元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女

読了目安時間:4分

エピソード:10 / 67

10話 穏便にいってほしい

 きらっきらなサクを隣に、少し後ろにサクの護衛兼執事のアルトゥムと一緒に騎士エリアに到着すると当然周囲の視線が集まる。  いち早く気づいたユツィが嬉しそうに駆け寄って来てくれて、そこでいくらかほっとする。様子を窺うサクの視線が痛いけど仕方ない。これはもう仕方ないと思う。 「クラス、アチェンディーテ公爵」  朝の挨拶をかわし、すぐに第二皇子である騎士団長ヴォックスも現れる。 「時間か」  サクと二人で王族貴族だけが許されるエリアに向かっていく。その最奥にいる皇帝と謁見する。また大人顔負けの知識と話術で難しいことをこなしてくるんだろうなと思いつつ見送った。手を振っても振り返してくれなかったけど、私をここまで見送ったことに満足しているように見えた。 「懐きました?」 「さあどうだろ」  ヴォックスには護衛が必要なくてサクも護衛してくれているから、執事のアルトゥムはここでお別れのようで会釈をして来た道を戻っていく。ユツィが遠くなっていくヴォックスとサクを見届けて私を案内してくれた。 「昨日の会食でサクはどんな感じだったの?」 「立派な紳士でした。非常に聡明で、会食の席で皇帝陛下が喜ぶ程の知識を披露していましたよ」 「国家連合の話だっけ」 「それもあります。後はそう、第一皇太子が併合と領土拡大の話を持ち出した時に世界の国土面積を引き合いに出して第一皇太子の鼻を折ったのは実に爽快でした」  初日から喧嘩売ってるってこと? それはよくないでしょ。サクってばあのツンツンな態度と言葉遣いの悪さをそのまま前面に出したの? ちょっとこれは心配になる。 「ユツィお願いがあるのだけど」 「クラスのお願いなら何でもききます」 「……ヴォックスにもお願いしたいんだけど、サクが会食とか会合でなにを話しているか教えて欲しい」 「ああそんなことですか。構いません。ヴィーに伝えておきましょう」 「ありがとう」  そして私は今日の仕事に乗り出す。遠征から帰還した騎士の治癒だ。 * * *  治癒が一通り終わると第二皇子こと騎士団長ヴォックスが戻って来た。彼の執務室でユツィもいれて三人、人の目もないので上等なお茶を頂ける。 「というわけだ。余すことなく詳細に報告するように」  上官への報告だみたいなニュアンスはやめてほしいなあと思いつつも、ヴォックスは気にもとめず今日の治療の記録を確認しながら話をしてくれた。 「道中私も怒られたよ」 「え?」 「君を粗末な部屋にいれておくとは何事だとね。炊事洗濯までさせて騎士の怪我の治癒や、王城内での体調不良者への治療や処方もしてもらっている。いくら公国での事をこじつけてもやりすぎだろうと」 「そう」  シレにも会合後に話していたという。その原因が第一皇太子とその妃にあることもサクは十分理解しているようだった。ようは第一皇太子を敵認定した。 「穏便にいってほしいなあ」 「それは君の事があってもなくても変わらないさ」  そもそもこのまま帝国が拡大する形で併合を続けたい第一皇太子と、イルミナルクスを始め各国を活かしたまま連合を築きたいサクとでは意見が真逆だ。私が絡んでいなくても互いの印象は悪いし、ぶつかり合うのは必至だった。 「サクって頭いいんだね」 「想像以上だった。あの子の存在が知れたら、どの国も欲しがるだろう」 「すごいね」 「だからこそ父上は早々に自分の手元に置いてきたというところか。イグニス様を特に気に入られていたのもあるだろうが」  戸を叩く音で会話が途切れる。  ユツィが対応すると、訓練中怪我した騎士が出たらしい。私を御所望ということね。 「クラス、お供します」 「ありがとう」 「私も追ってそちらへ行く」  この二人は騎士らしい騎士だなとこういう時思う。大概二人は私に付き添ってくれるから不思議なものだ。  呼ばれた先の騎士の怪我は大したことなく、治癒して念の為包帯で巻いて清潔を保つことだけ伝えた。 「ありがとうございます、魔女様」 「どう致しまして」 「魔女様すみません、おれ最近鼻の具合がよくなくて」 「はい、どうぞ」  騎士の多くはヴォックスとユツィのおかげで、ちょっとした身体の不調の相談も受けるようになったぐらいに友好的になった。今回は適宜薬草を煎じて飲めば問題なさそうだから処方して終わりだ。  二、三人そんな感じの相談を受けていたら、少し遠くから声が聞こえた。 「ちょっと待ってよ! 断るの?! 父上になんて言えばいいか」 「うっせえ。不味い飯食えねえってつってんだろ」 「だってねえ」 「それよりも、こっちに食材回せよ」 「それは分かってるし手配したから! ねえ今日ぐらいはせめて」 「くどい」  サクだ。隣でシレがお願いお願いと連呼している。

サクが何気なくプチざまあを第一皇太子にしているという(笑)。 ご飯の優先順位は目上の人よりもクラスを貫こうとするデレを見せるサクが非常においしい。

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