異世界転生物語〜願いが現実になることがある〜

読了目安時間:6分

前回のアロイのあらすじ。 フローのところで回復魔法を覚えたアロイ。 リーシャと共にフローの師匠に会いに行く。 魔ほうきは墜落し、そこで魔族のアカメと出会う。

26.仙人ミトナ

自分より強い相手、自分よりも大きな存在。人はそう思うと心が乱れる。自分より上だと思うだけで擦り寄るのか、敵対しようと。アロイは心を落ち着かせるために一呼吸する。 じっと相手を観察すると敵対しているようには感じなかった。赤い顔の魔人はアカメと名乗った。そして、こちらの名前を聞いている。 「俺はアロイ。」 「私はリーシャだ。」 「ハーハッハ!お前たちだな!」 突然笑い出すアカメに、二人はびくりとした。 「ミトナ様の言う通りだ。 この辺りに空から降ってくる者がいる。 案内しろって言われてる。 ついてこい。」 そう言うとアカメはズンズンと歩き始めた。二人は唖然としながらもその後をおった。 林の中をしばらく歩いていくと、霧がかった竹林が見れてきた。アカメは手に持った鈴を鳴らす。霧が晴れてきて竹林の間に道が現れた。道の先には古い日本家屋のような茅葺き屋根の平家が立っていた。 「よくきたな、アロイとリーシャだな。」 低く透き通る声の主は、黒い顔をした美女、白い長髪の間からとがった耳が見えていた。 「ダークエルフ?」 「そうだ私は呪われた種族のダークエルフ。 ミトナだ。 仙人ともよばれておる。」 仙人の屋敷の部屋は質素なものだった。装飾品はほとんど見られず、部屋の中心に円卓があるだけだった。そこにミトナと3人で座った。 「はじめましてリーシャと申します。 こちらはアロイです。」 「フローから聞いておる。面白い客人だな。 ひとりは王族の忌み嫌われる能力を持つ姫。 ひとりは竜人から産まれし人間。 フフフ。」 「ミトナ様。私は叔母のフローからここに導かれました。 私の能力は世界を破滅に導く能力です。私は、どうすれば良いのでしょうか?」 「フフフ。 せっかちよの。 まずはお茶でも飲まれよ。」 「あっはい。」 「争いがなぜ起こるかわかるか? リーシャよ。」 「争いの火種があるからでしょうか?」 「ふむ。それもあるだろう。 争いとは力があるが故におこる。 力とは腕力だけでなく、権力、利権、地位。 そういった力を持ち、それを誇示しようとする。その力をさらに強くしようとする利己的な感情もあるであろう。 その利己的な感情が集団意識となれば、さらに争いはその民族にとって大義名分となる。 恒常的な侵略をもとめる争いを産む。 人間族は、それを巧みにあやつる。個ではなく集団が力を持つことは正義だと。それぞれはこう思いながら『みんなのために同一意識を持つんだ』と。 しかし、それは世界から見たら小さな正義。小さな正義のために争いを起こし、世界を歪めているのが人間族だ。 そして、予言もその上で語られた妄言。」 「予言が妄言?」 「そなたの能力は、人間族にとって忌み嫌うもの。しかし、世界にとっては必要なものだからだ。」 「必要なもの… 私の能力が?」 「そう、そなたの能力は失われた魔王姫を復活させる。」 「あの世界を破滅に導く魔王姫を…」 「ちょっと質問していいですか? 魔王姫って聞いたことあるんだけど誰ですか?」 アロイの質問にリーシャが答えた。 「魔王姫は十数年前に突然現れたの。 その時、魔族と人間族は長い戦争していたわ。長い戦争の中でいよいよ人間族の勝利目前というときに突然現れたのが魔王姫。その当時、圧勝していた人間族をほとんどひとりの力で盛り返したらしいわ。 その後も破竹の勢いで魔王軍を勝利にもたらし続けた。魔王姫の殺戮は日々凄惨をきわめて魔剣ラグナロクに侵食され、世界を滅ぼしかけた。 魔剣ラグナロクを持って黒い鎧で黒い飛竜に乗る、漆黒の騎士の姿は今でも伝説よ。」 