クロスウィル 渇望のディエンド

お待たせ致しました、さつきクロトです<(_ _*)> 今回も皆様に楽しんで読んでいただけると、嬉しい限りです。 本日の注目ポイント! もちろん、戦闘描写や心情描写は注目して欲しいですが! 今回は、大輝に注目して読んでいただけると、更なるリアリティを味わえるかと思います。 それでは、本編をどうぞ!

第二十三話 喰うか、喰われるか

 雷を纏った熊の動きに注意しつつ、大輝は――――目の前の敵を殺すため、凄まじい速度で思考を働かせた。  リミッターを解除した大輝の思考速度は、通常時よりも数倍早くなっており、更には並列思考をも可能としている。 「グルゥァァァァァ!!」  再び、雷が鳴り響くと――――瞬時に、熊は大輝の背後へと回り込み、鋭利な爪で攻撃を繰り出す。  その、凄まじい速度で繰り出される攻撃を、勘と嗅覚だけを頼りに、大輝は交わし続ける。  すると、大輝が攻撃を避けたと同時に、熊は、体に纏わせていた雷を、周囲へと放電させた。 「グルゥゥゥゥ、グルゥァァァァァ!!」 「ッッッ!?」  大輝は、予想外の攻撃に反応が遅れてしまい、熊の放出した雷を、避ける間もなく浴びてしまう。  雷に身を焼かれ、視界がチカチカと眩む――――だが、大輝の肉体は、以前ほどの激痛を感じることは無く、何とか雷による痛みに耐えられていた。 「調子に乗ってんじゃねぇ!!」  雷を浴びながらも、大輝は熊の顔面へと拳を放つが――――熊はそれを、難なく躱すと、大輝の腕を掴み空高く振り上げ、地面へと叩きつける。  凄まじい速度で、地面へと振り下ろされた大輝は、咄嗟に受け身の態勢を取った。幾度となく、叩きつけられるが、大輝はその衝撃に対して受け身を取り続ける。  幾度となく受け身を取る間に、大輝は、叩きつけられるタイミングを学習していた。そして、何度目かは分からないが、再び地面へと振り下ろされた瞬間――――大輝は両足で着地すると、足へ伝わる衝撃を、まるで踏み込みの様に活かし、逆に熊を地面へと叩きつけた。 「ッラァァァァ!!」 「グルゥァッ!?」  そして、地面へと叩きつけた熊の片腕を、抱きしめるように両手で取ると――――大輝は、全力で捩じり込んだ。  すると、熊の腕からは、ブチブチッという、断裂音が鳴り響く。そして、関節からはゴキッという、鈍い音が虚しく響いた。 「グルァッッッ!?」  あまりの痛みに、熊は大輝を振り払おうと、暴れ始めるが――――大輝は、腕を引き千切らんばかりに、関節の稼働領域とは逆の方向へと、躊躇なく引っ張る。 「グルゥァァァァッッッ!?」  襲い来る痛みに、熊は堪らず叫ぶが、うるさいと言わんばかりに、大輝は容赦なく腕を引っ張って行く。  熊は、このままでは不味いと、本能で感じ取っていた。必死に抵抗しようと試みるが、大輝はそれを許さず、一気に力を込めて引っ張る。 「グルァァァァッッッ!?」  寝技や、関節技と呼ばれる技には、梃子の原理が用いられており――――大輝と熊の体格差や体力差を考えると、現状では最も有効的な手段だった。  少しの力で相手を無傷のまま制することができる関節技、現代では護身術などに多く見られるそれを、全力で掛けられた場合、人体はどうなるのか?  答え、靭帯が断裂し、最悪の場合――――二度と治らないほどの、後遺症を残す。  熊の腕は、まさに今、その状態を体現していた。  大輝は、熊の腕から完全に力が抜けたことを確認すると、その場から跳び退き、熊の様子を窺う。  味わった事の無い痛みに、熊は今にも気を失いそうだったが、沸々と湧き上がる怒りによって、熊は意識を保ち続けていた。 「痛かっただろ? もっと、泣き叫んでくれても構わなかったんだが――――」  熊は、目の前で冷酷な笑みを浮かべている男に、本能的に恐怖心を抱いてしまう。血のように紅く光る、男の瞳を前に、自身の死ぬ姿が脳裏を過る。  力は、自分の方が強いにもかかわらず――――熊の本能は、早く逃げろと警鐘を鳴らす。  だが、やられた仲間の死体を見て、熊は覚悟を決めたように、立ち上がる。 「グルゥァァァァ!!」  自身を鼓舞するように雄叫びを上げると、熊は再び、雷を身に纏い、大輝へと襲い掛かった。  唯一動く左腕で、大輝を引き裂こうと、幾度となく振るい続けるが――――大輝は退屈そうに、その攻撃を躱すと、熊の腹部へと拳を打ち込む。  