〜クイーン·ザ·セレブレイド〜

読了目安時間:6分

戦場

 銀色の鎧、兜を身に着け騎乗したラバーグの騎兵達が縦横無尽に襲い掛かってくる。  それに対し迎え打つようランクの騎兵に命令するラドルフ、更に続けと後方の兵士も横1列になり続く。 「あ······あっ」  唖然とするロベリーには、剣が、槍が、盾がぶつかり合う音と、馬や人による砂塵。  どうしようもない人間一人の無力感を味わう。  しかし咄嗟に剣を抜く、 「ちいっ!」  跳び込み斬りかかって来たプレナの剣を受け止めたのだ。 「はぁっ、はぁっ」  間一髪自身を守るも息づく間もなく目の前に剣を 振り下ろして来る。  再び剣を受け止め後ろに下がり続けるとプレナも跳び下がった。 「剣は扱えるようだな」  余裕な笑みを浮かべる彼女、 「ま、待ってっ」  左の掌を広げ止める。  ところが瞳孔が開く程に集中していたのが少し落ち着くと周りの争う騎士や兵士の声がどんどん聞こえてくる。  剣か盾かも定かではない金属の当たる響き、馬の鳴き声、相手か味方かも分からない兵達の倒れていく叫び、聴覚がその全てを鮮明に拾い出す。  この世のものとは思えない場、でも口だけを何とか動かし、 「わ、(わたくし)たちが、これ以上争ったら、みなが」  ロベリーの話を訊く耳を持たず左の鞘からもう一本の剣を抜き、 「ファルシオンが、二本?」  戸惑うロベリーは二刀流を相手にした事がないためこれではどう向かって来るのか読めず緊張感が高まっていく。 「いくぞ、はぁっ!」  一方で砂塵は更に増し戦場激しい中、ランク城の騎乗した兵士達が悉く落馬していく、 「なにごとだっ!」  敵兵の剣を受け止めながら状況を確認するラドルフに、 「ラバーグ騎兵の中に弩兵が紛れ込んでいますっ!」  最初に見かけた時はそのような騎兵はいなかったが、実は縦横無尽と見せかけ後方の弩兵を騎兵の後ろへ馬上させていたラバーグの兵。  予期せぬ石弩に動揺するランクの騎兵達、一時後退させ陣形を整える様命令したラドルフに、 「畳み掛けよっ!」  更にラバーグの後方兵士達に追撃を掛けるよう指示を出していたのは、同じく後方でも目立つもう一人の黄緑髪のデナだった。  彼女は攻め立てる姉とは正反対で冷静、そのため姉のプレナはデナに軍の指揮を任せていたのだ。  自軍の様子を見ては的確に進軍、後退させ尚かつ騎兵を軽装にして初めから弩兵を馬上させる事も作戦に組み込んでいた。  その思いもしない柔軟な若者らしい考えにベテランであるラドルフの指揮の虚を付いていく。  このままでは状況はどんどん悪くなってしまうと即座に判断し、降りなさいと一人の味方の騎兵と交代して自分の周りに騎兵を10人付かせラドルフは、 「私に付いて来なさいっ」  声を上げると共に剣を抜き馬を走らせ、部下に護られながら敵騎兵の剣、槍を避けなぎ払う。  厄介な石弩は部下が自分達に向くように仕掛け、そのすきにラドルフは真っ直ぐ標的へと進む。  砂ぼこりでも鋭い目で左右を見渡し姉や自軍の状況を確認しているデナ、僅かな判断のミスが敗北を招きねないと集中しているとそこに馬が、騎兵がこちらに向かって来た。 「やはり来たか、やれっ!」  追い込まれた敵軍の事、そうなれば自分を狙って来ると踏んでいたデナは後衛の弓兵に攻撃するよう命令する。  それを察知し自ら落馬する騎兵だがその馬の真後ろに騎乗したラドルフの姿が、 「なにっ、放てっ!」  しかし間に合わず馬を避け陣形を崩してしまう。  好きを逃さんとばかりに素早く馬から飛び降り着地すると的確な剣で弓兵を斬っていく。  それと付いてきた騎兵が周りの兵と戦い始め、ラドルフはデナと対峙し、 「やはり若い者の指示でしたか、ラバーグ城プレナ王女の双子で妹のクリソプ·ジェ·デナッ!」 「ランク城の騎士団長ラドルフ·ヌー·クラサ」 「その若さで私の名を覚えているとは、どうやら王女の姉とは性格が随分と違いますね」  デナは鞘から剣を抜く、 「顔からはとても剣を扱う様な奴には見えないな」 「フフッ、やさ顔とはよく言われますよ」  そう言うと徐々に顔付きが変わり目に殺気を出す。 