異世界転生物語〜願いが現実になることがある〜

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前回のアロイのあらすじ。 転生したアロイ。 転生した先は、人間ではなく竜人だった。 ある日突然、人間族に村を焼かれた竜人族。 アロイが願う焼きただれた愛する妹を助けたい。 すると、奇跡が起きる様に回復する。 アロイは気を失った。

4.アロイ旅立つ

両親は優しくおおらか。アロイという名前をくれ、ささやかで安心した生活をくれた。ただ人間ではなく竜人族と呼ばれる種族だった。平和な暮らしは一瞬で人間たちに壊された。村は焼き払われ多くの犠牲者がでて、住まいも蓄えていた食料もほとんど焼けてしまった。 そんな中、村に奇跡が起こった。傷ついた者たちが空から降る光によって次々に治って行ったのだ。 村人達は、怪我が治った奇跡にわき立っていた。 いつの間にか気を失っていた。アロイは気がつくと腕が治ってる元気な父の姿が目に入った。母もミムリも無事なようだった。 「アロイ、意識が戻ったのね。」 母さんがアロイを抱きしめた。 父さんもアロイの姿を見て安心したようだが、すぐに現実のひどい惨状に落胆していた。 「このままだと、冬は越せない。」 いつも頼もしい父から頼りない言葉を聞くのは初めてだった。 こんな時、前世の智識でなんとか解決できたら。と考えを巡らせてみたが、10歳の小さな子供も力も、この世界のこともほとんどわからないアロイには何もできなかった。 「このままでは、越冬できず死んでしまう。」 長老が村の中心に集まっているみんなの前で口を開いた。 「我々は奇跡的に皆生き残った。我々は生き残る運命的な出来事にであった。 きっと道はある。皆のもの、何か案はないか?」 突然、隣にいた妹ミムリが立ち上がって話し出した。 「長老様。この村の人々を直したのは兄の力です。」 ミムリは兄の私から見ても年下とは思えない。賢さを持っていた。 周囲がざわついた。 「私は見ました。兄が光り輝き、その光が次々と村人たちに降り注ぎ、治っていく姿を。」 「本当なのか?アロイ?」 父はアロイを見る。 「たしかに、私は強く願いました。ミムリ、家族、村人のみんなを助ける事を。 しかし、願っただけです。それが奇跡につながっているのかわかりません。」 長老は少し考えて高らかに宣言した。 「このアロイは救世主である。私の目に間違いはなかった。」 おおー。と周囲が私を見つめた。老婆は続けた。 「救世主アロイ。 お主が特別な力を持っていることは明白。どうかこの村を救ってくだされ。」 「えっ?救うって言っても、何をしたらいいのか…」 私に注視する村人たち。羨望の眼差しでみるミムリ。アロイはできるかわからないが空気に負けて言ってしまった。 「お任せください。私がこの村を救ってみせます。」 そう言いながらアロイは思った。どうすればいいだろう。 アロイがしばらく腕を組んだまま悩んでいると、長老は口を開いた。 「近くに、別な竜族村があったろう。 そこにとりあえず身をよさせてもらおう。 あまり仲が良いとは言えんが、同じ種族、多少の助けはしてくれよう。」 「そうしましょう!」 なんの意見も出ないアロイはせめて元気よく賛同した。 近くの竜族村も行っても歩くも半日以上かかる場所だった。焼け焦げた家屋のなかから、少しでも食べられる食料をかき集め。村人はほとんどが焼けたあとただれた服のまま、歩いた。 途中小さな別の魔物と遭遇したが、父親たち大人が棍棒で威嚇すると逃げて行った。 老人や小さな子供もいる。魔物を追い払うなどしていると村人全員での移動はなかなか進まなかった。 半日程度で着くはずの村に到着したのは朝から歩き続けたが、夜中になっていた。 その竜族村は我々の村よりも多きく柵もしっかりしていた。かがり火が炊いてあり、門の前におおきな体の竜人が長い槍を持って立っていた。 「お前らはだれだ?」 言葉は低い声で威圧的だった。 長老はねが前に出る。 