リミッターを解除した大輝の拳は、深々と熊の腹部へと突き刺さり、熊は堪らず膝をつく。  それを許さないと言わんばかりに、崩れ落ちる熊の顎を蹴り上げ、強制的に立たせる。 「仲間の仇が、目の前に居るんだぞ? もっと、必死になれよ」  冷たい眼差しを、熊へと向けながら、大輝は冷たく吐き捨てるように言い放った。  熊は、怒りを露わにして、大輝へと襲い掛かるが――――腕を振るえば、狙ったように反撃を受け、掴みかかろうにも、近づけば、凄まじい威力の攻撃を浴びせられる。  次第に、熊は自分の首が、徐々に締まっていってる事に気が付く。動きは完全に把握され、近づくことさえままならない。熊には、もはや大輝をを殺すための手段が、何一つ残されてはいなかった。  だが、周囲を見渡すと――――そこに、唯一の希望が転がっていることに気がついてしまう。  そして、熊はその希望へ縋りつこうと、必死に大輝を無視して駆け出した。 「あ? 何処に向かって――――てめぇ、まさかっ!?」  自分の横を通り過ぎて行った熊の行動に、大輝は遅れながら、その意図を理解する。  大輝に背を向ける形になってでも、その希望を手に入れたいと思い、熊は振り返ることもせず、一心不乱に、倒れる白夢へと目掛けて走っていく。  その光景を見て、大輝の脳裏に、走馬灯のように、白夢との思い出が映し出される。それは、数秒後に起きる現実を、大輝自身が予感して、脳が咄嗟に見せたもの。別れを告げるように見せられた、その映像に、大輝は憤りを感じずにはいられない。  倒れ伏す彼女を、盾にしようと考える熊にもそうだが――――走馬灯を見たという事実に、大輝は最も怒りを感じていた。それを見たという事は、自分自身が真っ先に、彼女の死を認めたということに、他ならなかったからだ。 「・・・・・・殺す」  ポツリと呟いた言葉は、誰に対して口に出したものなのか、本人にさえ分からない。  ただ、一つだけ分かることがあるとすれば、それは――――白夢へと害をなそうとする熊を、早急に、殺さなければいけないという、その想いだけ。 (今の俺には、奴らみたいに全身を覆うほどの雷は出せねぇ。追い付くには、前を行く奴よりも、数段早くねぇと駄目だ) 「だったら――――我流、雷迅カラドボルグ」  大輝は、脳から肉体へ送りだす電気信号を、雷による補助を元に加速させ、脳から肉体への信号伝達速度を爆発的に高め、勢いよく走り出した。  リミッターを外した状態で、大輝は尋常じゃないほど、強く地面を踏みしめて駆ける。その尋常じゃない速度に加え、次を踏み出す速度が上がれば、走る速度が上がるのは必然的。  凄まじい速度で熊を追い抜くと、白夢へと続く進路へと、大輝は堂々と立ち塞がる。  熊は、本能的に、希望が転がり落ちていったのを感じとり、悲鳴のように叫びを上げて、大輝へと本能のままに襲い掛かった。  熊の悲痛な叫びに、大輝の瞳が共鳴するかの如く、紅黒い光を放つ。冷酷な表情を浮かべた大輝は、まさに鬼神の如き、猛攻を繰り出す。 「血肉を喰らえ――――我流、ヴァジュラ」  熊が、払い除ける様に攻撃を繰り出すタイミングで、雷を纏った大輝の攻撃が、熊の急所へと襲い掛かった。  大輝の繰り出す怒涛の連撃に、反撃を試みるが――――全ての行動が、繰り出す直前に阻まれる。  そして、的確に急所だけを抉っていく攻撃に、熊は諦めたように抵抗することを止めた。  雷を纏った大輝の拳は、強靭な熊の肉体を、いとも容易く貫通していく。貫かれた箇所からは、大量の血が流れだしているが、大輝は攻撃の手を緩めようとはしない。  だが、既に熊の意識は無くなり、立ち尽くしたまま絶命している。その事実に、大輝は気が付かないまま、湧き上がる感情の赴くままに、何度も攻撃を繰り返す。  少し時は遡る――――。  熊が発した、幾度目かの叫び声で、白夢は目を覚ました。次第に、意識を覚醒させていくと、大輝が戦っていることを思い出し、状況を確認しようと顔を上げる。  そこで見たのは――――顔を、服を、腕を、その全てを、熊の返り血で紅く染め上げ、それでも動かなくなった熊へと、拳を振るい続ける大輝の姿だった。 「だ・・・いき」  凶暴性を露わにして、熊へと襲い掛かる大輝を見て、白夢は思わず表情を青ざめる。  まるで、あの日の噂を体現した様な、大輝の変わり果てた姿に、白夢は堪らず涙を零す。 