異世界転生物語〜願いが現実になることがある〜

読了目安時間:5分

前回のアヤのあらすじ。 戦争に疑問を持つアヤ。 これ以上は戦わないことを魔王に宣言する。 それを良しとしない魔王は、配下ムラサキによってアヤを操らせた。

25.勇者ラータ

むせかえる戦場の匂い。人が焼けた焦げた匂い。地面はあちらこちらで地形が歪み、歪んでいる土の間から人間たちの死体の一部がみえた。手足が捥げ、這いつくばる姿。剣を杖代わりに歩く姿。放っておいても死は免れない者も、追い討ちをかけ容赦なく殺戮していく。上空には、漆黒の騎士魔王姫が魔剣ラグナロクを構えていた。 戦場の状況を高台の山の頂上で見ていたのは、赤い顔のアカメと青い顔のアオリだった。自分の軍ながら一方的な戦況に、アカメは戦々恐々とした。 「なぁアオリよ。魔王姫は変わってしまった。」 横にいるアオリに話がかけるアカメは悲痛な顔をしていた。 「以前であれば逃げる者は見逃しておった。姫は戦闘するにしても死傷者が増えないように要所要所を攻撃して、戦闘を効率よく終わらせていた。 しかし、今はどうだ。片っ端から敵を殺し、逃げ惑うものにも容赦なく殺す。時には味方にも被害が及び、戦場そのものに攻撃をしておる。 まるで別人じゃ。」 「確かにおかしい。」 「あら、大の男達がひそひそ話かしら。」 「お主、ムラサキ。」 ムラサキ色の妖艶な目つきで二人を見つめていた。 「アカメ。わかったぞ。 こいつの能力じゃないのか?」 「まさか…お前、魔王姫に逆心を。」 「ほーほっほ!! 馬鹿な脳みそで勘ぐっちゃダメよ。 でも、なぜこういうことになったか教えてあげる。 魔王姫は魔族を裏切るつもりだったのよ。」 「そんなわけがあるかい! 今まで、どれほど我々魔族のために命がけで戦ってきたかお前知らんだろ!」 アカメは持ち前の剛腕で、ムラサキの首を締め付けた。 「御託はいい。すぐに魔王姫を解放したら生かしておいてやる。解放しろ!」 「はな、せ…」 ムラサキは力で押さえつけるアカメに勝てなかった。 空から突然、漆黒の騎士がアカメを斬りつける。 「うがぁ!」 魔王姫が飛竜から降り立ち、ムラサキをかばう。 「はぁはぁ。馬鹿力しか脳のないお前たちに魔王バレル様の意思を理解できるわけないわ。はぁはぁ。 魔王姫この二人をやれ。」 無表情でラグナロクをかまえる魔王姫。 「アオリ!仕方あるまい! 力尽くで二人を抑える! 全力で行くぞぉ!」 「おう!」 そう言うとアカメとアオリは身体全身に力を込める。 「ハァァァァー! ジャイアントフォーム!!」 かけ声と共に体からみるみる巨大化する。 二人の体の大きさは飛竜の2倍を超える。 アカメは大きな足でムラサキを踏みつぶす。 いつの間にか飛竜に乗っていた魔王姫がムラサキをつかまえて飛び立つ。 アオリが飛び立つ先に象ほどの岩を持ち投げつける。 「バガァン!」 魔王姫はそれを剣で打ち砕く。 「逃がすなアカメ!」 「おうよ!」 巨大な体に似合わない素早さで飛竜の尻尾をアカメが掴む。 掴んだ飛竜もろとも地面に叩きつける。 「うぉ!」 アカメの悲鳴。 叩きつけたはずが、アカメの腕が手首から切断されていた。 アオリが再び巨大な岩を投げつける。 投げつける岩に向かい魔王姫は剣を振り抜く。衝撃波で岩ごとアオリは巨大な図体を吹き飛ばす。 右手を失ったアカメは巨大化の能力が解けて項垂れる。アオリも吹き飛んだ場所で気絶し能力が解けた。 魔王姫が近づき、アカメの首を刎ねようとする。 「魔王姫やめろ。 腐っても四天王だ、殺す必要はない。 これでおとなしくなるだろう。」 