「隣村の長老の老婆です。そちらの長老と話がしたい。長老に会わせてもらえんかの。」 「ついてこい。」 そういうと、村の中に歩き出した。皆でぞろぞろとついて行こうとすると突然大きな竜人が怒鳴った。 「お前!止まれ! お前は、人間だな!人間は近づくな!」 そのおおきな声は空気がピリつくアロイはたちすくんだ。 「この者は、我々の村で生まれた育ったものです。見た目は人間に見えますが我々の一族のものです。」 「長老と話してこい。人間。お前は、とにかく村の外にいろ。」 アロイ以外の人たちは、村の中に入り一人取り残された。 見慣れない村の入り口に一人でぽつりとアロイは待った。しばらくすると父と母と老婆の3人が戻ってきた。 「アロイ、すまない。お前はこの村に入れない。」 長老が神妙な顔で言った。 「え?入れないってどういう意味ですか?」 父親の顔を見るとすまなそうな顔をした。 「我々を受け入れる条件として、人間のお前を一緒には入れないと言われたのだ。」 「ええっ。」 アロイは動揺した。 「安心しろアロイ。お前はまだ小さい。 私たち家族は、お前と共にこの村に世話になるのをやめようと思う。」 「えっ?つまり家族だけでここを出て暮らすってこと?」 「そうよ。」 母親はアロイの肩を抱く。 「父さんと母さんとミムリでこの村をでて暮らすってできるの?」 父親は即答をしなかった。代わりに老婆が答えた。 「おそらく無理であろう。 今、人間族の力は強大でその勢いは凄まじい。多種族への迫害、被害は日々増えるばかりじゃ。 そんな中、小さな子供をかかえた竜人の一家がどこで安永に暮らせるというのじゃ。 今、この世界には我々の居場所はほとんどないのじゃ。」 「じゃあ、なんで父さん…」 「アロイお前を一人にしたくないからじゃ。」 「でも、それだとお父さん達は危険に。」 「そうだ、お前の姿は人間族。人間として生きていくことはできるじゃろう。 わしは、お前たち家族のことを考え、この村にいることを勧めた。 しかし、お前たちの両親は頑なにアロイと共に生きるという。」 「アロイ、お前はまだ幼い。私たちの生命はお前が救ってくれ、お前がくれたようなものだ。 心配することはない。俺が家族を守って見せる。一緒に行こう。」 父親のまっすぐな目。 「でも、ミムリはどうするの?小さなミムリを本当に、他の魔獣や人間から守って暮らしていけるの?」 「ミムリは置いていく。 さすがにあの子は危険すぎる。ここには知り合いもたくさんいるし、この村で安全に育ててもらう。」 「父さん。僕は一人で行きます。 長老が言う通り、僕は人間として行けばなんとかなります。 幼いミムリから両親がいなくなるのはかわいそうです。 そして、何より父さんと母さんが僕のせいで危険な目に遭うのは嫌です。」 「しかし、アロイお前はまだ小さい。いくら姿が人間だとしても、魔物に襲われたら簡単に死ぬぞ。それをわかっているのか?」 「忘れたのですか父さん? 僕には特別な力があるのです。 救世主の力が。大丈夫、なんとかなります。」 「アロイ…」 何か言いたげな父親の横で、母親は顔に手を当てて泣き出した。 アロイは怖かった。怖くてしょうがない。この魔物だらけの森、知らないことだらけの異世界。本当は、救世主のような力があるとは思えない。しかし、アロイは勇気を出す。父と母、ミムリのためにはこれが一番だからだ。 「泣かないで下い母さん。僕は強くなります。いや強くなります。 きっと強くなって村人や一族を守れるような男になります。だから大丈夫です。」 不安な気持ちを抑えて、笑って見せると僕は走り出した。 このまま、父と母のそばにいると気持ちが揺らいでしまうからだった。 「アロイ!」 父が呼ぶ声が聞こえたが、振り返らず走り続けた。アロイの足は早く走ろうという気持ちに合わせるように、風のように走りはじめた。涙をぬぐう必要がないほどの速さで。

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