「この、ままでは・・・・・・大輝が・・・・・・」  必死に起き上がろうとするが、白夢の体は鉛のように重く、思うように動かせない。  それでも白夢は諦めずに、大輝を止めようと、必死に手を伸ばそうとする。 「・・・・・・大輝、大丈夫ですよ。私は、ここに居ます。貴方の傍で、生きています。だから、大輝――――何時もの、貴方に戻って」  涙を流しながら呟いた、白夢の言葉に反応して、大輝の動きがピタリと静止した。  すると、瞳の紅い光は次第に収まっていき、元の黒い瞳へと戻ると――――大輝は、糸が切れた人形のように、その場に倒れこんだ。 「大輝・・・・・・」  白夢は、痛む体を気にも留めず、地面を這って前へと進んでいく。  もう、一人になんてさせない――――どんな時でも傍に、どれだけ変わろうとも、最後まで貴方の傍に・・・・・・。  少しずつ、大輝へと近づき、守る様に抱きしめると――――優しい笑みを浮かべながら、白夢は、静かに意識を失った。  ぽつぽつと降り出した雨が、二人の体を冷たく濡らしていく。  異世界に来て、初めて降った雨の音は――――ただただ虚しく、樹海内へと響き渡る。  大輝が目を覚ますと、世界は気味が悪いほどに、闇で覆われていた。  周囲には何もなく、果てしなく続く闇の中で、大輝は一人で佇んでいた。  見た事の無い風景に、大輝は困惑の表情を浮べながらも、状況を確認すべく、周囲の様子を隈なく調べていく。  だが、そこには、草や石すら存在せず――――どこまでも闇が広がっていることしか、現状では分かりそうにない。 「ここは・・・・・・」  闇の中を、当ても無くブラブラと歩いていると――――どこか、動物の様な姿を模したモノと遭遇する。  大輝は咄嗟に、臨戦態勢へと入るが、生物は、一向に襲ってくる様子を見せない。 『血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ、血肉を喰らえ・・・・・・血肉を喰らうのだ』  まるで、呪詛のように繰り返される言葉が、次第に――――大輝の体を蝕んでいき、今まで感じた事の無い衝動が、大輝の思考を支配していく。  気が付けば、辺り一帯が紅く染まっており、足元には紅く染まった水溜まりが出来ていた。 「一体、何なんだ・・・・・・」  大輝が後ずさる様に、足を動かすと――――コツンッ、と足に何かが接触する。大輝は、確かめるように、視線を落とすと、そこには――――人の死体があった。 「なッッッ!?」  次第に、足元からは大量の死体が浮かび上がってくる。大輝は、足元の水溜まりが、血で出来たものだと気づき、思わず目を見開いた。 『喰らえ、喰らうんだ。全てを喰らえ、血肉を求めろ』  聞こえてくる声と共に、体の中で何かが渇いていく。足元の紅い液体を見ると、思わず生唾を飲んでしまう、今にも顔を近づけ啜りたいと本能が訴えかける。  プカプカと浮かぶ死体を見れば、無意識のうちに喉が鳴る。美味そう――――そんな言葉が、脳裏を過り始めた。 「違う、違う、違う、違う、違う!! 俺は、人間だッ!!」  大輝は、全てを否定するように強く叫んだ。だが、水溜まりに映る自分の瞳は、この世界と同じ様に紅黒く輝いていた。 「俺は――――人間・・・・・・なんだよな?」  ――――薄々、気づいていた。俺は、ウルフや熊の肉を食べたことで、人間離れした身体能力を手に入れた半面、どこか、血肉を求め始めていることに。  戦いを好んだのは、強くなるため以外に、その衝動を忘れたかったからだ。殺した獲物を、喰らえば喰らうほど、肉体の強さは増していった。だがらそれと同時に、血肉を求める欲求が強くなっていく。  このままだと、俺は自分の手で、大切なものに傷をつけてしまうかもしれない。それが、俺は怖かった。  彼女達を守るには、早急に力が必要だったんだ。だから、喰らった、喰らい続けてきた。その結果が、これかよ。  自業自得、因果応報、まさに、俺の最後に相応しい罰なのかもな。せめて、彼女達が樹海を脱出出来るまでは・・・・・・。  大輝は、何かを悟ったように――――渇いた笑みを浮かべると、静かに目を閉じた。  ――――なぁ・・・・・・教えてくれよ。  ――――俺は・・・・・・間違ったのかな?  その想いは誰にも届くことは無く、大輝の意識は、次第に闇へと呑まれていく。