「ですが今は、貴女を殺します」 「フッ、私があんたを倒せばラバーグは勝利に、近づく!」 「ご冗談を」  二人の剣が交差する。 「――はあぁぁっ!」 「もうやめてください、プレナ王女っ」  激しく襲い掛かるプレナだが、二刀流をロベリーは片方を剣で受け止め、もう片方の剣を上手く交わしていた。 「ハァ、ハァ、どうやら剣の扱いにも慣れているようだ」 「ハァ、ハァ、これ以上続ければ多くの方が犠牲になってしまいます」  ただ闇雲に斬りかかっては意味が無いとデナは構えを解き自分を落ち着かせていく。  ロベリーも構えを解き落ち着かせると「くっ」また兵達の悲鳴が聞こえ始める。 「聞こえてくる声が辛いか」 「辛いですっ、皆が傷付け合い命を奪い合うなんて、貴女だって」  今にも泣き出しそうな顔をするロベリーにプレナは、 「私に辛さなど、無いっ」 「どうしてっ」 「私にはある、クイーン·ザ·セレブレイドになり国を導く()()がっ!」  突き刺さる言葉。  自分にはプレナ程の()()があるのだろうか、  そんな自身は、なかった······。  互いの国の指揮官が戦い、指示なく争う戦場はデナの代わりに騎士団長ラムールが皆を動かす事で有利に転じ始めていた。 「ランクの騎士団長がデナ様と戦っている好きに崩すのだ」  長髪で細目のベテラン騎士のラムールは相手の重騎兵を華麗な剣さばきで斬っていると、 「やあぁぁっ!」  1人の重騎兵がやってきた。 「むうっ」  ラムールが受け止めたその剣は重く、よく鍛錬された騎士と見抜く、 「我が名はバルディブ·バーナ、ラドルフ様の変わりに私が相手をする」  「ほう、若いのによく鍛えられている。よかろう、私はラムール·サウ·エル、いくぞ!」  はっ、と互いの馬と馬が向かい剣と剣の乱舞が舞う。  バーナは相手の素早い剣でも一撃一撃が軽いと判断、ラムールも当たらねば意味が無い相手の重い剣を絶対に受けぬように交わしながら剣を鎧へ当てていく。  また指示者を欠く両軍は更に混戦する。  それぞれの軍が剣や斧に斬られ、  弓や石弩に射抜かれ、  槍が刺さり倒れる者が増えていく。  そうなれば、  助けを呼ぶ声叫ぶ声、  助けた空きに殺られ、  またその相手に向かって殺りに来る。  荒れ狂う様な戦いになってきて1時間程が経過した頃になると、 「デナ様!」 「うっ強い」  経験に勝るラドルフの剣で防戦一方なデナの鎧は切り傷だらけ、フフッ、と笑みを浮かべより勢いを増してラドルフは攻めていき、 「さあ、どうします!」 「おのれっ!」  キンッ、 「しまったっ!」  デナの剣は手から離れ飛ばされた。  ――説得しながら剣を受けていたロベリーは言葉を発する余裕もなくなっていた。  1度呼気を整えたプレナは彼女が素人では無いと悟り剣の動きを読み取ったため、 「ふんっ!」  対応しきれなくなったロベリーの剣がとうとう宙へと舞い地面に突き刺さる。 「あ······あっ」  蒼白。  次の言葉が浮かぶまでほんの一瞬。    そして自分の中で聞こえた声、  それは『死』。  気付いた足音からはゆっくりとプレナは歩き、 「あたしの勝ちだ。悪いなロベリー王女」 「プレナ、王女」  ロベリーが上を見上げるとプレナのその目は変わらず鋭く冷たいまま。 「これで終わりだ。ランク城は私が引き継ぐ」 「い、いや······待ってっ」 「すまない」  殺る覚悟を決めたかの様に歩く、    ザザッ、    突然と弾かれた剣がプレナの横から飛んできた。  その剣に目を向けた2人の王女だがこの時ロベリーは「え」っとありえない事と思った。  なんと、血相を変えたのはプレナの方でなりふり構わずロベリーから去る。 「プレナさんっ」思わず声を出してしまう。  だが振り向く事なく走り去っていく······。 「終わりですね」  ラドルフはそう告げ、尻もちを付き死を覚悟したデナ。 「死しても私は姉の中で共に生きるっ」 「そうですか、ではお望み通りっ」

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