魔王姫は変わらず無表情のまま、戦意を失った二人を見つめた。 ムラサキは二人を見下して言った。 「いいかこれは、魔王バレル様の意思だ。お前たちみたいな単純馬鹿が意見することじゃない。次やってみろ。ミズリのようになるぞ。」 「お前、ミズリをやったのか!?」 「ハーハッハ! やったのは魔王姫よ。」 「外道が!」 立ち上がろうとするアカメをムラサキが蹴り落とす。蹴り落としたアカメの足元には、魔王姫が落とした笛がついたネックレスが落ちていた。 灰色の部屋。壁もソファーも何もかも灰色部屋の先はぼやけて見えない。 アヤはソファーの上にはゆったり座り、テレビを眺めていた。 映し出せれる映像は悲惨なものだった。人々が殺され逃げまどう人々を蹂躙していた。アヤは気分が悪かった。やめてほしかった。しかし、それはテレビの中のことなので何もできなかった。 アヤの座ってるソファーの横に、いつの間にか青年が座っていた。長い黒髪がきれいな人、剣を携え強そうな人だなと思った。 「あなたは誰?」 「天空人のラータだ。地上では勇者とも呼ばれてる。 アヤ、時間がない。 君はの持つラグナロクは、血を吸い過ぎている。このままだと魔神の復活を抑えられないよ。」 「でも私には何にもできないわ。私の意識とは別で世界がうごいているもの。」 「シンバに渡されただろ。その笛を吹けばいいのさ。」 「笛吹こうとしたの。でも、もう私の身体じゃないみたいで動かない。誰にも声も届かないわ。」 「そうかなぁ。君の声が聞こえている子がずっとそばにいるよ。」 「ずっとそばに?」 するとアヤのそばにいつの間にか黒猫がすり寄っていた。 「あ、チャコ。」 「そう、その子はずっと君の声が聞こえているよ。」 チャコをなでてやると気持ちの良い顔をした。 「そっか。チャコはずっとそばにいてくれたんだね。 チャコお願いがあるの。私の代わりに笛を吹いて。」 「にゃー。」 アヤに抱きかかえられた黒猫は、アヤを見て小さく鳴いた。 漆黒の飛竜は雄叫びをする。 「ピェーー!!」 バサリと翼をはためかせると、アカメと魔王姫の間に降り立つ。 落ちていた笛を口で器用に拾うと、高らかに鳴らした。 「ピーーーーーーィ!!」 小さな笛の音が脳に響く。一瞬、空間が歪み空に光の扉が現れた。その光の扉はゆっくりと開かれ、ひとりの青年が降り立った。 その青年は、魔王姫アヤの心に現れた勇者ラータだった。 「やっと会えたね。アヤ。」 ラータは周りを見渡す。 「君たちのマナのおかげで、アヤの心に入ることができた。ありがとうね。」 ラータはアカメとアオリに声をかけた。 「ヒール。」 回復魔法を二人にかけるとみるみるうちにアカメの腕は治り、アオリは起き上がった。 ムラサメが目を見開く。 「お前!?何者だ!」 「僕は勇者ラータだ。 あぁ、君がアヤの心を閉じ込めているんだね。」 「勇者?! 魔王姫やれ!」 ムラサメの言葉に従い、魔王姫はラータに向かい剣をかまえる。 「アヤ。わかってるよ。 そんな悲しい目をしなくても。 僕が終わらせてあげる。」 ラータは腰に下げてる剣を抜く。抜いた剣は青白く輝く。 ラータは天高く剣をかかげる。あたりに雷雲が立ち込める。 「いくよアヤ!ギガブレイク!!」 轟音。衝撃。剣から放たれる雷光は魔王姫に直撃する。 「ドゴォォォォォン!!」 砂煙の立ち込めた後、魔王姫は地上から消えていた。そして、勇者ラータもその場からいなくなっていた。

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