氷に隠れた怪物

読了目安時間:3分

エピソード:4 / 8

氷に隠れた怪物

 結局、撮影期間を延ばし撮影は続けることにしたが予算の都合上、大勢を残すわけにはいかず、ロシアに残るのは白鳥と小林と、元々ロシアに住んでいる安藤のみとなった。撮影は小林がすることになり、急遽ホテルが取れなかったため、安藤の家に泊まることになった。何日かすると、だんだん白鳥の具合も良くなっているように見えた。  白鳥はリビングにあるテーブルの椅子に腰かけた。反対側には安藤が座っている。 「すっかりお世話になってしまって、すみません。安藤さん。」 「ん、いや、良いんだよ。それより、体調は大丈夫なのかい?」 「はい、もうだいぶ良くなりました。ありがとうございます。」 「そうかそうか、それは良かった。こう言っちゃなんだが、ずっと一人暮らしだったから、こうして人を招けたのは楽しかったんだよ。だからあんま気にせんでくれ。まあ、君みたいな綺麗な人を家に入れたと分かれば、嫁が何て言うか分からんけどな。」  安藤は笑いながらそう言った。 「安藤さーん、これ何ですか。」  小林は、安藤と白鳥のいるリビングへと、木でできた箱を持ってやってきた。 「ったく、お前は、勝手に人のもの触んなよ―。あぁ、それは最近の写真が入ってるやつだな」  小林は安藤に箱を渡すと白鳥側の椅子に座った。安藤は箱の中から、写真を取り出してテーブルに広げた。それらには広々とした大自然が捉えられていた。真っ白に染まった広原。崩れる氷山。氷の世界に生きる、アザラシやペンギンなどの動物たち。 「うわぁ、すごいっすね。」 「すごいだろ、日本じゃこんなのは、見れないだろう?」  小林と安藤が、可愛い動物や綺麗な風景の写真を見る中、白鳥は一枚の写真を指差した。 「これは………?」 「あぁ、それはちょっときつい写真だねぇ。ホッキョクグマの亡骸だよ。」  その写真の中では、ホッキョクグマが横たわっていた。だが、ホッキョクグマの体から流れる大量の血が、もうこのホッキョクグマが起き上がらないことを物語っているようだった。 「これは……、凄い場面に遭遇したんですね。」 「あぁ、俺もこれを見つけた時は驚いたよ。だが、少し不思議なんだ。」 「え、何が不思議なんですか?」  白鳥と小林は、安藤を見つめた。 「いや、このホッキョクグマ、明らかに喰われているだろう?」  白鳥と小林は再び、写真に目を移す。確かに、写真の中で横たわっている動物の体の一部は無いように見える。全体が赤黒くなっているお腹の辺りでは、内臓のようなものが顔を出していた。白鳥は目をそらさずにいられなかった。その様子に気づいた小林が白鳥の持つ写真を取り、安藤に尋ねる。 「んー。他の動物に襲われたんじゃないんですか。」 「そう考えるのが普通だろう。だがな、氷の世界ではホッキョクグマが食物連鎖の頂点なんだよ。こいつらは捕食者であって、襲われることなんて無いはずなんだ。まぁ、一応ホッキョクグマの天敵としてシャチがいるが、シャチも滅多に襲わないんだ。そもそも、シャチが襲ったなら、こんな風に陸上で喰わず海に引きずり込むだろうしな。」 「確かに、それは不思議ですね。」  小林は、しばらく考え込んだ後、何かひらめいたように安藤を見る。 「安藤さん、ここにはホッキョクグマよりも強い、氷に隠れた怪物が居るんですよ! 未確認生物ってやつですよ。もしかしたら、今もどこかにその怪物が潜んでいるのかも。」 「あー、さすがテレビ業界で働いているだけあるなぁ、小林。この手のネタには敏感だ。だが残念。お前と同じように考えたどっかの国のテレビ番組が取材しに来て、一通り調べたが結局何も見つけられずに帰ったよ。」 「あぁ、そうですか。『氷に潜んでいた、最強の怪物』けっこう視聴率取れると思ったんですけどねぇ。」

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  • グレイ

    月宮華宵

    ♡1,000pt 2021年1月5日 20時13分

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    謎は深まるばかり

    月宮華宵

    2021年1月5日 20時13分

    グレイ
  • 男戦士

    Kanna

    2021年1月5日 23時40分

    1000ポイント、ありがとうございます! ホントに未熟ですが、最後まで読んで頂けると非常に嬉しいです!

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    Kanna

    2021年1月5日 23時40分

    男戦士

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