ギルドマスターをやっていた整備士だが、ギルドを追放されてしまったので、また一から作ろうと思う。

読了目安時間:4分

第24話 第二階層

「う、うわぁ……っ!」 「すっごい……何よ、これ……。」  二階層に降りた二人の目に飛び込んできたのは、幻想的な風景だった。  床や柱の一部が青白く光っており、遺跡内部をやわらかく照らしているのだ。  その光は呼吸をするように強弱を繰り返し、まるで遺跡全体が生きているような錯覚を感じさせる。 「なかなか綺麗だろう。遺跡の夜空、なんて呼ばれている。」 「遺跡の……」 「夜空……」  エトとリーシャは、見事にこの風景に心を奪われているようだ。  これだけ驚いてくれると、言わなかった甲斐があるというものだ。 「これ……何が光ってるんですか?」 「ああ、これはヒカリゴケっていう、魔力で発光する植物なんだ。」  光っている苔を一つかみ、手に取って見せる。 「へええ、初めてみたわ……。」 「あ、なんか小さい光の粒みたいなのが飛んでいきましたよ。」 「そっちはヒカリムシだな。ヒカリゴケを食べてるから、その影響で光ってるんだ。ほら、よく見るとそこら中にいるだろう?」  目が慣れてくると、大きな光の間を小さな光の粒がいくつも行き来して、複雑な線を空中に描く様子が見えてくる。  エトとリーシャは、再び息を飲んだ。 「キュィ~……。」  シロもロルフの肩で、溜息のような鳴き声を漏らす。 「ふふ、シロちゃんも、綺麗って思うんだね。」 「コイツに分かるのかしら。まあ……綺麗なのは確かだけどね。」 「キュィ!」  ロルフは微笑んだ。  遊びに来たわけでは無いが、こういった一幕があるというのは、いいものだ。 「ちなみに、このヒカリゴケは自生してるわけじゃなく、冒険者が置いていったものが繁殖したものでな。探索が終わった目印として、進んだ道に置いていくのが通例になっているんだ。これが湿気を吸うとかカビを抑制するとかで、意外と遺跡の保存にも役立つらしく――」 「……なんかロルフが説明すると、神秘性が下がるわね。」 「あはは……べ、勉強にはなるよ?」 「キュ~ィ。」  三人と一匹は、少しの間、その景色を楽しんだ。 +++ 「……うん、これで最後みたいね。」  リーシャが杖を降ろしたのを見て、エトも肩の力を緩めた。 「ふぅ、沢山いたねぇ。ちょっと疲れたよ~。」  ロルフの言っていた通り、二階層がメインの巣だったようで、上の階層の三倍ほどの魔物が潜んでいた。  正直、この量は自分一人では、とても捌ききれた気がしない。  リーシャと目を合わせると、彼女は少し意地悪な笑みを見せた。 「やるじゃない、エト。これでちょっと疲れただけなんて。」 「そ、そういう意味じゃないよ~!」  手を振って否定するが、実際のところ、倒した敵の数に見合った疲れは感じていなかった。  考えてみれば、今まで一番体力を使っていたのは、敵にトドメを刺すときだ。  今回はその一切をリーシャがやってくれたわけなので、体力も集中力も温存することができたのだ。  一方で、その余裕もあって、リーシャの方には一匹の魔物も通さないように立ち回ることができた。  もちろん魔法の援護があってのことだが、自分の力が発揮できて、役に立てたという実感がある。  このパーティーでの戦いは、なんだか、とても心地いい。 「二人とも、よくやったな。今回のクエストも見事に達成だ。」 「キューーイ!」  声に目を向けると、ロルフが魔石の詰まった袋を掲げて、こちらに歩いてきていた。  その右肩には、嬉しそうに翼を広げたシロが乗っている。 「えへへ、リーシャちゃんのおかげですよ。」 「な、何言ってるのよ。ほとんどエトの功績でしょ。」 「えーっ! そんなことないよ、リーシャちゃんの魔法だってば!」 「そ……そもそも、私はBランクパーティーだったんだから、これくらい普通なのよ。エトはCランクだったんだから、そっちのほうが凄いの!」 「え、ええー……? そう……なるかなぁ……?」  そんな二人の言い合いに、ロルフがぷっと噴き出した。 「ははは、両方凄いに決まってるだろ。そもそもBランクパーティーでも難しいから、今まで誰も受けなかったんだ。二人とも、もっと自信を持っていいんだぞ。」 「あ……。」  その言葉に、じわじわと嬉しさがこみあげてくる。  つい顔がほころんでしまい、なんとなく恥ずかしくて、思わず下を向いた。  横目に見えるリーシャも、同じく俯いているので、きっと同じような気持ちなのだろう。 「キュイキューイ!!」  そんな自分の胸に向かって、シロが飛び込んできた。 「きゃっ、もう、シロちゃん、びっくりするでしょー?」 「はは、やっぱりシロは、エトがいいみたいだな。」 「はあ、エトもロルフも、シロいのを甘やかしすぎ――」  そこで、リーシャは言葉を止めた。  いや、正確には、三人とも言葉を失った。  なぜか突然、シロの体が、白く光り始めたからだ。 「え……?」 「キュ?」  足元の床に描かれていた幾何学的な模様に、青白い光の線が走る。  それは瞬く間に床一面を覆い、更に輝きを増した。  シロの体の光は、それに呼応するように強くなっていき―― 「……っ、シロいの! エトっ!!」  リーシャが叫びながら、手を伸ばす。  それを取ろうと伸ばしかけた腕が、光の渦に飲み込まれていく。  そして遂には――何も見えなくなった。

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