようなイメージを抱いていたためか、少し驚きを交えた様子を顔に表していた。  そうしていると、 「なぁ、トヨタマ。動物園ってどないなとこなん? おもろいもんでもあるんの」  紗久良は、不思議な表情を浮かべて首を傾げ、紗香に自ら抱いた疑問を投げかけた。  彼女として、生まれて初めて動物園に来たものの、どのような場所かいまちい理解できていなかった。    ゆえに、先に地球の日本に来てその文化や風土を理解している紗香に尋ねたようだ。 「シコメ。動物園はね、キジやタヌキなどの動物を公園っていう広場の中でまとめて見て回ることのできる場所なの。だから、わざわざ森や雑木林に行かなくてもここにくれば気軽に動物と触れ合えるの」  紗香は、生真面目さ漂う面持ちながら目のまなざしや口調に優しさあふれる気持ちを宿らせ、紗久良に答えた。  それに対し、 「トヨタマ。話聞いてる限りやと、動物と触れ合えるおもろいところなんやね」  紗久良は、幼さ漂う面構えににっこりとした明るい表情を表して紗香に言葉を返した。  彼女は、動物園がどういうところか頭の中で腑に落ちたかのように理解した上で、動物と触れ合えるという喜びに満ちた気持ちを心の中に抱かせていた。  そして、百合子たちの一行は、入り口から続いていた坂道を過ぎ、鳥類が多く展示されているエリアに足を進ませた。  そこでは、世界に住む鳥類を展示しており、ご飯をよそうへらの形をしたくちばしの鳥のクロツラヘラサギ、ピンク色の身体で一般に名の知られたフラミンゴ、ペンギンなどの多種多様な鳥類が展示されている。  この中には、キジなどの日本に留鳥として生息している身近な鳥も展示されていた。  そのエリアの中を進む最中、紗久良は檻の中に一羽の鳥を見つけて興味津々そうな様子を顔に表して足を止めた。  なお、彼女の目の先に映る鳥は、目の周りが赤色に染まり、身体の色が濃い浅葱色、白・茶の羽根をしていた。  それとともに、 「この鳥、雉鳥や。雑木林に行ったとき、見たことあるねん」  紗久良は、愛くるしさ漂う様子とキラキラとした星を目の中に浮かべて一言つぶやかせた。  彼女として、アマツホシ・ヨモツ国の姫・シコメだったとき、侍女として仕えていたトヨタマと雑木林に遊びに行き、草むらの中で見つけて触れ合った野生の雉鳥。つまり地球でいうキジとの記憶を思い出し、目の前の檻にいる鳥をキジと察しとった。 「シコメ、そうね。懐かしいわね」  トヨタマもまた明るい喜色に満ちた面持ちで足を止め、紗久良の顔を見つめながら言葉をかけた。  続けて、 「紗久良ちゃん。アマツホシでもキジの言い伝えがあるけど、日本では桃太郎や古事記などでもキジの話が出てくる。それくらいキジは僕たちにとって身近な鳥なんだよ」  白竜は、真面目で裏表のない優しい表情を顔に描き出し、アマツホシと日本で語り継がれるキジにまつわる話を紗久良に語った。  これに対し、 「秋山はん、キジの出てきはる話してたやん。ほんで、そのキジの話に出てきてた桃太郎って、どないもんなん?」  紗久良は、幾つもの疑問符を頭の上に浮かばせ、首を左右に傾げる仕草も交えながら白竜に尋ねかけた。  彼女は、キジの登場する桃太郎の話の内容がとても気になり、それを詳しく知りたいと思って彼に尋ねたようである。 「紗久良ちゃん。桃太郎はね、川を流れていた桃をあるお婆さんが拾ったことから始まる話だよ」  白竜は、小学校のころに漫画で読んだ桃太郎の冒頭の内容をおぼろげに思い出し、淡々とした語りで紗久良に話した。 「紗久良。それで、桃を拾ったお婆さんは、家に帰ってお爺さんと包丁で桃を切ったの。すると、桃の中から小さい男の子が現れてお爺さんとお婆さんは驚いたそうだわ。そして、その子は桃から生まれた男の子だから桃太郎って名付けられ、強い男の子として育って鬼ヶ島に行くことになるの」  姉の百合子が明るげな表情と語りを交え、妹・紗久良にあらすじの続きを語った。 「シコメ。桃太郎はね鬼ヶ島に行く途中でイヌ・サル、そしてキジをお供として従えた。それで、鬼ヶ島に行って鬼を倒し、お婆さんやお爺さんの元に戻ってくる昔話なの」  紗香も百合子に続いて、桃太郎のあらすじのうち、最後の部分を一言づつ丁寧さ感じさせる口調で紗久良に語った。 「お姉さま・秋山はん・トヨタマ、おおきに。桃太郎って、そないな話なんやね。うちらすばるの同盟が桃太郎とその仲間で、鬼ヶ島の鬼がヨモツの奴らのように思えるねん」  紗久良は、にこにことしたあどけなさ漂う面持ちや腑に落ちたと思える語りを交えて百合子たちに言葉を返していた。  

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