最近、地球外部門の副主任の行動は目に余る物がある。いくら断っても我らに変な思想を押し付けてくる。実害を訴えるメンバーもちらほら現れた。近いうちに何かしら上が対処してくれるだろう。それまでの辛抱だ。 ◇ 独立法人外来生命体研究所 地底部門 チームリーダー I 女史からの報告

それはうろん

忘却からの呼び声

「あー!行っちまった!」  小走りでバス停へ向かった俺を尻目に出発したバスは、目立たぬ排気ガスをふかふかと出しながら公道を走りゆく。慌てて時刻表を見るも 「次は……1時間後かよ……。まあ早いほうか……。」  田舎育ちの性か、多少理不尽な時刻表でも仕方ない、といった諦めまじりのため息が自然と出るから不思議だ。 「暑いな……。ったく、何日ぶりだっけ、外に出たの。」  残暑の厳しい昼下がり、俺は飛行機で東京を発ち北九州の実家へと向かっていた。  ――つる。ずる。うろん。  こんな暑い日は、冷たいうろんが恋しい。  ◇  ……6時間ほど前。  プルルル……。  目を覚ましたばかりの俺を、電話のベルが責め立てる。  ーー宗篤(むねあつ)からかな。  重い体を起こして電話の受話器を取る。 「もしもし、宗篤(むねあつ)か?」 『おぉぅ、兄貴か?よく俺だって分かったな?』 「明け方に電話あったからな?」 『俺が?俺、かけてねーけど。』  変な夢を見たあとだ。あの電話も夢の一端だったのだろうと思うことにする。 『あ、それより……。』 「……じいちゃんが……死んだ?」  弟、宗篤(むねあつ)からの電話は祖父の訃報を伝えるものだった。  ◇  今朝がたあんな夢を見たばかりで、祖父の葬儀なんて気乗りはしないのだが、だからといって参加しないというわけには行かない。いや、もしかしたらあの夢はなにかの虫の知らせだったのかもしれない。飛行機の中で、俺はじいちゃんとの思い出を振り返っていた。  ーーつる。ずる。うろん。  じいちゃんが打ったうろん、腹いっぱいに食べたうろん。お土産に貰った乾麺のうろん。優しかったうろん。元気いっぱいなうろん。うろん。うろん。うろん。 「……死んじゃったのかよ、じいちゃん……。」  不意に胸の奥が茹で上がったように熱くなる。零れそうになる涙をこらえて俺は一人俯いたのだった。飛行場を出て、電車を乗り継ぎ、乗り損ねた次のバスが来る頃には、陽の光は午後の優しさを携えていた。村落と駅を巡回する路線バスだが、特段降りる客もいないほど、乗車率は高くない。駅のバス停で乗車するのも俺を含めて3人。一番最初に乗った俺は最後部座席を陣取る。あとから乗る乗客はお互い鑑賞しないような位置に座る。日本人らしい風景というものだ。そんな田舎とはいえ近代化の波はちゃんと押し寄せていて、みな手にはスマホ、耳にはBluetoothイヤホンを装備し、自分の世界に入り込む。その様を後部座席から観察している俺のほうが異常かもしれない。 『次はー、稲庭(いなば)宅前ー。稲庭宅前―。』  目的のバス停をアナウンスされて、停車ボタンを押す。あまりのランドマークの少なさに、自宅の個人宅名を停留所に使われる始末。祖母が亡くなったあと、祖父の介護のために俺の実家は母方の実家に移ったわけだが、思いの外わかりやすくていい。 「お、きたきた、兄貴ー!」  バスを降りるとすぐ目の前の宅地の庭から、弟の宗篤(むねあつ)が大声で俺を呼んだ。親父を早くに亡くした俺たちは、小学生ながら二人で母さんを支えようと誓ったものだ。しかし、俺は自分の夢を追いかけ、実家を宗篤(むねあつ)に押し付けてしまった。本来ならどんな顔をして合えばいいのかわからない。だが、アイツはそんな事をおくびにも出さずに俺と関わってくれる。それがまた俺の心に重くのしかかるのだった。 「遠い所大変だったな、兄貴。」  そういいながら俺の荷物を何も言わずに持つ宗篤。甲斐甲斐しくて驚く。 「いや、お前に比べりゃ大したことないよ。大変だったろ?」 「んー、まあ思ったよりは大変じゃなかったよ。 さあさ、あと小一時間で通夜が始まるから、兄貴も着替えてこっち来てくれよ。」  と言って、家の中のひと部屋を案内してくれた。まるで旅館の一室のように小綺麗でまとまったその部屋は、宗篤の人柄が現れているような気すらする。 「はい、これ兄貴の喪服。」  宗篤はいささかくたびれた喪服を俺に手渡した。 「喪服なら、俺も持ってきてるからいいよ。」  宗篤は首を横に振り、軽く俯いた。 「これ、親父の形見のやつなんだ。今日くらいは、兄貴にこれを来てほしくて……。」  そう言われては宗篤の思いを汲まざるを得ない。俺は親父の形見の喪服を受け取り着替えると、勝手知らない新しい実家をブラブラする。通夜まで、あと30分ほど。もうそろそろ行かねばならない。

歴史的大発見だ!彼らはドリームランドの入り口を知っている。それどころか私達を誘ってくれるのだ。アルデバランのドリームランドへと。もはや、遍く人類が彼らと接触を持つべきだ。 ◇ 独立法人外来生命体研究所 地球外部門 副主任 Oの手記

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