ギルドマスターをやっていた整備士だが、ギルドを追放されてしまったので、また一から作ろうと思う。

読了目安時間:5分

第23話 第一階層

「えーいっ!」 「そこっ!」  ロルフ一行は、順調に遺跡内を進んでいた。  情報通り、遺跡内にはほぼケーブバットとオオガネムシしかおらず、飛んでくる魔物をエトが叩き落とし、リーシャが魔法でトドメを刺すという連携で、それらはみるみる焼き上げられていく。 「う~ん、見事なもんだな。」 「キューィー。」  コゲた魔物から手際よく魔石を回収しながら、二人の後を追う。  シロはそんなロルフの肩に止まっていた。  普段はエトにくっついているのだが、今回は邪魔にならないよう、配慮しているのだろう。これで意外と、頭が良いのかもしれない。  ……単に安全なところに避難しているだけかもしれないが。  そうして進んでいると、通路の先に、下へと伸びる階段が見つかった。  次の階層への入口だ。 「攻撃も止みましたし、この階層はこれで終わりですねっ。」 「拍子抜けするくらい弱いわね~。これで本当にBランクなの?」  エトもリーシャも、まだまだ余裕があるといった様子だ。  まったく、末恐ろしい二人組である。 「はは、普通はこう簡単にはいかないぞ。この狭さじゃ三人以上のパーティーはまともに連携できないし、こんな薄暗い通路で正確な魔法が撃てる魔導士なんて、滅多にいないからな。」  ロルフはそう言って笑った。  はっきり言ってこのクエストは、簡単なものではない。  当たり前のことだが、暗く狭い場所というのは、後衛職と極めて相性が悪い。前衛だけのパーティーなど存在しないので、この手のクエストは、そもそもパーティーと相性が悪いと言える。  さらに言うと、ケーブバットは飛行しているため、近接職では捉えにくく、オオガネムシの体は刃を通しにくいので、できれば魔法で仕留めたい相手だ。  近接職が苦手な魔物が、遠距離の苦手な場所に、数多くいる。  そんな困ったクエストが、この二つのBランククエストなのだ。 「さっすが、リーシャちゃんですね♪」 「そ、そんなことないわよ。私は落っこちたのを撃ってるだけなんだから、エトのほうが……。」 「えへへ。ありがとう、でも倒してるのは全部リーシャちゃんだもん。流石だよ~。」 「う、うう……。」  さて、その点、この微笑ましいパーティーはどうか。  まずそもそも、エトが閉所に異様に強い。壁蹴りや跳躍を交えて攻撃するエトの攻撃は、飛行する敵をもたやすく捉えることができる。  一方で一撃の威力は低く、致命打には至らないが、そこをリーシャの魔法が追撃する。射線を塞ぎにくいエトの立体的な立ち回りと、正確なリーシャの高速魔法が可能にする、極めて特殊な連携だ。  ようするに、二人の相性が非常に良く、さらに二人とこのクエストの相性が、抜群に良いというわけなのだ。 「だが、本番はここからだぞ。二階層目は一階層目よりも広くなるからな。魔物の数も増えるはずだ。」 「そ、そうですよね。頑張ります……っ!」 「ふん、こんなのが増えたって、楽勝よ。」  二人の顔に少し緊張の色が戻る。  あまりガチガチになるのは良くないが、油断も禁物だ。  褒めちぎるのは、後にとっておくとしよう。 「それにしても……地下のほうが広いなんて、不思議な造りの建物ね。」 「確かに……普通、逆だもんね。不便じゃなかったのかなぁ。」 「ん? それは違うぞ。」  え、と声を漏らしながら、エトもリーシャもこちらを向いた。 「まず、遺跡っていうのは、そもそも地下に造られたわけじゃないんだ。」 「ええ……じゃあどうして今、地下にあるんですか?」 「こんな大きいのが、地面に沈んだってこと……?」 「この辺はまだ仮説なんだが、大昔にすさまじい大洪水があって、当時の文明が丸ごと土砂に埋まったと言われている。それを掘り出したのが、今の遺跡ってわけだな。」  この辺りは、歴史マニアだったアインという男の受け売りだ。  聞いてもいないのにペラペラと喋るから、遂には覚えてしまったのだ。 「それと、地下のほうが広いのが、どう関係あるのよ?」 「はは、じゃあ質問だ。俺たちはこの建物に、どこから入ってきたと思う?」 「どこって……そりゃ入口から……」  そこまで言って、リーシャははっと顔を上げた。 「そっか……! ここが最上階なのね!」 「その通り。サボン第七遺跡は二階層遺跡だから、今いるのが建物の二階部分。この下にあるのが一階部分ってわけだ。」  これは、ほぼすべての遺跡に同じことが言える。  下層が崩れて小さくなっているパターンもあるが、大抵の場合は一階層降りるたび、二倍程度の広さになる。  三階層遺跡や四階層遺跡の最下層は、とんでもない広さになるのだ。 「な、なるほどぉ……だからあの入口も、あんまり入口っぽくなかったんですね。」 「ああ。掘り出した最上階の壁に、穴をあけただけだからな。」 「キュゥキュゥ。」  なぜかシロも頷いているが、ともかくみんな納得してくれたようだ。  遺跡の攻略に必要な情報……というわけではないが、こういった知識は思わぬ形で役に立ったりするものだ。知っておいて損はないだろう。 「よし。じゃあ、仕組みもわかったところで、二階層に向かうとするか。」 「あ! 待ってください、ロルフさん!」  階段に向かうロルフを、エトが呼び止める。  見ると、リーシャも少し、不安げな顔をしていた。 「この階は若干光が入ってましたけど……この下って、光が届きませんよね。」 「そうよ、どうやって進むのよ。ランタンとかあるんじゃないの?」 「ああ、それは――」  その問いに答えようとして、ロルフはふと、口を止めた。  もちろん、考えはある。あるのだが――  ロルフはその答えの代わりに、にやりと笑って見せた。 「ふふふ、それは……見てのお楽しみだな。」  エトとリーシャは、不思議そうに顔を見合わせた。

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