天つ乙女と毛獣〜舞台は房総半島、天女となりしある少女の運命と絆の物語〜(#あまおと)

読了目安時間:4分

エピソード:81 / 149

【03】血を分けし4人で、おもひでを胸にいだきながら

 時刻は8時30分。  【03】血を分けし4人で、おもひでを胸にいだきながらの挿絵1  場所は変わり、横浜駅から南東方向に進んだ先にある元町・中華街駅。  駅の名にある通り、かつて異人(外国人)が住んでいた異国情緒の漂う町並みのある元町。  川を隔てた先にある中華の料理や雑貨などを扱うお店が立ち並ぶ横浜中華街。  さらに、デートスポットとしても有名な山下公園にも近い所である。  百合子たち一同は、元町・中華街駅で電車を降りて最初に中華街を目指すこととした。  百合子・紗久良・白竜・紗香らは、まだ朝食を食べていないため、中華料理屋に入り、各々で語らいを交えながら昔話や近況の報告をすることになった。  まず、プランを計画した百合子・紗久良の二人が予め用意した中華街の案内図をもとにして先導し、白竜・紗香の兄妹が後を追う形で足を進ませた。  4人は、元町・中華街駅より地下道を進み、中華街の入り口となる朝陽門を過ぎて中華街に入り、その門の10軒先にある中華料理屋に入った。  お店に入り、円卓を取り囲む形で百合子・白竜・紗久良・紗香の順に席に座り、オーダーをとった。  まず、百合子・紗久良の姉妹は、中華丼。  次に、白竜は四川麻婆豆腐定食。  最後に、紗香は野菜がたっぷりのった酢豚定食を注文していた。  お店に入ってからおよそ15分ほどオーダーした料理がテーブルの上に並べられた。  これと共に、 「いただきます」  百合子・紗久良・白竜・紗香の4人は、各々に手と手を合わせて食事前のかけ声をした。  それは、まるですばる王朝が存在していた頃、ヤカミ妃やヌナカワノメたちと食事をとっていた家族団欒の風景を思い起こさせるものであった。  そして、百合子たち4人は、箸を片手に持って配膳された料理を口に運びながら、語らいを始めた。  まず、 「トヨタマ、僕がゆりちゃんと地球に行ってからどうしていたの。あと、お父さんとお母さんは元気でいるの?」  白竜が首を斜めに傾げる仕草を交え、紗香に尋ねかけた。  彼として、タキリ姫こと百合子と共に地球に送り出された後のアマツホシや実の家族の出来事を見聞きすることなく育ったため、それを知るであろう妹の紗香に尋ねたようだ。  それに対し、 「兄様。姫様や兄様を送り出した後、イチキが突然ヨモツに寝返ってミタマの妃・クイーンとなり、私や伯母様・お父様・お母様はハイドやクイーン・ミタマらに捕縛され、長い間牢屋の中で眠らされていました」  紗香は、一時だけ目に力を入れて覚えている記憶を整理した上で、自らが見て経験した出来事を淡々とした語りで兄の白竜や百合子・紗久良らに語った。 「トヨタマ、僕やゆりちゃんがいない間、大変なことにあっていたんだね」  白竜もまた、苦をねぎらうかのような表情や語りを交えて紗香に言葉をかけた。  同じ父母の血を分け合った兄妹の兄として、妹を心配し気遣う様子が漂っていた。 「前に言っていたけど、そういうことがあったのね」  百合子は、彼女の話していた内容を脳裏に思い出しつつ、腑に落ちたと思える様子で頭の上に言葉を浮かべていた。  続けて、 「その後、ミタマが生まれたばかりのシコメ(紗久良)の召使いや侍女を求めていたから、お母様やお父様方とそこで仕えることになったの」 「でもね、4年くらいヨモツ国にいて、あくどいことをしている事実に嫌気がさして、命かながら今いるあめふり国に亡命したの。そのとき、お母様はハイドやミタマたちの注意を引き寄せる身代わりとなったのだけど、ミタマに反逆者だと言いがかりをつけられ、しまいには八つ裂きにされたの」  紗香は今にも溢れそうな涙や悲しみの気持ちをぐっとこらえ、出来事そのものを包み隠すことなく白竜に語った。  それはヨモツ国にいて紗久良ことシコメ姫の召使いとして仕えていた話からヨモツ国の行う悪事に耐えかねてあめふり国に逃げることなどの内容であった。 「トヨタマ、僕たちがいないばかりにつらい思いをさせてしまったのね」 「ごめんなさい」  白竜はふと頭を下げ、心のうちに申し訳ない思いを宿らせて紗香に語りかけた。  これに対して、 「兄様、謝らなくてもいいです。むしろ、悲しい事・厳しい事や楽しい事をお母様やお父様、あのひとと共に多く経験したからこそ、私は強くなれたと思っています」  紗香は、一点の曇りのない生真面目な表情を顔に描き出し、白竜に言葉を返した。  次に、 「秋山はん。ヨモツにいてたとき、トヨタマたちが親身に面倒見てくれてたからいまの心優しいうちがあるんやと思うてるやさかい。悲観的に考えるんよりも、前向いて物事考えた方がええで」  紗久良は、眼差しの中に優しさ漂う気持ちを抱かせ、白竜に対して励ます言葉をかけた。 「トヨタマ・紗久良ちゃん、ありがとう」  白竜は、心の奥に抱いていたやるせない気持ちを忘れ、嬉しさ満ちる笑みを顔に表して紗香や紗久良たちに言葉をかけていたのだ。

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