「その魔王姫は今はどうしたんですか?」 「わからないわ。 突然消えたのよ。死んだと言われてるわ。 勇者が現れて倒したという説もある。本当のところはよくわからない。 とにかく突然消えたのよ。」 「そんなに強かった魔王姫が突然なんで消えたのか不思議ですね。」 リーシャはミトナに言う。 「私が魔王姫を復活させるって。それはこの能力で魔王姫を見つけるってことですよね。私はそんなことをしたくないし。しようと思いません。」 「なぜそう思うのだ?」 「人々を殺戮した魔王姫を復活させたくありません。また、世界を混乱に陥れます。」 「それは神都ミハエルの予言を鵜呑みにしておるな。 『世界を滅びにいざなう巫女があらわれる。その者、千里の人を見つけ出し滅亡の鍵を見つけ出す。』 これは、人間族にとっての話じゃ。 リーシャ結論を急ぐ必要はない。自分の能力、世界のことをよく考えるが良い。 選択肢は一つではない。 二人はしばらく、この地にいるがよい。」 ミトナがそう締めくくると、アロイのそばに小さな10歳ぐらいの男の子が来ていた。 「一緒に遊ぼう!」 「その子は、勇者と同じ天空の一族の末裔のタクトだ。なかなかやるぞい。 ちょうどいいかもしれんな。お互い剣の修行相手に。」 タクトはアロイの身長の半分ほど、腰から下げる剣は床を引きずっていた。 「この子が? 怪我をさせてしまうかもしれませんよ。」 「フフフ。 させてもかまわんよ。 お主の回復魔法の訓練にもなろう。」 「やろうぜ!アロイ!」 庭に出るとタクトは早速、剣をかまえる。自身の体と同じ大きさの剣は扱いにくそうで側からみると違和感がある。 アロイはフローのところにいた一年、剣を振り続けている。黒の一団とも渡り合えた自負もある。タクトは実力があるといってもまだ子供。どれほどか。 アロイは剣も構える。下段に低く。 「おや、アロイの持っている剣はシンバの愛剣ムラサメじゃな。あやつの遺志を背負うか。」 「いっくよー!」 タクトは真っ直ぐ上段に斬りつける。素直な剣。 「早い。」 アロイは今まで見た中で一番早い剣戟に驚く。 かろうじて間に合い、タクトの剣を受ける。 すぐに二発目に切り替え連撃。 剣が頬をかする。 上段からの連撃を受ける。 アロイはどの攻撃もギリギリでなんとか防いでいた。 「すごい!俺の剣を全部防ぐの!」 タクトが喜びで笑顔になる。余裕がありそうだ。 「素早いな。こっちからも行くぞ。」 アロイの持っている剣がぶれはじめる。 「幻術剣。」 タクトがかわす方向に見えない剣撃が走る。タクトの腕にかすり傷が入る。 黒の一団の技をアロイは習得していた。タクトは直感で致命傷は避ける。 「くそーやるな!俺も!」 タクトは距離を取り、突きの構えを取る。 「はぁーー!」 剣先が龍の形になっていく。 「そこまで! やめるんだタクト! 竜剣撃までやってはダメだよ。」 「でも、アロイだって変な技使ってたし。」 「アロイの実力はわかった。とりあえずその曲芸みたいな技は使うのやめな。本当の強敵にあった時、小手先の技はかえって邪魔になる。 タクトも大技に頼るんじゃない。大技は出す前も出した後もスキになる。一対一ではめったに使うもんじゃない。 いいかい、これから二人は毎日戦うこと。それで三連勝したものには褒美をやろう。いいね。」 「やったー!アロイと毎日戦える! それに褒美ってなんだろう。」 「タクトはその若さで強いな。俺もタクトに負けないようにがんばるよ。」 「うん。 ねぇねぇミトナ褒美って何?」 「ナイショじゃー。フフフ。」 アロイとリーシャは二人のやりとりを微笑ましく見てた。二人はここで修行の日々を送ることになった。

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