ギルドマスターをやっていた整備士だが、ギルドを追放されてしまったので、また一から作ろうと思う。

読了目安時間:4分

第18話 パーティー結成

 パーティーを組む目的について、火力の底上げだと考える冒険者は多いが、それは正解とは言えない。  その真価は、『弱点をカバーし合える』という点にこそある。  例えば、近接職は目の前の敵に集中する必要があるため、背後からの攻撃に弱い。  一方で、遠距離職は視野を広く持てるが、接近されると不利になる。  この両者がパーティーを組むことで、前衛は背後を気にせず前方の敵に集中できるようになり、後衛は接近されるリスクが下がり更に広い視野で戦えるようになる。  そうして視野の広がった後衛が前衛に状況を伝えることで、前衛はより確実に敵を引き留められるようになり、後衛はより安全にサポートができるようになるのだ。  秀でている個所を足すのではなく、欠けている部分を埋める。  特定のケースに特化するのではなく、対応可能な状況を増やす。  これこそが、常に不安定な環境で戦う冒険者において、最も重要な意識なのだ。  その点において、エトとリーシャは極めて相性がよかった。 「いいわ、エト、離れて!」 「うんっ!」  エトが避けた瞬間に、リーシャが魔法を叩き込む。  最後のオオガエルが、こんがりと焼きあがった。 「やったね、リーシャちゃん!」 「まぁね。このくらい楽勝よ。」  二人がハイタッチするのをみて、ロルフは深く頷いた。  見事な連携だ。  エトは近接戦闘に関して、『引きつけて回避する』という動きを得意とする。  しかしその動作は常に高い集中力を必要とするため、他の魔物の乱入など、意識外の出来事への対応がどうしても遅れてしまう。  ロルフが常にクエストに同行していたのは、そういった危険を外から察知して伝えるためだったのだが、リーシャはその弱点を補って余りある能力を持っていた。 「うーむ、すごいな。状況判断が早いし、情報共有も的確だ。よく目が届いてる。」 「そ、それくらい当然よ。私は後衛なんだから……。」 「いや、ただ後衛やってただけじゃ、普通そこまで身につかないぞ。大したもんだ。」 「うんうんっ、リーシャちゃん、すごいよー!」 「う、うう……。」  褒められ慣れてないのか、リーシャは恥ずかしそうに俯いてしまった。  しかし、これは別におだてているわけではない。  視野が広いというのと、状況判断ができるというのは、全く別の技術だ。  これほどの能力を持っているということは、おそらく今までのパーティーでも、司令塔の役割をしていたのではないだろうか。  もしくは、よほど目を離せない、危なっかしいパーティーだったか……。 「で、でも、武器のこともあるわ。整備だけで、こんなことになるなんて……。」  リーシャは杖を引き寄せて、まじまじと見た。  今回リーシャの杖は、出力をそのまま使うのでは無く、発動の時間短縮に利用するように調整してある。  強力な魔法は決定打になり得るが、味方を巻き込んでしまうリスクがあるため、パーティー向けに方針を変えたのだ。  結果的にそれが本人の性格にも合っていたらしく、小刻みな魔法攻撃で敵の意識を撹乱し、常にエトの動きやすい環境を作り出していた。 「ははは、その杖を他の奴に渡したって、こうはならないぞ。リーシャの魔力量のなせるわざだな。」 「そっ、それだけじゃ納得いかないわよ! ちょっと使いやすくなりました……ってレベルじゃないんだけど!」 「そうなんですよね……。ロルフさんの整備って、もう整備の域を超えちゃってるというか……。」  ずずいと詰め寄ってくるリーシャの横で、エトがこくこくと頷いている。  そういわれても、普通に整備しているだけなんだけどな。  この二人の元ギルドは、よほど武器の整備に無頓着だったらしい。  こんな才能の塊を、よくもまぁ錆びつかせていたものだ。  どう説明したものかと考えていたら、目の前のリーシャの顔色が変わった。 「……っ! エト! ロルフ!」  突然、リーシャが叫ぶ。  その視線の先を追うと、川の向こう、林の先に、赤い影が揺らめくのが見えた。  それは、巨大な深紅の熊だった。 「お、大きい……!」 「まずいな……。なんで、こんな場所に……。」  ――『ブラッドグリズリー』。  深紅の毛皮と巨大な爪を持つ、巨大な熊型の魔物だ。  性格は凶暴で、目に入ったものを見境なく襲い、捕食する。  通常は森の深部に生息していて、こんな川辺にまで出てくることは無いのだが、あまり頭のいい魔物ではないため、迷って森から出てきてしまったのかもしれない。  その単体討伐ランクは、Bだ。 「エト……、リーシャ……。」  ロルフは、二人の方を見た。  当然Cランクパーティーで出くわした場合、即時撤退すべき相手だ。  幸い、この魔物はそこまで足が速くないし、距離もある。  今回のクエストの戦利品を諦めれば、逃げることはできるだろう。  だが――。 「……いけそうか?(・・・・・・)」  二人は、緊張した表情ながらも、笑って頷いた。  リーシャが勢い良く杖を構え、魔物のほうを指す。 「聞かれるまでも無いわ。せっかくクエスト達成したんだもの。あんな熊にやるもんですか。」  エトはリーシャの顔をちらりと見て、一歩踏み出した。  その両手には、しっかりと双剣が握られている。 「あはは……怖くないって言うと、嘘になりますけど……。今は、一人じゃないですから。大丈夫って、思っちゃいますよね。」  二人の背中を見ながら、ロルフは再び、深く頷いた。  この二人なら、やれる。  そう確信するほどに――このパーティーは、強かった。

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