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怖い話

 夜も更ける頃、家に帰るのに自転車で二人乗りをしていた。  僕は自転車を漕ぎ、彼女は後ろでお姫様座りで横を向いていた。  夜の静かな上り道を、サビの音が微かに聴こえるママチャリで進んでいたのだ。  そして丁度、丁字路のところにある電柱に付いた街灯の下を通った時だった。  ビュウッと一陣の風が吹いた。  春先とはいえ夜は少し冷える。  少し震えると、彼女が僕の腰に腕を巻き付けて力を込めて捕まった。  柔らかい肌と温もりが服の上からでも伝わってくるようで、心が少しだけ高鳴るのが分かった。  「あ、あのさ……」  僕は少し照れてしまって、この嬉しさを言葉にできず、そして彼女も何も言わなかった。  すると突然、ドサッと何かが落ちた音がした。  彼女がカバンでも落としてしまったのかと急ブレーキをかけた。  「カバン、落としたの?」  僕は問いかけた。  しかし、彼女は反応して来ない。どうしたのかと後ろを振り返った時だった。  僕は躊躇わず彼女に口付けをした。  まだ柔らかく温かい感触がした。

解説(いるかな…) * かまいたちという妖怪を知っているでしょうか? 風に乗って人を切り裂く妖怪ですね。 今回の題材はかまいたちでした。 「一陣の風」という表現がありますが、あの時点で彼女は上半身と下半身を分けるように切り裂かれました。 しかし、かまいたちの鎌で斬られても痛みは無いんですね。 だから彼女は何も言葉を発しなかったんです。 そして斬られた衝撃で体が自転車から落ちるのを防ごうと咄嗟に彼氏の腰を掴んだのですが、下半身は自転車に揺られる衝撃から……。 いかがだったでしょうか。 夜道を自転車で二人乗りする際は気を付けてくださいね。

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