異世界転生物語〜願いが現実になることがある〜

読了目安時間:5分

前回のアロイのあらすじ。 人間に村を焼かれ、他の竜人族の村に助けを求める。 ただ、人間の姿をしたアロイはそこには受け入れられなかった。 アロイは、自ら家族の元から離れることを選ぶ。

8.川辺の邂逅

アロイは走り続けていた。家族と離れる悲しみを紛らわすように。不思議と走り続けても疲れなかった。少しでも早く駆けるという気持ちに比例するように足は速く動き続けた。 どれだけ走っただろう。夜が明け始めていた。朝日が見えるとアロイは走るのをやめた。木々の間を抜けると川があった。清流が朝日で輝いていて、渇いた喉を潤すために何度も手で水を口に含んだ。  「はぁー。これからどうしよう。」 川の横で大の字になって、考えていた。人間として生きていくしかないのかな。コミュ障なのに、また、新しい人付き合いとか嫌だな。このまま森で一人で暮らしてみるかな。そんなことを考えていたらいつの間にか寝ていた。 空腹で目が覚め、川で水を飲もうとした時あたりの変化に気がついた。 その川には、人が流されて浮いていた。 「なんだ?!」 川が血でにじんでいて、死んでいるように見えた。 「死んでいるのか?」 アロイは生存者がいないか、確認した。浮かんでいたのは四人のうち二人は生きているようだった。 死体には顔に大きなキズがあり頭蓋骨が少し見えていた。思わず吐きそうになったが、昨日から何も食べていない口からは胃酸が出るだけだった。 川からなんとか生存している二人を川辺に引きずりあげた。流された人達は鎧を着て、騎士のような格好だった。亡くなっていた二人の若い男性。生き残っていた騎士は初老の男性と若い女性だった。 初老の男性は胸に大きな傷があり、小刻みに震えていた。このまま時間が経てば死んでしまいそうだった。 「どうしよう。 こんな時どうすればいいのだろう。」 アロイは動揺してオロオロと何もできず、歩き回った。 「そうだ!回復魔法だ! 俺は村人に使えたんだ。使えるはずだ!」 そうして私は願った。 「治れー! 傷よ治れー!」 あの時と同じように願った。しかし、いくら願っても何も起きなかった。 何かできないだろうか?ウロウロ歩きながら考える。 「できないことは仕方がない。」 そうだ火を起こそう。身体を温めるのがいい。この人達は川に浸かっていたせいでひどく冷たくなっていた。 「しかし、どうやって火を起こすんだ?」 以前テレビのサバイバルもので木をぐるぐる回して火をつけるシーンを思い浮かべる。そうして、適当な枝をぐるぐるした。 「火、早くつけ!」 そう願うと、煙が出る前に、突然火がボォっともえだした。 「うわ!こんなに簡単に火がつくのかよ!」 近くの枝を集めて、たき火を大きくすると、二人の身体を温めることはできた。火で温めると傷を負った男は落ち着いた息をした。 「大丈夫かな。」 不安に思ったがこれ以上何もできないと思い。残りの二人の遺体を川辺に運んだ。 少し前から思っていたがこの体は少年にしてはすごく力がある。二人を引き上げたが息もあがらなかった。 騎士の遺体に立派な剣があったので、「南無阿弥陀仏」と手を合わせて、貰うことにした。 少年の身体には、少し大きすぎる剣。それでも素振りをしてみると違和感なく剣を扱えた。剣を振ってみる。上から横から斜めから ブンブンと自分が想像しているよりも剣が速く、小気味よく振れた。 「なんか、楽しいなこれ。」 しばらく剣を振っていると、木々の奥から何か気配がした。 「魔獣か?」 姿を出したのは、二人の人間だった。黒装束で背中に剣を背負う二人組の男。それは前世で言う、忍者みたいだった。 剣をもつアロイに警戒しているのか距離を取っていた。 「ガキ、お前こいつらを助けたのか?」 直感で感じてる。コイツらなんかあやしい。剣を構えつつ言った。 「そうだよ。お前たち何者?」 「知り合いさ、助けてくれてありがとうな。 この人たちは、俺たちが連れて行く。」 そう言って、たき火にあたっている二人に近づく。 「待て!何かあやしい。その服装!」 アロイは剣をかまえて、二人組の前に立った。不思議と恐怖はあまり感じず、落ち着いていた。二人組の挙動から一瞬も目を離さない。 「わからないのか。この人達は知り合いだって言っているだろ。」 アロイは警戒を解かない。 「はぁ、仕方ないな。子供は殺したくないが。」 男の一人がそうつぶやくと、短くもう一人の男に「やれ。」と言った。 背中から剣を抜くと同時にあっという間に距離をつめられる。 「ガキンッ!」 咄嗟に振った剣が、相手の剣を防ぎ小さな火花が散る。 今、剣を振るうのが遅かったら死んでいた。腹を決める。生死の戦い。集中。 今の攻撃、相手の動きが見えていた。アロイにはなぜかできるという確信があった。 相手の男がふたたび上段から剣を振り抜く。見える。相手のすることがわかる。 斬りつける軌道から体を避ける。 かわしたアロイは剣を横に振り抜く。 敵は剣をくぐるようにしゃがんで避ける。 敵の動きに集中しているとゆっくりと見えた。 「遅い。」 男が振るう剣がどこに向かうのか、何をしたいのか見えた。 そして、スキをつき敵の剣の腹を、力まかせに弾いてやった。 「バギィ」 腹から打たれた男の剣は簡単に鈍い音をして折れた。 その瞬間、もう一人の男が走り出し、アロイの背中から斬りつける。 背面の軌道を確認してかわす。 かわすと同時に敵の勢いを使い、足を引っ掛けてやる。 盛大に敵はぶっ飛んだ。 手から離れた敵の剣をサッと奪う。 倒れた男の顔の剣を近づける。 「動くな。」 二人の男を交互ににらみつけた。 「何者だ、お前ら?」 「お前こそただのガキじゃないな。『マナ使い』か。」 「なに?」 その時、男の一人が何かを地面に叩きつける。ボンと音がすると煙が一瞬で立ち込めた。 「うお、何だ。」 剣を構えたまま、大きく後ずさる。 煙が風で少しずつ薄くなる。いたはずの二人組の男はいなくなっていた。 「ほんとに忍者みたいだな。」 その時、倒れていた女騎士が起きあがってこっちを見ていた。キョロキョロと周りを見回すとアロイと目が合う。 「貴方は誰ですか?」 「私はアロイですよ。」 「アロイ…」 つぶやくと女騎士はまた倒れてしまった。

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