最底辺にして最強の剣士、天から魔剣が落ちてきたので幼馴染と共に理不尽な世界を打ち崩す〜〜Sランのクソ野郎どもが。てめえらの脳みそ掻き混ぜてやんよ!〜〜

幼馴染にして相棒

 「へぇ、何処からパクってきたの? これ。火消しが大変なんだけど」  三日後、貧民街の適当な空き家で寝泊りしていたアイリスの元に突撃したジニーは自慢げにS階級の剣を見せ付けていた。  「何処でもいいだろ。それより、これは俺のだからな」  「別に盗ったりしないよ、ジニーと一緒にしないでほしいな」  訝しむ彼女に釈然としない。  『きっかけ』を見つけてきたというのに淡白な反応を見せるアイリスに面白くないとジニーは抗議の目を向ける。  「……何でもいいけどさ、開示して見せてよこの剣の『スキル』」  「ちッ、仕方ねえな。見て羨ましくなっても絶対にやらないからな」    念には念を、釘を刺して更に打ち込む。  貧民街の人間など信用してはいけないのだ。  そうしてジニーは、『開示』を頭の中で唱える。   ―――  シャーレイの魔剣 階級 『S―13』 『筋力・極』 『走力・極』 『剣術・極』 『思考加速』 『視界全方位化』 『魔力可視化』 ―――  半透明の文字列が浮遊する。  ドヤ顔のジニーと唖然とするアイリス。  してやったりとジニーは拳を握り締めた。  『走力・極』はジニーのスキルの強化版だし、他のスキル群も剣士としての能力に特化したものだった。  黄金の煌びやかな魔剣。  そしてシャーレイという人名。    ――馬鹿め。  あり得ない話だが、Aランク以上の選ばれし人間しか住まう事が出来ない塔――『天人塔(シス・ラダ)』からあろう事か地上に武器を落とした愚か者がいるらしい。  ジニーは嘲笑する。  これで奴らに勝てる――と。  「ジニー……分かってるの? これがあれば――奴らに攻撃が届く」  「ああ、こいつは鍵そのものだ」    階級(ランク)には決定的な差別的要素がある。  スキルの差とかそういう次元ではない。  下位の者の攻撃は一切合切通用しないのだ。  これはモノからヒト、ヒト対ヒト、ひいてはヒトからモノに対しても同様。  例えば、Cランクの紙をDランクの刃では斬り裂けないし、Dランクの銃弾がCランクの人間のこめかみに命中したとしても傷一つつくことはない。  その逆も然り、ランク上で勝っているのなら人間が鋼鉄を拳で貫く事すら可能。  全てが階級(ランク)によって決まる世界。  何時からこのシステムが定められたのかは分かっていないが、選ばれし人間達が大陸の中央に巨大な塔を建て、神の真似事を始めるのはある意味当然だろう。  人間とは根本的に差別が好きなのだ。  性質が悪い事に、ランクは遺伝する。  つまり弱者は弱者を産み落とす。  この性質は非常に操縦しやすく、あっという間に区画整理が完了した。  「ジニー?」  「どうした」  「気持ち悪いよ。また笑ってる」  「あ?」  アイリスが擦り寄りジニーの口元を指差す。この際、布一枚の衣服を羽織っているだけなので、柔らかい二つの球がジニーの視界に入るが微塵も動揺する事はない。  ジニーは気にも留めないし、彼女もまた然り。  幼馴染にして、ただの相棒(・・)。  互いに利用し合うのは、互いの強さを認めているからだ。  「お前こそ臭うぞ、ちゃんと体拭いてるか?」  「なッ、そんなわけ――」  と言いつつアイリスは俊敏に距離を取る。  この二人の喧嘩は本気の殺し合いに発展するので、実は今のやり取りはかなり危険だったりする。  じゃり。  外で土を踏む音がした。  いち早く察知したアイリスはグッと堪えて話を進める。  「あなたに見つけられてあげたのには理由があります。それは何ででしょう?」  彼女は怒りが多分に含まれた微笑みを見せる。  「戦利品でも手に入れたのか?」  皮肉混じりの台詞に気づく事なくジニーは興味津々に問い返した。  アイリスは小さく舌打ちをして続ける。  「違うよ?」  がちゃ。  ぎぎぎと、立て付けの悪い扉が開く音がした。  複数人の男が入ってくる。  狭い室内。  逃亡は可能だったが、それを選択せずに男達と鉢合わせることにした。  「『E―1890』と『E―1960』だな。どっちかでいい、ついて来い」  黒い眼鏡に黒スーツの男が一人前に出て、用件も何も話さずに胸元の階級だけを見せた。  Bランクと記されたそれと彼の風貌は、この男が貧民街を取り締まる警備隊と呼ばれる組織の一員である事を示している。  「ジニー……分かってる?。うん、貴方なら大丈夫。頼んだよ」  「ん? ああ、よく分かんねえが。行ってくるわ」  ジニーは男の前でくるりと一回転する。  何も持っていない。  それを見せ付ける為だ。    「よし、問題ないな。行くぞ」    用が済んだ男達は服に付着した埃を払い落とした後ジニーを連行して去って行く。  ぽつんと残されたアイリスはくつくつと笑い――  「上手くやってよ、ほんとに」  まるで散歩に行くかのような軽い足取りでぼろ家を出たのだった。

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