氷に隠れた怪物

読了目安時間:3分

エピソード:2 / 8

殺人グマの撮影ロケのために、現地へ

 白鳥と小林達、撮影グループはロシアへと向かった。 「いよいよ、初の海外ロケですね。白鳥さん。」 「ええ、そうですね。」  小林は、番組の成長を改めて感じ、意気込みを隠せずにいる。一方で、白鳥は考え込むような顔をしている。 「白鳥さん、どうかしたんですか。」 「え、ああ、ちょっと考え事を。」 「もしかして、今回のホッキョクグマのことですか。」 「はい、どうして、人を殺さなければならなかったのかなと。」 「うーん、確かに。でも、恐ろしい話ですよね。ある日突然村にやってきて大暴れするなんて。そのまま、近くにいた三人が殺され、四人が重軽傷を負った。何とか、麻酔銃で眠らせることが出来て、今はある施設で保護中。まあ、保護っていうより監視みたいなものですか。また暴れられたらたまりませんもんね。」 「でも、私は何か理由があったと思います。だから今回このクマの気持ちを知りたいと思ったんです。」  白鳥の強い言葉を聞き、少し黙った後、小林が口を開く。 「そうですねぇ。まあ、僕もそう思いますよ。でも白鳥さん。あまり現地の方にその話はしないでくださいね。遺族の方は当然クマを恨んでいますので。」 「はい、それはよく分かっています。」  しばらくして撮影グループは、被害にあった村に到着した。ホッキョクグマが保護されている施設は村から少し離れた場所にある。先に、被害にあった村や人々を取材してから、翌日ホッキョクグマとの会話を行うのが、小林の立てた予定だった。撮影グループは、公民館のような建物の中へ入った。中では、六十代くらいの男性が待っていた。 「ようこそ、おいでくださいました。さあ、こちらです。」 「ああ、ありがとうございます。」 「小林さん、ロシア語話せるんですか。」  白鳥が驚いた表情で聞く。 「いや、あいさつ程度だけですけどね。あ、ちゃんと取材のときは通訳の人にお願いしますよ。」  小林が少し照れ臭そうにしながら、男性についていく。廊下を進み、少し広い部屋に通された。どうやらここが取材の現場になるようだ。早速スタッフが準備に取り掛かる。小林と白鳥は、白鳥の控室の場所を聞き、指示された部屋に向かう。その途中で小林は一人の男性に声を掛けられる。 「おぉ、来たか、小林。久しぶりだなぁ。」 「ああ、お久しぶりです、安藤さん。相変わらずお元気そうで。」 「はっは、まぁな。おっ、その人は小林君の彼女かい? 仕事場に連れてくるとは君もなかなかやるなぁ。」 「違いますよ。やめてください、安藤さん。」  小林は困った表情をしつつも白鳥の方を見て小さく、すみません、と口を動かす。 「この人は、白鳥さんですよ。白鳥真奈さん。番組の出演者の方です。この前電話で言ったじゃないですか。」 「ああ、そうだったな。すまんすまん。」  安藤は白鳥の方を向きなおす。 「君が白鳥さんか。よろしく。俺は安藤圭一だ。一応、自然写真家をやっている。こいつとは前に仕事で一緒になってな。それからちょくちょく連絡とってたんだ。」 「白鳥真奈です。よろしくお願いします。」  小林が間に入って説明する。 「白鳥さん、安藤さんはずっとこっちの方で仕事をなさっていて、ロシア語もペラペラなんです。さっき話した通訳も安藤さんにしてもらう事になってるんです。」 「ああ、そうだったんですね。」 「まあ、この辺のことだったら大体知っているから、何か困ったことが有れば何でも聞いてくれ。そうだ、白鳥さん。何ならこいつの若手の頃の話でも教えてあげようか。」 「小林さんの若いころですか?」 「そうそう、しょっちゅうミスばっかしてたんだよ。例えば…」  慌てて小林が止めに入る。 「ちょっと、もうやめてください。ほら、もう打ち合わせ行きますよ。」  まだ話したい様子の安藤を無理やり小林が押していく。 「白鳥さんは、控室に入っていてください。準備出来たらお呼びしますね。」 「あ、はい。」  白鳥は、何やらまだ言い合っている声を聴きながら、控室に入った。

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