皆様、いつもクロスウィルを読んでいただきありがとうございます<(_ _*)> 楽しんで読んでいただけたのなら、作者として嬉しい限りです。 今後、闇に溺れた大輝が、どういう風になっていくのか! 楽しみにしていただけると、幸いです。 それでは、次回予告。 次回、『第二十四話 対立』 次回も、お楽しみに!

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  • ひよこ(重)

    新楽るた

    ♡300pt 2019年7月15日 0時53分

    クロトさあん!こんばんは!(*´∇`*) 『糸が切れた人形のように』この部分の比喩がハマりすぎて、大輝の動作が映像として入ってきましたね!いつもの事ながら、凄い描写力だ(*´꒳`*) 今回は大輝の葛藤がテーマですね。力と自制心の均衡。それが保たれるか崩れるか、今後も期待です‼︎

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    新楽るた

    2019年7月15日 0時53分

    ひよこ(重)
  • ひよこ剣士

    さつき クロト

    2019年7月15日 1時18分

    るたさん、こんばんはです! いつも、読んでいただいてる上に、丁寧なコメントまで、本当にありがとうございます! (⌯˃̶᷄ᗝ˂̶̥᷅⌯)大輝が、どうなっていくのか! これからを、楽しみに していただけると嬉しい限りです! 次回は、ついに奴が・・・( ー̀∀ー́ )

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    さつき クロト

    2019年7月15日 1時18分

    ひよこ剣士
  • ひよこ(重)

    新楽るた

    2019年7月15日 0時53分

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    えんどろ~!セイラ

    新楽るた

    2019年7月15日 0時53分

    ひよこ(重)
  • ひよこ剣士

    さつき クロト

    2019年7月15日 1時19分

    るたさん、こんばんはです! いつもスタンプをいただき、ありがとうございます! 続きを楽しみにしていただけるなんて、嬉しい限りです!(≧∇≦) これからも、クロスウィル渇望のディエンドを、よろしくお願いします!

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    さつき クロト

    2019年7月15日 1時19分

    ひよこ剣士