邪幻城の妖し姫

読了目安時間:3分

1、山の街道にて(其の壱)

1、山の街道にて(其の壱)の挿絵1  元和九年  大阪夏の陣を経て十数年を経ていたが謀反の兆し収まらず。  柳生但馬守は子飼いの忍び衆を放って動向を伺っていた。  そんな中、遠い異国の地ローマに送り込まれていたひとりの忍びが密かに帰国する。  忍びの名は原紅郎(げんくろう)。  伊達藩の遣欧使節に同行しエスパーニャ(今のスペイン)とローマで忍び働き(しのびばたらき)をした後、姿をくらませていた。  既に鎖国が敷かれていた日本で遣欧使節が戻れない事を知っての上の離脱だった。  思案した結果、朝鮮から琉球を経て薩摩の国に辿り着く。  その後、東を目指して旅を続けていた。  原紅郎(げんくろう)にはひとつ気になることがある。  一緒に遣欧使節に同行していた忍びのひとりである小源太(こげんた)と別れた事であった。  仲を違えたわけではないが、ある夜を境に小源太は姿を消した。  その際にローマより密かに盗み出した書物の幾つかを持ち去ったが、その事に恨みはない。金にでも変えて旅銀の足しにすればよいと思っていたくらいだ。それよりも気がかりなのは、幼い頃からの馴染みである小源太の安否の方だった。小源太は腕は立つ忍びではあったが、少し気持ちの弱いところがある。忍びにしては少々優しすぎると思えるのだ。一体、何を思って離れていったのか。原紅郎にはそれが少し気になっていた。  さて、手元に残ったのローマの書物は僅かだったがこれでも伊達藩に持ち帰ればローマより戻った証拠になるはずだ。  そうすれば幾らかの手当は貰えるだろう。  それが原紅郎(げんくろう)の算段だった。  そして長々と旅を続けた後、尾張の国を越えようとしたころであった。  山中の街道を進む原紅郎(げんくろう)は妙な気配を長々と感じていた。  人がいないはずの林の中に時折、何かが潜んでいる気配がしていた。  獣ではない。何か別のものだ。  “忍び”に近い気配でもあるがどうも様子がおかしい。  原紅郎(げんくろう)の動向を伺っている節があるものの、手を出してくる様子もない。  単に俺が縄張りに入り込んでしまっただけか、と気をめぐらしそのまま歩み続けた。  そうしていると正面から編笠姿の侍が歩いてきた。  小柄で細身であるが着ているものは良いものだ。特におかしなところもない。  だが、侍と近づくにつれて殺気を感じる。  侍からではない。  周囲の木林からだ。恐らく潜んでいる者どもは侍が目当てなのだろう。  とすれば原紅郎(げんくろう)は獲物を横取りされないかと見張られていたのだ。  揉め事は御免だ。侍とすれ違ったらすぐさま走り去ろう。  原紅郎(げんくろう)がそう思った矢先だった。  編笠の侍はいきなり刀を抜き原紅郎(げんくろう)に一閃を浴びせてきた!  原紅郎(げんくろう)は反射的に身をかわしたが、切先(きっさき)は着物の裾を僅かに裂く。 「何をしやがる!」  一太刀をかわされた編笠の侍は、剣を構え直した。 「さきほどから殺気を放っておるくせに何を言うか」 「殺気だと?」  どうやら侍は向けられていた殺気を原紅郎からだと勘違いしたようだ。 「俺はただの通りすがりだ! 殺気は林に隠れている連中からだぞ!」 「言い訳は聞かぬ! それにその身のこなしは忍びであろうが」 「忍びには違いねえが……あんた、どえらい勘違いをしてるぜ」  そう言って原紅郎は隠し刀を抜くと飛んできた手裏剣をはたき落とした。  侍は身構え直す。 「ほうら、あんたが刀なんて抜くから奴らを焚きつけちまったぜ」  林の中から忍び装束に身を包み、不気味な面をかぶった者たちが現れた。

気分転換に書き始めました。 とはいえ時代劇というか忍者モノは以前から書きたかったので楽しんでいこうと思います。 時代背景、歴史的人物等、多少の脚色ありますので矛盾等はご容赦くださいませ。 異星人も登場させてくゾ♪

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